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新型コロナ「感染者上位の多くが中国人」「日本国籍が確認されてる感染者は20%以下」拡散している情報はミスリード

「感染者上位30例」と、コロナ感染者の多くが中国人だったと誤認させるような表データの画像が拡散している。同様に「日本国籍が確認されてる感染者は20%以下」などという情報が拡散しているが、これらの情報は「ミスリード」だ。

新型コロナウイルスの感染拡大をめぐり、「感染者上位30例」と、その多くが中国人だったと誤認させるような表データの画像が拡散している。

しかし、これは「ミスリード」だ。画像はビッグデータなどを扱う民間企業が集計しているデータを一部引用したもので、「上位30例」ではなく、「最初の30例」であり、示されているのは居住地で、国籍ではない。チャーター便で帰国した在留邦人も含まれている。

また、同様に「日本国籍が確認されてる感染者は20%以下」などという情報が拡散しているが、これも「ミスリード」であるため、あわせて注意が必要だ。BuzzFeed Newsはファクトチェックを実施した。

拡散していたのは、「感染者上位30例の内訳」と書かれた表データ。

「日本 10例 中華人民共和国 17例 不明 3例」などと記されており、中でも「中華人民共和国」が赤字で、「不明」が青字で強調されている。

この画像は、以下のような文言とともにSNSなどで拡散した。

これらを隠したいために、厚労省も都も「国籍不明」に持って行った?(11月30日のツイート)

こりゃ メディアで詳細を報道できない訳ですなぁ(12月2日のツイート)

なかでも後者のツイートについては1万以上リツイートされ、2万8000以上の「いいね」がつくなど、大きく拡散している。

この表自体は5月にTwitter上にアップされたもの。「居住都道府県」と記され、時期も国内で感染が広がり始めた1月上旬であることが明記されている。

しかし、「上位30例」という表記や赤字の強調などにより、感染者の多くが中国人であると誤認させるようになっている。今回拡散したTwitterの文言もあいまって、実際にそうした認識のもと拡散していた人も少なくないようだ。

ツイートには「さすが売国政府」「メディアでは知ることの出来ない情報をありがとうございます」などというコメントが寄せられている。

「意図的な加工により…」

この表のデータは、感染状況を可視化するため、ビッグデータなどを扱う「ジャッグジャパン」が集計したもの。2月から無料で公開している「都道府県別新型コロナウイルス感染者数マップ」の元データになっている。

同社の大濱﨑卓真社長はTwitterで拡散している画像について、「感染者上位30例という表記は誤り」と指摘。あくまでこれは、国内で報告された最初の30例であり、「居住都道府県は国籍を表すものではない(在留邦人など)ことに留意する必要があります」とした。

実際、元データを閲覧してみると、居住地が「中華人民共和国」となっている17人のうち、国籍が中国とわかっているのは2人のみ。10人はチャーター便で帰国した日本人であることがわかる。

そのうえで、大濱﨑社長は権利侵害に加え、「意図的な加工により人種差別的な投稿となっています」として、ツイートを投稿した2人に削除と説明を求めた。2人はその後、ツイートを削除している。

なお、BuzzFeed Newsの取材に応じた同社の大濱﨑社長によると、このデータのソースは自治体などが公表しているリリースなど。ただし、今回表で引用された初期のデータは、厚労省が一括して発表していたものだったという。

「ほとんどは国籍不明」もミスリード

新型コロナウイルスの感染拡大をめぐっては、当初から「感染者のほとんどは国籍不明」「3分の1が外国籍」などという情報が拡散していた。

今回の「第3波」に際しても、入国規制の緩和などに関連付けながら「日本国籍が確認されてる感染者は20%以下」(11月19日のツイート、1200以上のいいね)などという情報がSNS上で拡散している。

厚労省は陽性者のうち「日本国籍が確認されている者」や「外国籍が確認されている者」の人数を公表しているが、それ以外の人が一定程度いることが、こうした言説の根拠になっているが、これもやはり「ミスリード」だ。

実際、厚労省新型コロナウイルス感染症対策本部サーベイランス班の担当者はBuzzFeed Newsの取材に「日本国籍が確認されている者」はあくまではっきりと国籍が確認できたものに限っており、「確認中もしくは公表していない自治体もあり、それ以外の人数が必ずしも外国籍というわけではありません」と回答した。

また、12月2日時点でも「日本国籍が確認されている者」が26505人に対し、「外国籍が確認されている者」が1522人であり、こうした感染状況からすれば、「それ以外の人数も、多くは日本国籍であると推測されます」と述べた。

新型コロナウイルスをめぐっては、外国人に対する差別が感染当初から問題視されていた。恣意的なデータの扱いには注意が必要だ。


BuzzFeed JapanはNPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ)のメディアパートナーとして、2019年7月からそのガイドラインに基づき、対象言説のレーティング(以下の通り)を実施しています。

ファクトチェック記事には、以下のレーティングを必ず記載します。ガイドラインはこちらからご覧ください。なお、今回の対象言説の一部は、FIJの共有システム「Claim Monitor」で覚知、参考にしました。

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  • 判定留保 真偽を証明することが困難。誤りの可能性が強くはないが、否定もできない。
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