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変異ウイルスが増加しているけれど、子どもは学校に行ってもよいの?

変異ウイルスが猛威を振るい、子供も大人同様感染しやすくなっていると言われますが、実際はどうなのでしょうか? 世界各国のデータを検証してみました。

2020年から始まった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行は、まさに今第4波突入といった様相を呈しています。

子どものCOVID-19について、当初はわからないことだらけでしたが、1年以上にわたる流行で少しずつ分かっていることが増えてきています。

Recep-bg / Getty Images

新型コロナウイルスが流行り始めてから、子どもたちの生活も一変した

そんな中N501Y変異ウイルスが中心となった流行が、大阪を中心とする関西、東京を中心とする関東や、それだけでなく宮城、愛知などの地方都市に第4波となって襲っています。

各地でまん延防止等重点措置(重点措置)が適用され、さらに東京、大阪、兵庫、京都では緊急事態宣言が発出されました。

大阪市立の小中学校は原則オンライン授業を行うと報道されています(ただしその後ツールの準備が間に合わないとして覆されているので、今後どうなるかはわかりません。

例えばインフルエンザなど、他の感染症に比べて、COVID-19は子どもが流行の中心になりにくいということは、皆さんもすでに実感されているかもしれません。休校措置は果たして必要なのでしょうか?

日本よりも感染者数が著しく多い欧米諸国では休校措置の経験から、その効果や、再開の方法などについて、多くの知見が集まってきています。

今回子どものCOVID-19をおさらいし、学校での流行や、休校措置の効果、学校でのCOVID-19予防策について、そして最後に変異ウイルスと子どもの感染について簡単にまとめました。

0. 子どものCOVID-19おさらい

さて、基本的に子どものCOVID-19をおさらいしたいと思います。

これはもう言っちゃってよいことだと思いますが、

子どものCOVID-19は成人に比べて数が少なく、軽症です。

例えば米国ですが、米国小児科学会が2週間に一度まとめている小児COVID-19の疫学データの中をまとめて報告してくれています。

4月15日付の発表では小児COVID-19は363万1189人と驚くべき人数が感染していますが、全体の感染者数が膨大であるため、割合としては13.6%にとどまっています。

米国の子どもの人口割合が25%であることを加味すると、成人に比べて少ないと言えると思います。

米国だけでなく、欧州の報告(2020年8月~11月)ではそれぞれ年齢別にみてみると、2〜11歳では基本的に人口比と感染者数に占める割合は人口比の方が高く、12〜15歳を分水嶺に16-64歳までにそのバランスが逆転します。(表1)

伊藤健太

欧州でもいわゆる小児では人口に占める割合よりも感染者が占める割合の方が少なく、そういう意味で成人に比べると感染者数は少ないと言えると思います。

一方でこれらの原因が、休校措置が置かれているから少ないのでは?とか検査をしていないからわからないのでは?というご指摘もあると思います。

ロックダウン中のドイツで流行初期に血液中の抗体価を測定し、かかったことがあるかどうかを調べた研究がありますが、託児所に預けられ、子ども同士の接触があったであろう小児も含めて、成人よりも感染者数は少ないという結果でした。

感染しにくさの理由としてウイルスの受容体であるACE2受容体の発現低下などが提唱されていますが、仮説の域を出ていません。

また死亡率についても、この欧州の報告でも感染者中0.01%の死亡であり、先のAAPの報告でも州ごとの集計で幅はありますが0.00〜0.03%の死亡にとどまります。5〜17歳を基準にすると、成人の死亡リスクはそれぞれ何十倍から何千倍にも高くなります。(表2)

伊藤健太作成 / Via cdc.gov

ただCDCの報告によると2021年4月14日までに0〜18歳の死亡は307件報告されており、COVID-19による小児の死亡はありえます。

とはいえ、死亡するような重症な症例はCOVID-19の検査は積極的にされる状況でしょうから、おそらく子どもの重症例の見逃しは少ないと思いますので、成人に比べると小児は軽症ともいえると思います。

「子ども」は感染しにくい、とひとくくりにしない方が良い

ただ、COVID-19は『子ども』とひとくくりにしない方が良いとも思います。

と言いますのは、表1にあるように5〜11歳に分水嶺が来ており、いわゆる小学校高学年以上になると患者数は人口比より高まっているように思います。

さらに日本の文科省の資料でも小学校より中学校、中学校より高等学校で感染者の家庭内感染が減り、学校内感染や、経路不明の感染が増加しています。(表3) 

