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戦争で亡くした兄さんへ。雨の8月15日、遺された妹たちが涙した理由

72年目の「終戦記念日」に、靖国神社と千鳥ヶ淵戦没者墓苑で祈られたこと。

72年目の8月15日は、雨だった。

この日、「英霊」をまつる靖国神社と、「無名戦没者の墓」である千鳥ヶ淵戦没者墓苑では、戦争で家族を失った遺族らがそれぞれの思いを巡らせた。

硫黄島に残された2人の兄

千鳥ヶ淵戦没者墓苑では国の慰霊式が開催されたあとの正午すぎ、喪服姿で菊の花を手向ける人たちや、手に数珠をつけた人たちが集まった。

従姉妹とともに手をあわせていた千葉県松戸市の奥山登喜子さん(84)は、「硫黄島の戦い」で知られる東京都の硫黄島出身だ。島で亡くなった2人の兄を弔いにきた。

「とっても優しい2人だったんですよ」

硫黄島の実家では、牛や豚、鶏を飼っていた。一緒に草刈りや、動物たちの世話をしたことが懐かしい。母を2歳のころに亡くした奥山さんことを、兄たちはよく可愛がってくれたという。

しかし平穏な暮らしは戦争によって、奪われた。アメリカ軍の艦砲射撃が始まると、戦闘機「グラマン」が島民たちを襲った。機銃掃射をかいくぐり、防空壕まで走った記憶もある。

1944年7月、住民たちは強制的に硫黄島から引き揚げさせられることになった。しかし、残っていた軍部の手助けをするために、軍属として82人の男性が島に留まった。そこには、2人の兄も含まれていた。

「軍の方には、あとから東京に2人も追いかけていくと約束をしてもらっていた。しかし、それが果たされることはなかったんですよ」

私の誕生日が、命日だった

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1945年3月17日。硫黄島玉砕が伝えられた日は、登喜子さんの12歳の誕生日でもあった。

「それ以来、私の誕生日はお祝いしなくて良いと思っているんです」

2人がどこでどのように亡くなったかは、いまだにわかっていない。奥山さんは、「話し出すともうだめですね」と、目に涙を浮かべた。

「毎朝台所に立つたび、兄たちの顔が思い浮かぶんです。いったい、どんな気持ちだったのかと……」

毎年足を運ぶのは、千鳥ヶ淵戦没者墓苑だけだ。靖国神社には訪れたことがない。

「2人を犠牲にした責任者が祀られているところに手をあわせるのは、遺族として申し訳ない」

終戦記念日、という呼び方には違和感を覚えている。

「こんなむごい戦争だったんですから。私は、記念日にしたくないんですよ」

私の兄が祀られている場所

約800メートル離れた靖国神社には、朝から、全国の遺族団や喪服に身を包んだ人、子ども連れやスーツ姿の男性などが参拝のために行列を作った。

東京都の菰原シツカさん(78)は、10年ほど前から毎年足を運んでいる。

「私の兄は、ここに祀られているんですよ。18歳で海軍に取られ、その後南方で戦死したんです」

福岡で生まれ育った菰原さん。若い頃は、参拝したくてもなかなか訪れることができなかったという。

「若い頃は、靖国神社にお参りなんか来れなかったから。九州から行っている人たちが羨ましかったんですよ」

終戦のときに小学1年生だった菰原さんには、戦時中の記憶はあまりない。ただ、兄の死を電報で知ったときのことは、しっかりと覚えている。

弔いの思いは、つながっていく

10年ほど前に年上のおじから、生前の兄がどんな人だったのか、どうして亡くなったを詳しく聞く機会があった。

いまは東京で暮らしているのだから、「近くにいて、放っとくわけにはいかないと思って」。自然と8月15日に靖国神社を訪れるようになったという。

兄が祀られている場所だから。そういう理由で、千鳥ヶ淵戦没者墓苑ではなく、靖国神社だけに参っている。それでも奥山さんと同じように、 この日を「終戦記念日」と呼ぶことには反対だ。

「戦争は終わらせたんじゃなくて、負けてしまったんです。『敗戦の日』ですよ。私の兄を含め、どんなに多くの方々の命を奪ったことか。終戦という言葉は、どうしても理解できません」

一方で、嬉しいこともある。ここ最近、多くの若者たちがこの日に参拝をするのを目にするようになったことだ。

「みなさん、それぞれどういったご関係なんでしょうね。ひ孫や玄孫(やしゃご)の世代だってきていますから、とてもびっくりしました」

「それでもね、こうやって私の兄や兵士の方々が祀られているところに若い人が来てくれるのは、嬉しいですよ。弔いの思いはしっかりつながった。これからもつながっていく、と感じています」


72年目のこの日、BuzzFeed Newsでは【あなたにとっての「終戦の日」とは? 靖国神社と戦没者墓苑で返ってきた言葉】という記事も掲載しています。

BuzzFeed JapanNews


Kota Hatachiに連絡する メールアドレス:Kota.Hatachi@buzzfeed.com.

バズフィード・ジャパン ニュース記者

Kensuke Seyaに連絡する メールアドレス:kensuke.seya@buzzfeed.com.

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