千年に1度の豪雨で、あなたの街も完全に浸水?国交省がつくった驚きの想定マップ

    川沿いはだいたい、浸水する。

    国土交通省は今年から、「千年に1度」の雨を想定した「洪水浸水想定区域」を公表しはじめている。

    各地で水害が相次いでいるほか、地球温暖化に伴い大雨が増えることなどを受けた措置だ。

    国交省によると、これまでに想定していたのは、「100〜200年に1度の雨」だった。しかし、昨年改正された水防法が、「想定される最大規模」の浸水想定を出すよう河川管理者に義務づけたため、新たに想定し直したという。

    各地域で過去に降った雨量データも参考にしているが、降雨量は大半の河川で「千年に1度以上」の確率になった。

    たとえば、鶴見川(横浜市)だと……。

    これが北新横浜駅前。平均的な自動販売機が2メートル弱なので、10.1メートルというと、これくらいになる。

    この想定は、すでに国の管理する全国67水系で出されていて、一覧はここから見ることができる。

    それぞれ、こんな感じだ。

    荒川(埼玉県、東京都)

    多摩川(川崎市)

    由良川(京都府)

    加古川(兵庫県)

    吉野川(徳島県)

    ご覧の通り、川沿いの街の大半は、だいたい浸水してしまう。

    日経新聞は9月22日、「大洪水の想定、住民戸惑い」として、地元住民や企業の声を紹介している。

    「そんな高さまで浸水したら対策の取りようがない」(洋服店経営者)
    「1千年に1度の洪水より、近い将来起こる可能性が高いものから優先的に取り組まなければいけない」(自動車メーカー担当者)
    「そんな大洪水が起こるとは思えない」(中小電機メーカー担当者)

    各自治体は、これを元にハザードマップをつくったり、避難計画を立てたりすることになる。ただ、朝日新聞の取材に答えた兵庫県内の自治体の担当者たちも、こう困惑している。

    「浸水面積も浸水の深さも拡大した。避難場所に指定されている施設でも使えなくなるところが出る」
    「発生確率で千年に1度のイメージがあり、現実感がまだわかない。住民に役立つよう、どう生かせばいいのか」

    これでは規模が大きすぎて、逆効果ではないだろうか。BuzzFeed Newsは国交省にその意図を聞いた。

    水防企画室の担当者は「頻度は低いけれども、いつ起きてもおかしくないと理解することは大事」と説明する。

    「最近は雨の降りかたも1時間に100ミリを超えるなど激しくなっており、災害が激甚化している。既存の施設では守りきれない可能性も非常に高い。最悪の事態を理解してもらうために、このような浸水想定を公表していく意義は非常に大きい」

    でも、千年に1度では、実感がなくなってしまうのでは?

    「こちらとしては千年に1度という数字を前面には出さず、『想定最大規模』と言っています。ただ、東日本大震災のイメージもあってなのか、メディアには『千年に1度』と取り上げられています」

    「そこに川が流れている以上、大雨があった場合に被害がないということはない。こういうことが起こり得る場所に住んでいるのか、と意識してもらえれば」

    想定外は起こり得る。「千年に1度」が、もしかしたら今年や来年であることを、否定することはできない。

    国交相は来年の梅雨時までに、国の管理する全109水系の想定を出すという。各都道府県も、それぞれの管理する河川で、同様の想定を出すことになる。

    いつ、どこに避難する?水害避難の豆知識は、こちらから。