文科省資料より伊藤健太作成 / Via mext.go.jp

このように活動範囲が、家庭内が主である乳児期や幼稚園児と、徐々に社会に広がる小学校、さらに中学校以降では様相を異にします。

そして、子どものCOVID-19で最も重要な合併症である多系統炎症症候群(※Multiple-inflammatory syndrome in children: MIS-C)ですが、500人以上の一番数多くまとまった研究ではその発症年齢の中央値は8.9歳(4区分範囲4.7-13.2歳)で、小学校3年生くらいに相当します。

また死亡率は1.9%でこの病態になった場合、成人と同様に高い死亡率となっていることを肝に銘じておきたいところです。

小児科的にこの年齢層が感染症関連の重症患者の中心になるというのは極めて珍しく、今まで保有しているいわゆる子どもの感染症というイメージとは少し異なるということは知っておいてよいと思います。

MIS-C:明らかな原因はわかっていませんがCOVID-19感染後数週間したところで、発熱や、消化器、呼吸器、循環器、皮膚など多系統の臓器に炎症が起きることを示唆する症状が出現し、血液検査で炎症反応が上昇している病態のことを指します。当初川崎病のようだといわれていましたが、好発年齢が異なることと、川崎病の診断基準を満たす症例が少なかったことなどから、現在では別の病態と考えられています。小児のCOVID-19で最も重要な合併症です。

最後に日本の疫学ですが厚生労働省3月24日時点の発表では、感染者数は10歳未満が13259人、10代が30031人で、この年代の死亡者はゼロです。

現在53万人以上が感染し、9600人強が亡くなっている日本ですが、小児は成人に比べてやはり軽症と言えるのではないでしょうか?

1. 学校でのCOVID-19流行

学校は子どもの学び舎というだけでなくコミュニティとしても重要です。

そして、当たり前のことですが忘れていけないのは、大人が子どもを預けて仕事に出ることができるのも学校の間接的な効果です。

Fatcamera / Getty Images

新型コロナで学級閉鎖をする必要はあるのだろうか?

学校と感染症と言えば皆さん容易に想像するのはインフルエンザウイルス感染症ではないでしょうか?2020年度を除く毎年冬場のシーズンにはインフルエンザ流行による『学級閉鎖』という言葉を耳にしてきたことだろうと思います。

当然学級閉鎖をする理由は学校が感染の温床と考えられるからです。

COVID-19ではどうでしょうか?

これまでのところ、学校での対面式学習と地域社会への感染拡大の関連を裏付けるようなデータはないようです。

また、基本的に感染者数が増加に伴い子どもの感染者数も増える傾向はありますが、その社会的感染者数の増加に学校再開や学童・青年期の子どもの感染者数の増加が先立つことはないようです

現状として、おそらく社会的感染者数増加の中心に学校はなっていないと思います。

2. 学校とCOVID-19

しかしこれらの知見は1年間という長い(そして欧米ではかなり巨大な)流行の果てにわかってきたことであり、流行初期には一般的な感染症と同様に学校が感染拡大の中心になる可能性が考慮され、多くの地域で学校閉鎖や休校措置が取られました。

実際に2020年3月までに107か国で学校が閉鎖され、8億6千万人以上の子どもに影響が出ました。

しかし流行が長期間に及ぶ中、学校再開の方法がかなり真剣に議論され、多くの研究が発表されています。

現在報告されているデータに則ると、どのような予防策を施せば、安全に学校へ通うことができるのでしょうか?

第一に、地域社会で流行させないことが重要

まず重要なことは、その学校が属する地域社会の流行がある程度抑えられていることです。流行が著しい場合、生徒や職員が感染した状態で登校してしまう可能性は高くなり、学校内での感染拡大を引き起こし得ます。

英国の保健省は、2020年最初のロックダウンを解除した6月1日から7月17日の間にかなり強化した調査を行いました。

幼児教育施設38000施設、小学校15600校、中学校4000校について、1日の出席者数中央値928000人におきた、COVID-19について、かなり徹底的に調べられています

この研究では、地域住民の発生率が10万人当たり5人増加するごとにアウトブレイク(流行)のリスクが72%(95%信頼区間 28〜130%)増加すると発表されています。

ちなみにこの期間の単発の発生は113件、二次感染が9件、アウトブレイクが55件報告されています。この数値は分母となる生徒数に比べて大きくないと思います。

他にも、ミシガン州とワシントン州で地域の流行が低い場合、学校再開と学校でのCOVID-19感染拡大は関連しませんでしたが、感染率が高まると、学校での感染が増加したと報告されています

当たり前っちゃ当たり前ですが、学校での感染予防に最も重要なことは地域社会の流行が抑えられていることです。

学校内への持ち込みはゼロにはできないが、学校内での拡大は予防できる

どれだけ慎重に準備・計画・調整を行っても、COVID-19流行がある最中に、学校内へのCOVID-19の侵入を防ぐことは難しいと思います。

仮に学校内にCOVID-19が入ってきたとしても、二次感染を防ぐことこそが重要で、逆にそれが可能であれば無闇に学校閉鎖をする必要性も低くできるのではないでしょうか?

