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子どもはかかりにくいと言うけれど… 小児科専門医が世界中の研究を調べ尽くした「子どもと新型コロナ」で気になる8つのポイント

新型コロナ、子どもはかかりにくいと言われていますが、そうは言っても心配です。どんなことに気をつけて生活したらいいか、よく聞かれる8つのポイントについて小児科専門医がお伝えします。

今年の夏は、テレビもインターネットもSNSも、どこを向いてもコロナコロナと、夏バテならぬ、コロ夏バテしている方々も多くいらっしゃると思います。

ほんと、疲れますよね。今年の夏はほんとコロナツです……

そして、子どもが家庭内にいらっしゃる方、また、子どもに関わるお仕事に従事されている方々など『コロナと子ども』についてわからないことを抱えていらっしゃる方も多いと思います。

そんな方々に少しでも子どものコロナについて、今わかっていることを整理していただくために、子どものコロナについて気になる8つのポイントについて説明したいと思います。

1.子どものコロナ、大人より少なく、軽症です

新型コロナウイルス感染症はSARS-CoV-2というコロナウイルスによる感染症でCOronaVIus Diseases-2019を略してCOVID-19と言います。

まず、子どものCOVID-19はどんな病気か、大まかにまとめます。

子どものCOVID-19は、現時点でわかっていることとして、成人に比べ少なく、軽症です。

2020年8月上旬時点で米国小児科学会のサーベイランスデータによると、報告された全症例のうち子どもは約9%、州別では全入院の0.5〜5.3%を占めるのみです。

2018年の米国の20歳未満人口が25%であることからも人口割合以上に感染者数が少ないことがわかります。

最も早く流行が拡大した中国でも同様で、0〜19歳は全入院数の1.2%を占めるのみでした[1]。

日本でも同様に7月15日時点のデータですが、年齢が判明している感染者22140例中、10代以下は1064例で4.8%でした。

このように子どものCOVID-19は成人に比べて少ない傾向があります。

重症度も低いです。先に示した米国の報告でも感染した子どもの中で入院は0.3〜8.9%にすぎません。

「入院=重症」でいいの?

ただし、入院イコール重症と判断するのは注意が必要です。

例えば、日本ではCOVID-19は感染症法に基づく入院勧告・措置が行われる疾患であり(現在では施設入所や自宅療養が行われてはいますが)、どれだけ軽症でも入院していることが多々あります。入院率を重症度の参考にすることは難しいです。

また欧州で行われた多国間の追跡研究では子どもの感染者の入院率は62%です[2]。

隔離を目的に入院させる場合もありますので、入院だから重症というわけではありません。

そのため、重症度を検討した研究を見てみましょう。中国では酸素飽和度が92%未満(血液の酸素濃度が低い状態)である場合に重症と定義したところ5.9%が合致しました[1]。

7780人の小児について検討したシステマティックレビュー(今あるエビデンスを系統的に検索し、評価する研究手法)でも、重症患者が入院する集中治療室への入院歴は3.3%でした[3]。

日本では、診療の手引きに基づいた重症度分類による重症者割合は10代以下で0%です(50代1.9%、60代8.0%、70代6.4%、80代以上2.4%)。

このように成人に比べ子どものCOVID-19は軽症であることがわかると思います。

子どもにとって、インフルエンザより怖い病気?

次に他の感染症に比べた場合はどうでしょうか?

子どもの感染症といえばインフルエンザと思う方もいると思います。

では、インフルエンザとCOVID-19について比較してみましょう。

死亡には大きな差はないように見えます。

しかし、インフルエンザは小児人口の1割弱がかかっています。

一方、COVID-19は米国ほどの流行があっても、10万人当たり500人程度で、明らかに数が少ないです。インフルエンザは感染者数が多いため同じくらいの死亡率でも、総死亡者数はより大きいと思われます。

インフルエンザは比較的、サーベイランスデータが豊富ですし、皆さんもイメージがしやすい病気です。そのインフルエンザと比較してもとびぬけて子どものCOVID-19が重症ではないことがご理解いただけたでしょうか?

私は、子どものCOVID-19にまつわる様々な事柄を扱う上で、この

『子どものCOVID-19は多くはなく、重症度もとびぬけて高くない』

という前提を踏まえることが非常に重要だと思います。

長期的な後遺症などまだまだ分からないことは多くありますが、誤解を恐れずに言うならば、

『子どものCOVID-19は普通感冒(いわゆる風邪)やインフルエンザなどの一般的な感染症と大きく変わらない』

です。

そのうえで子どもの学校・幼稚園・保育園などの集団生活や、マスクの使用方法などの感染対策、COVID-19対策の子どもへの様々な影響などについてできる限りエビデンスに即して、わかりやすくお答えしていきたいと思います。

2.子どもがかかるとどんな症状があるの?

