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「北朝鮮のミサイルらしきもの」デマ画像が拡散 そもそも肉眼で見えるのか?

高度800kmは、宇宙空間だ。

9月15日午前6時57分ごろ、北朝鮮が西岸からミサイルを発射。北東方面に向かい、「Jアラート」が発令された。

ミサイルは午前7時16分ごろ、太平洋上に落下。日本への落下物や航空機・船舶への被害は確認されていない。

通勤、通学の時間帯に「Jアラート」が鳴り響き、不安を感じている人たちも多い中、Twitterで「ミサイルらしきものを撮影した」というデマ画像が拡散された。

そもそもこの画像は、北朝鮮が8月29日朝にミサイルを発射した際、複数のユーザーによって拡散されていたデマ画像だ。このユーザーはこの時も、同じ文言を使い、同じ画像をつぶやいている。

ツイートは午後5時現在、1600件近くリツイートされているほか、地元テレビ局が取材を申し込んでしまうなど、混乱を招いている。

また、Twitterにはこの画像以外にも、「ミサイルが見えた」「通過した音が聞こえた」との報告が複数あがっている。「ミサイルの音だったのかな」などと、不安げなものも多い。

そもそも肉眼で見えるのか? 音は?

防衛省の分析では、今回のミサイルの最大高度は、約800kmに達したとみられている。

これは、国際宇宙ステーション(ISS)が飛んでいる高度約400kmの倍の高さだ。

JAXAによると、一般的には、宇宙空間は高度100km以上とされている。高度600〜800kmには人工衛星も多く飛んでいるという。

前回のミサイルの最大高度は約550km。つまり、2つのミサイルとも、日本「上空」の宇宙空間を通過していることになる。

では、こうした軌道の場合、光や音は地上で観測できるのか。JAXAの広報担当者はBuzzFeed Newsの取材に、肉眼での観測について、こう説明する。

「同じ高度帯の人工衛星は、夜空や明け方の良い条件下なら星のように小さな点として見えることがある。ただ、今回のミサイルは発射の時間帯や大きさなどの条件的に、難しいのではないでしょうか」

また、音についても、「空気がないと音が伝わってこない以上、宇宙空間に出たものから音が聞こえることは、物理的にありえません」と指摘した。

上空=領空?

上述の通り、宇宙空間を通過している北朝鮮のミサイル。政府発表や各種報道は「日本の上空」と伝えているが、これは「領空」とは違う。

防衛省は、BuzzFeed Newsの取材に対し、「領空の定義は明確化されていない」とコメントしている。

ただ、2009年に北朝鮮が事実上の弾道ミサイルを発射した際の次官会見では、領空とは「通常、上空100km程度」の「大気圏と言われるエリア」だとしている。

この時は、大気圏外を飛んだ事実上の弾道ミサイルについて、「いわゆる領空といわれるところの更に上を通過している」と表現している。

もちろん、領空より上の宇宙空間を飛んでいるのだから問題がない、というわけではない。そもそも大気圏外に飛ばす技術自体が、脅威であるからだ。

今回のミサイルは、前回に比べて最大高度が約250km高くなった。飛行距離も1000km長くなり、過去最長の3700kmとなっている。これは、その性能が「確実に向上」(小野寺五典防衛相)していることを意味する。

これまで何度も、アメリカ軍基地のあるグアムを攻撃すると警告している北朝鮮。平壌からグアムまでの距離は3400kmだ。小野寺防衛相は、今回のミサイルが「グアムに十分届く飛距離」との認識を示している。


BuzzFeed Newsでは【北朝鮮がミサイルを発射 Jアラートの文言が見直された翌日だった】という記事を掲載しています。