2020年8月から10月の約9週間の間、米国ノースカロライナ州で計90000人以上の学童がいる11の学校において二次感染の発生数を評価した研究では、773人の市中感染が報告されました。

同時期のノースカロライナ州の流行状況では一人当たりの二次感染者数である実効再生産数が1.1強だったようで、学校内で同じように感染が拡大していれば二次感染者数は900人程度まで起きることが想定されました。

しかし、実際の二次感染者数は32人にとどまったとのことです

このような報告は他にも数多く(報告1報告2)あります。

学校内にCOVID-19が持ち込まれても学校内での感染対策を十分にすることが重要です。

学校職員の感染対策(ワクチン含む)を徹底すること

では学校内のCOVID-19拡大防止にはどのような感染対策が行われるべきでしょうか?

先に示した英国保健省の研究では、もう一点重要なことがわかっています。

それは、地域社会の感染率が高まると感染しやすいのは生徒より学校職員の方であるということ、そして、アウトブレイクに結び付いた症例のほとんどが学校職員由来であったということです。

Fatcamera / Getty Images

地域で感染が拡大すると、教師の感染率が高くなる

これは結構重要なポイントですね。

学校の感染対策というとどうしても子どもに目が行きがちですが、全体の疫学でも成人の方が、社会活動範囲が広く、COVID-19になる可能性は高いわけですから、職員の感染対策は重要です。子どもの感染対策ばかり躍起になっても不十分です。

ジョージア州の学校内クラスターを調査した研究でも教師が最初の一人になっていることが多かったとのことです。職員室などいわゆる教師のバックヤードでの感染対策を見直すべきでは?ということも提言されています

医療者も病室も重要ですが、休憩室や医局で気が緩みやすく、そこを発端としたクラスターはよく報告されていますよね。同じことが学校でも言えるのかもしれません。

また、教師に対してのSARS-CoV-2ワクチンも優先的に接種してはどうか?とも提案されています。日本でも(ふんだんにワクチンがあれば)教師も優先接種枠にすることができれば、学校内での感染拡大のリスクが低減できるかもしれませんね。

学校教員の方々はこの1年新たな学校運営に本当に苦心されてきたと思います。そんな中さらに頼み事をするようで申し訳ないですが、皆様ご自身の感染対策にも十分に気を付けていただきたいと思います。

学校外の感染対策も重要

さらに、感染は学校だけで起きるわけではありません。

ミシシッピ州の報告では、子どもや青年期の調査では、学校への出席は感染に関連する要因ではありませんでした。

一方で、COVID-19である人との接触や、集会への参加、家庭に訪問する人がいることが関連要因であったとのことです。

このように、学校外での感染対策を行うことも重要です。

学校での感染対策に奇策なし。3Wsを

さて、ここまで学校での感染対策をする前にできることをつらつら述べてきましたが、ここからが本丸の学校での感染対策についてです。

なぜこの話題を最後にしたかというと、ウルトラCの奇策があるわけではなく、今まで言われていることの繰り返しになるからです。それは3密を避けることと、マスクを着用すること、そして手指衛生です。

3密(密集、密閉、密接)回避はいまさら感ありますが、海外ではavoid 3Cs(Closed spaces, Crowded places,. Close-contact settings)と紹介され実践されています。

それとは別にobey 3Wsということも声高に叫ばれており、

それは

  1. マスクを着用しよう(Wear a mask)
  2. 距離を保とう(Watch your distance)
  3. 手を洗おう(Wash your hands)

の3Wsです。

何も目新しいことはないですよね?これらの注意事項は皆さん耳にタコができるほど聞いていますよね?