まず、重症化しないとはいえ、どのような症状があるのでしょうか? そして、どんな症状に気を付ければよいのでしょうか?

一般的な感染症と大きく変わらないと述べた理由の一つが、子どものCOVID-19の症状です。

米国疾病対策センター(CDC)が4月にまとめた報告では、小児COVID-19の症状は下の表にあるように、咳、熱などの症状が中心となっています。[6]

普通の風邪に比べて鼻汁を訴える人の数が少ないのは、特徴と言えば特徴かもしれません。

しかし、鼻汁があってもなくても、症状のみでCOVID-19か、普通の風邪か、また秋口から流行するインフルエンザと見分けがつくとは、私には到底言えません(インフルエンザも症状のみから診断することは難しいといわれています[7])。

さらに全く症状がない子どもが数%から3割弱いるといわれています

子どものCOVID-19が咳や発熱などの症状だけで疑いを強めたり弱めたりできないならば、どうすればよいのでしょう。実際これはかなり難しい問題で、無理ゲーであるといわざるを得ないのが現状です。

そのような中、現状わかっている子どものCOVID-19の特徴として、家族内感染が多いことは一つの光明かもしれません。7780人の小児を検討した先のシステマティックレビューでも、およそ75%の患者は家族内で感染者と接していました[3]。

子どもがCOVID-19であるかどうか?を予測するのに、最も必要な情報は

家族内で感染者と接したかどうか

なのです。

3.重症化のサインは?

ただし、少ないとはいえ子どもが重症化することはゼロではありません。そのため、どんな形で重症化するか知っておくと少し安心だと思います。

子どもの重症COVID-19は大まかに2つの形があり得ます。

  1. 呼吸不全(呼吸の状態が悪い)
  2. 多臓器にわたる炎症


です。

まず、呼吸不全ですが、子どもでも呼吸状態が悪化して、酸素投与や人工呼吸器を必要とする症例は多くはないですが報告があります。7780人の検討では11.7%に呼吸困難(呼吸が苦しい)が現れ、人工呼吸器が0.54%に必要となっています[3]

肝は、呼吸が苦しいサインを見逃さないことです。

呼吸が苦しいサインとは

  1. 呼吸が早い
  2. 陥没呼吸(胸と腹の間やのどと胸の間が息を吸う時に凹む)
  3. 尾翼呼吸(鼻の穴をぴくぴくさせる)
  4. うなるような呼吸(吐くときにンーンーいう)


などです。

50m走を走った後のような呼吸を、寝ているときや安静にしているときにしていたら要注意です。

ただし、このような呼吸はCOVID-19関係なく、常日頃から注意してほしい状態です。

次に、多臓器にわたる炎症を見てみましょう。

2020年5月くらいに欧米を中心にやや小学校低学年くらいの年齢の子どもに、川崎病に似た症状(発熱、皮疹、眼や口の粘膜が赤くはれるなど)を起こすCOVID-19患者が多く報告されるようになりました。

その中の10〜20%で心臓機能が低下し、2〜4%が死亡しています[8]。

多くの臓器にわたり炎症が起きているという意味でPediatric Inflammatory Multisystem Syndrome: PIMSやMultisystem Inflammatory Syndrome in Children: MIS-Cなどと呼ばれています。なぜか日本をはじめとする東アジアではまだ報告がありません。

この病状はCOVID-19流行から2〜4週間以上経ってから起きることがわかっています[8]。

日本でこの病態が子どもの間で起きるかは未だ不明ですが、子どもの間でCOVID-19流行が起きた後1〜2か月は注意が必要です。

COVID-19流行後に全身状態が悪い子ども(年齢中央値は8歳くらい[9, 10])がいたら要注意です。ただし、そんなに具合の悪い子どもがいたらCOVID-19関係なく対処が必要ですよね。

まとめるとCOVID-19の流行があろうがなかろうが、状態が悪いと思う子どもにはぜひ注意を向けてください。

4.どんな持病があったら特に警戒すべき?

