戦後76年の終戦の日、8月15日。東京都千代田区の靖国神社では、参拝者数が1万5000人(速報値)となり、ここ数年で最も少なくなった。2018年と比べると4分の1ほどの人数だ。
近くにある「無名戦没者の墓」である千鳥ヶ淵戦没者墓苑の人出も1240人で、例年の2千人台と比べ少なかった。
新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言が発令されていることと、朝から大雨が降り続いた影響もあるとみられる。
8月中旬とは思えない肌寒さとなったこの日、参拝の順番を待つ長蛇の列ができたが、参拝者の実数は少なかった。「密」を避けるために列の間隔を広げたため、長くなったのだ。
靖国神社によると、今年8月15日の参拝者数(開門午前6時〜閉門午後6時)は、1万5000人(速報値)。
境内の神門より拝殿側である「内苑」の参拝者数で、同じ集計方法が始まった2018年は6万4000人、19年は4万9000人、コロナ禍だった20年は2万4000人だった。
BuzzFeed Newsは2016年から毎年終戦の日の靖国神社を取材しているが、今年は人出が少ないうえ、真夏とは思えない肌寒さで蝉の鳴き声も聞こえず、特に「静けさ」が際立っていたと言える。
イベントのネット配信も
その要因はいくつかある。まず、靖国神社では感染拡大防止の観点から、8月7日から16日までを「戦没者慰霊週間」として位置付け、分散参拝を呼びかけている。これは昨年から始まった措置だ。
また、例年は遺族会などが全国各地から大型バスなどで神社を訪れているが、今年は昨年同様、そうした人たちの姿がなかった。近くにある日本武道館で開かれる全国戦没者追悼式の規模が縮小されているからだ。
さらに、改憲運動を目指す保守団体「日本会議」などによる参道での追悼集会やイベントも昨年に続きネット配信に(視聴者は18時半現在で約6600人だった)。書籍や物販を売る出店ブースもなかったことも影響しているとみられる。
旧日本軍やナチス・ドイツの軍服を着ているグループの姿はあったものの、軍歌を演奏する人たちはなく、街宣活動も多くはなかった。こうしたことから、昨年にも増して静かな、雨音が鳴り響く境内となっていた。
一方、千鳥ヶ淵は…
「無名戦没者」の墓地として国が管理し、身元がわからない遺骨が納められている千鳥ヶ淵戦没者墓苑の人出も、例年よりも少なくなった。
参拝者は、2018年が2629人。戦後75年の節目となった19年は2820人で、コロナ禍の昨年は2206人だった。今年は1240人と、19年の3分の2ほどに。
管理事務所によると、緊急事態宣言に加え、特に大雨の影響が大きいとみられるという。
墓苑には菅義偉首相ら閣僚が献花に訪れたほか、護憲派の市民団体「平和フォーラム」などによる追悼イベントが例年通り開かれていた。