多くの専門家がこの1年間、繰り返し同じ内容を、口を酸っぱくして言ってたのは、やはり変わらず重要だからです。

特に重要な距離を保つこととマスク着用についてもう少し掘り下げてみましょう。

生徒間の距離は1メートル離せばよい

距離を保つといっても、どれくらい?と思いますよね。

飛沫感染が主と考える場合、およそ飛沫が飛ぶ最大範囲である6フィート(1.82メートル)離れることが推奨されることが多いです。そのため日本では2メートル離れましょうというような指導がされます。

Dusan Stankovic / Getty Images

子ども同士の距離は1メートル空いていれば大丈夫そうだ

しかし、学校のように多人数が一定の面積の場所に集まる環境では、6フィート離すのは難しいことが多いです。

2020年の秋くらいから、COVID-19の感染対策としては生徒間の距離を3フィート、または1メートル保てば十分であるということがわかってきています。

実質2メートル離せない環境で学校を運営するしかない状態であっても、他の感染対策(後述するマスク着用など)が行われていれば1メートルの距離で感染リスクは高まらないと判断されてきたわけです。

スイス、オーストラリア、イタリア、英国、ドイツ、イスラエルなど様々な国から同様に報告されています

マサチューセッツ州で行われた大規模後ろ向き研究においてもマスク着用がされている状況では3フィートと6フィートで感染リスクが変わらないという研究結果が出ました。

これを受けて、米国小児科学会も2021年3月25日にマスクを着用してれば子ども同士の距離は3フィート(91センチメートル)離せばよいとガイダンスを変更しました。

マスク着用が重要

身体的距離を短くしても良いという判断の前提となっているようにマスクの着用は重要です。

米国フロリダ州の検討ではマスク着用が義務付けられていない地区で感染率が高かったと報告されています

日本の文科省による学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアルでも、人との距離が十分とれない場合のマスクの着用は推奨されています。

欧米諸国では当初学校閉鎖が大々的に行われ、その後安全に学校再開する方法を様々吟味してきました。その結果、地域社会の感染率を下げ、学校外での感染対策を十分に行い、3密回避と3Wsの遵守ができれば、学校内の感染拡大は限定的であることがわかっています。

日本の現在の感染状況が今後どのように変化するかは注視が必要です。ただ私見ですが欧米諸国の状況を見るに、すぐに学校閉鎖とせずに、現在行っている感染対策を粛々と継続することが必要だと思います。

3. 子どもは変異ウイルスに感染しやすい??

さて、最後に補足です。

英国でN501Y変異が見つかった2020年12月師走、今まで感染しにくいと考えられていた子どもにも感染しやすい恐れというニュースが駆け巡りました。

我々小児科業界でも、とうとうその時が来たか…とかなり緊張が走ったことを覚えています。

その後、日本にもN501Y変異ウイルスが入ってきて、現在大阪など様々な地域で猛威を振るっていますが、実際に子どもは変異ウイルスに感染しやすいのでしょうか?

前提として全体の感染者数が増加すればするほど子どもの感染者割合が増えるということは変異株でなくとも確認されている事象です。

変異株は感染力が高いため、全体の感染者数が増加する可能性があります。そのため感染者数が増えれば結果として子どもの感染者割合も増えるかもしれません。

しかし、子どもに感染しやすくなっているかどうかは別問題です。

日本小児科学会は2021年3月23日に変異株についてコメントを出しています。

その中で変異株が拡がっている英国ロンドンを例に挙げ、変異ウイルス出現前後で成人と子どもの感染者の割合が変化していないとしています。

また2021年4月21日付で、厚生労働省アドバイザリーボードでも日本の現段階で15歳未満の明らかな感染拡大傾向はみられないと報道されています

現時点では変異ウイルスが特別子どもに感染しやすいということを証明するデータはないようです。

変異ウイルスの感染者数が増加すれば、結果的に子どもの感染者数は増えると思います。

変異ウイルスだから子どもに感染しやすいというわけではなく、全体的に感染力が強いからというロジックだと思います。結果として子どもの感染者数増加は起こりえるので、今後の動向に注視していく必要はあります。

最後に

子どものCOVID-19と学校、そして変異ウイルスに関して簡単にまとめてみました。新たな情報が集まればその都度対応は協議する必要があると思います。

しかし、子どものCOVID-19流行には成人や社会全体の流行が密接にかかわっています。子どもの学ぶ機会、そして、親御さんたちが子どもを安心して預けられるように、今まで言われている感染対策を守っていただき、一刻も早く国民全体にワクチンが普及することを願います。

伊藤健太さん提供

伊藤健太さん

【伊藤健太(いとう・けんた)】あいち小児医療保健総合センター総合診療科医長

2007年3月、鹿児島大学医学部卒業。名古屋第二赤十字病院、国立成育医療研究センター感染症科、東京都立小児総合医療センター感染症科を経て、2016年4月より現職。著書に『小児感染症のトリセツREMAKE 』(金原出版)