どんな持病がある子どもは注意すべきか、というのも気にかかるところでしょう。

持病、いわゆる基礎疾患がある子どもを育てる保護者の方々は心配ですよね。子どものCOVID-19の35.6%程度に何らかの基礎疾患があったといわれています[3]。その内訳は免疫不全(ウイルスと戦う力が弱い)、呼吸器疾患(喘息など)が約半分を占めています。

ただし、繰り返しになりますが基本的に子どものCOVID-19は軽症でした。そのため感染者にどのような基礎疾患があるかを知るよりも、重症者にどのような特徴があったかが、どんな持病に注意が必要かの答えになるでしょう。

中国の研究では、まず1歳未満は重症化のリスクが高いことが示唆されました(重症者割合<1歳: 10.6 %, 1-5歳: 7.3%, 6-10歳: 4.2%, 11-15歳: 4.1%)[1]。

欧州多国間コホート研究でも1歳未満は集中治療室に入るリスクが高かったようです。[2]また、この研究では何かしらの基礎疾患がある方が集中治療室に入りやすく、特に慢性の呼吸器疾患、心臓疾患、悪性腫瘍、神経学的な異常がある子どもにリスクが高かったようです[2]。

米国NYの小児病院の検討では肥満が重症化リスクとして報告されています[11]。

全体的に子どもの重症患者の数は少ないため、まだまだ本当の重症化リスクはわかりません。全体の感染者・重症者の数が増えるほど、もう少し全貌が明らかになり、正確なことが言えるようになると思います。

ここでも重要な姿勢は持病があっても、なくても、重症化を疑う症状に注意することです。

5.二歳未満のマスク、やはり必要ないの?

「2歳未満にマスクが必要ない」と日本小児科学会が提言を出しています。この方針は今も変わらないのか、保護者の皆さんはきになるでしょう。

日本小児科学会は2020年6月11日に2歳未満の小児に対するマスク着用の危険性について考え方を示しました。(乳幼児のマスク着用の考え方)2歳未満は窒息のリスクがあるという米国CDCや米国小児科学会の提言を参考資料にしています。

これらの資料には特に根拠となる出典があるわけではありません。

実際に2歳未満の子どもがマスクによる窒息を起こしたエピソードがあるのか、私が調べた範囲ではありませんでした。

しかし、半ば常識的に考えて、2歳未満の乳幼児がマスクを適切に使用することは難しいと思います。一方で、人と2m離れることを実行することも年齢的に難しいため、COVID-19予防に関しては保護者と一蓮托生です。

保護者の方々が適切にCOVID-19予防に努めていただくことが2歳未満の子どもを守るためには重要です。

この記事を書き終えた2020年8月21日にWHOとUNICEFが小児のマスクに関したガイダンスを改訂しました。

その内容は

・5歳以下の子どもにはマスクの着用を義務付けるべきではない

・6~11歳の子どもにマスクを使用するかどうかの決定は

  1. 子どもが生活している場所での感染拡大があるか
  2. 子どもが安全かつ適切にマスクを扱えるか
  3. 学校や保育サービスなどで、マスクを手にしやすく、また交換・洗濯は可能か
  4. 大人がマスクの安全な着脱方法について十分に監督指導が可能か
  5. 学習や心理社会的発達に与える影響について、教師、両親、保護者、医療従事者と相談しているか
  6. 子どもが、高齢者やその他基礎疾患がある人など、重症化しやすいリスクのある人達と関連がある特定の環境にいるか


などを勘案して決定すべき

・12歳以上は成人と同様にマスク着用を推奨する

とあります。

・その他

  1. 発達障害やその他基礎疾患などある子どもたちへのマスクの使用は義務づけるべきでない(子どもの親、保護者、教育者、医療提供者がケースバイケースで評価すべき)
  2. 重度の発達障害や、呼吸器疾患がある子どもはマスク着用が困難であり、どのような場合にも着用を義務づけるべきではない
  3. 嚢胞線維症・がんなどの重症化リスクが高い基礎疾患のある子どもは、主治医と相談の上、マスクを着用すべきである


なども推奨されています。

5歳未満の推奨を義務づけるべきでないとした根拠ですが、インフルエンザウイルス感染症などその他の呼吸器ウイルスに対する子どものマスクに関する有効性などを検討した研究を引用しています。

まとめると

  • 小学校低学年(6〜9歳)はそれ以上に比べてマスクの使用が効果的でないこと
  • 5〜11歳までのマスクの効果は12歳以上に比べて低いこと
  • 15歳未満の子どもには一貫してマスクを適切に着用できないこと

などが言われています。

米国や日本の小児科学会の推奨とは異なっていて悩ましいですね。

私個人としては、現時点で

  1. 子どものマスク着用とCOVID-19感染拡大の関連は、まだまだ分かっていないことが多いということ
  2. 子どものマスク着用には限界があるということを大人が理解すること
  3. 子どもに明らかにデメリットになりそうな状況を排除していくこと


などに注意しながら、人と近い距離でしゃべるシーンではマスクを着用すればよいと思っています。

6.保育園・幼稚園・学校などの集団生活、危なくないの?

