慰安婦問題から天皇陛下のおことばまで。平成最後の終戦の日、新聞各紙の報道はこんなに違う

8月16日、各紙の社説の違いを比較した。

2018年8月15日は、平成最後の終戦の日だった。

時事通信

その節目の日を、翌朝の新聞各紙はどう伝えたのか。

全国戦没者追悼式における天皇陛下の「おことば」と安倍晋三首相の式辞を比較する社がある一方で、「慰安婦問題」における韓国の対応を強く批判する社もあった。

BuzzFee Newsは、全国紙4紙、東京新聞の社説を比較した。

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読売【戦後73年　未来志向の外交を戦略的に】

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読売新聞は冒頭から、「未来志向の外交を推進し、国際社会での信頼を高め続ける必要」を強調。

日本の戦後が「日米同盟と国際協調を外交の礎」とし、ODA（政府開発援助）や自衛隊のPKO活動が「高く評価」されてきた、とした。

そのうえで、戦後70年の安倍首相の談話は「歴史認識の問題に一定の区切りをつけた」ものだと評価。オバマ大統領の広島訪問や、首相の真珠湾訪問は日米両政府が「努力を重ねた成果」とした。

一方で、慰安婦問題についても言及。韓国の文在寅大統領が、今年から「日本軍慰安婦被害者をたたえる日」と制定した14日に「韓日両国の外交的方法で解決する問題だと思わない」と述べたことを「看過できない」と批判した。

「歴史問題で両国の溝を広げてはならない」と指摘。慰安婦像が各地に設置される動きに触れ、「日本の立場を不当に貶おとしめようとする行為には、冷静かつ毅然と対処することが大切」と結んだ。

朝日【戦没者追悼　「深い反省」突きつめて】

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朝日新聞は、天皇陛下による「おことば」の変遷を30年にわたって比較。「細かく見るといくつか変化がある」とした。

そこには、「11歳で敗戦を迎え、内外の戦没者を追悼する旅を重ねてきた陛下の思い」が込められていると指摘。

「かけがえのない命」「歴史を顧み」という言葉に続き、戦後70年の2015年からは「深い反省」という文言が盛りこまれたことを引き、これらの言葉の意味を「胸に刻みたい」とした。

また、沖縄で「軍が住民に集団自決を強制したという教科書の記載を政府が削除させた」問題にも言及。これに反対したのが故・翁長雄志知事だったとし、「戦争の姿が正しく伝わらず、歴史の改ざんがまかり通る」根本には、「記録の軽視」があるとした。

そのうえで、安倍首相が式辞で述べた「歴史と謙虚に向き合」うことこそが、「戦没者に対する今を生きる者の務め」であると言及した。

毎日【平成最後の戦没者追悼式　悲しみ新たにする大切さ】

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毎日新聞も朝日新聞同様、天皇陛下の「おことば」の変遷に言及。この30年間について、「平成の時代らしい追悼のあり方」だったと指摘した。

昭和天皇が当初は「である」調だったことに触れながら、天皇陛下は即位当初から「国民一人一人の心情に寄り添う言い方」にしたと指摘。「冒頭で国民と『悲しみ』を共にする姿勢は一貫していた」とした。

そのうえで、安倍首相が2013年以来、式辞で「加害責任や反省に触れなくなった」一方で、天皇陛下が2015年から「深い反省」を述べられるようになったことに言及。

天皇陛下ご自身が「最後の戦争経験世代」であること、慰霊の旅など「実践の裏付け」があったことが、そうした「祈りにも似た表現の反復」の重みを増させた、とした。

そのうえで、「平成の時代に培われた象徴天皇と国民が共有する戦没者追悼の心を、次の時代も大切に受け継いでいきたい」と結んだ。

産経【韓国「慰安婦の日」　関係改善に逆行するのか】

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産経新聞の『主張』は冒頭から、韓国・文在寅政権が「日韓関係を発展させると言いながら、実際には逆の行動をとっている」とし、「極めて残念である」と強く批判した。

「北朝鮮核危機のさなか、日韓や日米韓の協力は重要」とも指摘。文政権が「日韓合意を否定し、慰安婦問題を蒸し返している」ことは「日本として見過ごせない」と述べた。

さらに、「2015年12月の日韓合意を忘れてもらっては困る」とも求め、慰安婦問題が「外交交渉で解決するとは考えていない」「外交紛争につながらないことを望む」と述べた文大統領は「未来志向とはほど遠かった」とした。

また、慰安婦が「『性奴隷』だったという嘘を広め、歴史をねじ曲げる宣伝」は許せない、と言及。韓国側が「ベトナム戦争時の韓国軍によるベトナム人女性への性暴力」問題などを取り上げる気があるのか、疑問符を示した。

そのうえで、文大統領の演説を受けた日本政府が、日韓合意の「着実な実施」を申し入れたことでは「手ぬるい」とし、「はっきりと抗議し、翻意を促さなくてはならない」と結んだ。

東京【終戦の日の言葉から　不戦の思いを次世代に】

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東京新聞は冒頭から「ですます」調で、「昭和の戦争の記憶は不戦の誓いとともに、次の世代に語り継がねばなりません」などと呼びかけた。

戦没者追悼式の役割は、「戦没者を悼むとともに、平和国家としての道を歩み続けると誓うこと」であると指摘。「日本は戦争を起こした過去を反省し、再び軍事大国にはならないと発信し続ける必要があります」と訴えた。

そのうえで、安倍首相が政権復帰後6年連続で「加害と反省」に触れていないことに言及。「謝罪を続ける必要はない、という本音の表れ」と疑問を呈し、「加害への反省を忘れたかのよう」に受け取られる、と批判した。

一方、天皇陛下のおことばにも言及。2015年から入った「反省」の文言について、「天皇の気持ちを推察することは慎むべき」としながら、「不戦への強い思いがうかがえます」とした。

そのうえで、「さきの大戦への深い反省と不戦の思いを、次の時代にも語り継いでいくことが、今を生きる私たちの責任です」と結んだ。