「学校・幼稚園・保育園などの集団生活をさせても大丈夫か?」というのも、よく聞かれる質問です。

この問題を考えるうえで、流行拡大に対する集団生活の影響を考える必要があります。集団生活をやめることで感染リスクが下げられるかを考えてみます。

インフルエンザウイルス感染症が学校で流行すると学級閉鎖や時に学校閉鎖が行われることがありますね。子どもが感染流行の中心となるインフルエンザウイルス感染症に対してこの方法は一定の効果があります。

具体的には流行のピークを下げ、遅らせる効果があることがわかっています。流行の初期に実施した方が、効果が高く、実施期間を長くするほど、ピークを遅らせることができます[12]

どうやらインフルエンザウイルス感染症に関しては集団生活をやめることで感染症流行拡大を抑制する効果はあるようです。

一方で、すべての薬に副作用があるように、学校閉鎖にも副作用があります。

学校閉鎖で休むのは子どもだけではなく、面倒を見るために、保護者も仕事を休む必要があります。すると同時に経済的活動にも影響が出得るので、米国や英国で2〜3か月閉鎖した場合にGDPが数%下がるという試算がされているほどです。[13, 14]

まさに感染対策と経済活動の天秤のバランス問題ですね。

さて、コロナウイルス感染症に関してはどうでしょうか?

SARS(重症急性呼吸器症候群)の学校流行は稀であるといわれています[15]。そのため、学校閉鎖は効果が無いようです[16]。

ではCOVID-19に関してはどうでしょうか?

COVID-19は学校での流行は世界中で報告がありますが、学校が流行の大きな中心になることは少ないようです。日本でも7月31日までの情報では小中高校生の感染者242人中学校内感染といわれているのは5%の11人にすぎませんでした

理由はよくわかっていませんが、学校や幼稚園が流行の中心になるインフルエンザウイルス感染症などと比べると明らかに様子が違いそうです。

そのため、COVID-19に対する学校閉鎖の流行抑制効果は、感染者隔離やソーシャルディスタンスをとることなど他の方法に比べて低いという試算がパンデミック初期に英国で行われています。

しかし、米国のように流行がかなり拡大している国では、州レベルで実施した学校閉鎖にCOVID-19拡大抑制効果があるという報告も出てきています[17](インフルエンザウイルス感染症と同様に流行早期に実行した方が、効果が高いようです)米国では学校再開をどのように行っていくか日々議論が続いています。

まとめますと、現状日本のCOVID-19感染症流行抑制に学校閉鎖に効果があるかどうかはわかりません。

おそらく、流行状況など様々な要素が関わりますし、仮に効果があったとしても、学校閉鎖が子どもに与える負の側面についてもバランスが取れているか考慮すべきです。

私は現時点では、文部科学省の衛生管理マニュアルを学校側が遵守し、各家庭が新たな生活様式を守りながらであれば、子どもの集団生活は可能であると考えています。

7.ウィズコロナの生活が子どものメンタルの与える影響は?

子ども同士距離を置いて生活することに、発達や精神面に負の影響はないのか?

我々小児科医も非常に懸念している案件です。

中国武漢市で子どもが自宅隔離されていた時の精神的影響を評価したアンケート調査研究がありますが、抑うつ状態が22.6%、不安症状が18.9%に見られました[18]。

日本でも国立成育医療研究センターがコロナ×こどもアンケートを実施しており、今の状況で、72%が何らかのストレス反応を示していることがわかっています。

具体的にどのような負の影響が出てくるかは今後の状況を注意してみていく必要があると思います。

このアンケートで私が重要であると思っている点ですが、子どもの意見がコロナ対策に反映されているか?という質問に対し、小学校低学年の15%、小学校高学年の25%、中高生の42%が『あまりそうは思わない』または『全くそうは思わない』と答えています。

大人もずっと『コロナだからしょうがない』と言い続け、戦っていると思います。私もそうです。

しかしその状況は子どもも同じです。そして、彼らの声は社会に届きにくいということを、今一度確認しておく必要があると思います。

私は、子どもにCOVID-19について、わかりやすく説明することが必要だと思います。例えば、なぜマスクをするのかという子どもの質問に『コロナだからしょうがない』ではなく、『人と近くで話す場合、マスクをすると感染を予防できるからだよ』というような風にです。

また、COVID-19流行により会えなくなってしまった親戚や友人もいると思います。そのような人と連絡を取り合うと良いと思います。

あと最も重要なことですが、もし、子どもが『自分がコロナにかかったらで死んじゃうの?』という恐怖や不安を抱えていたら、『子どもはほとんど大丈夫だよ。』というメッセージを伝えてよいと思います。

8.子どもと高齢者、引き離した方がいいの?

共働きの家庭などでは、祖父母に子どもの世話をしてもらうこともあるかもしれません。これはリスクが高い行為なのでしょうか?

高齢者は、COVID-19の重症化リスクが高いことは皆さんご存じだと思います。核家族でない家庭内で3世代、時には4世代が一緒に住んでいる場合、子どもと高齢者の祖父母、曽祖父母との接触は避けられません。当然お世話をすることもあると思います。

それが危険なことかどうかを考えるうえで、私はこの質問を

「子どもが、家庭内のCOVID-19拡大の中心になるか?」

という風に言い換えたいと思います。

様々な検討がされていますが、韓国で行われた60000人の接触者(5700人の発症者)について疫学調査を行った研究を紹介します[19]。

家庭内の感染率は11.8%です。そして、子どもが感染源であった場合の解釈が難しいのですが、0〜9歳では5.3%で最もリスクが低いです。しかし、10〜19歳では逆に最も高くなっています(18.6%)。

これは学校閉鎖中のデータであり、10〜19歳でなぜ感染が多くなったか?(逆に0-9歳でなぜ感染が少なかったか?)に対する答えはわかりません。

米国の研究で0〜5歳の軽症のCOVID-19患者では、鼻腔内のウイルス量はそれ以上の年齢層に比べて10〜100倍多いこともわかってきており[20]、この疫学調査の結果とも乖離しています。

基本的には家庭内で可能な感染対策を行うことが重要であると思います。

しかし、家庭内や、子どもが通う集団生活内で流行が起きた場合は、積極的に高齢者の方との接触をすることは、私は推奨しません。

終わりに

繰り返しになりますが、子どものCOVID-19は今のところ軽症で少ないです。保護者の皆様はまずそのことをご自分のお子さんに伝えてあげてください。

また、COVID-19流行に対する様々な対策が行われていますし、今後も追加されることがあると思います。

いきなり休校になったり、夏休みが短くなったり、親戚に会えなくなったり、催し物がなくなったり…。子ども達は我々が思っている以上に多くの犠牲を払っています。そのことを大人は自覚しておきたいですね。

私は、小児科医として、感染症を専門にする医師として、今後も小児のCOVID-19に関する新たな情報にアンテナを張り、皆様にわかりやすくお伝えしていきたいと思います。

【伊藤健太(いとう・けんた)】あいち小児医療保健総合センター総合診療科医長

2007年3月、鹿児島大学医学部卒業。名古屋第二赤十字病院、国立成育医療研究センター感染症科、東京都立小児総合医療センター感染症科を経て、2016年4月より現職。著書に『小児感染症のトリセツREMAKE 』(金原出版)

【参考文献】

1. Dong Y, Mo X, Hu Y, et al. Epidemiology of COVID-19 Among Children in China. Pediatrics 2020; 145(6): e20200702.

2. Götzinger F, Santiago-García B, Noguera-Julián A, et al. COVID-19 in children and adolescents in Europe: a multinational, multicentre cohort study. The Lancet Child & Adolescent Health 2020.

3. Hoang A, Chorath K, Moreira A, et al. COVID-19 in 7780 pediatric patients: A systematic review. EClinicalMedicine 2020; 24: 100433.

4. Shang M, Blanton L, Brammer L, Olsen SJ, Fry AM. Influenza-Associated Pediatric Deaths in the United States, 2010–2016. Pediatrics 2018; 141(4): e20172918.

5. Tokars JI, Olsen SJ, Reed C. Seasonal Incidence of Symptomatic Influenza in the United States. Clinical Infectious Diseases 2018; 66(10): 1511-8.

6. Bialek S, Gierke R, Hughes M, McNamara LA, Pilishvili T, Skoff T. Coronavirus Disease 2019 in Children — United States, February 12–April 2, 2020. MMWR Morbidity and Mortality Weekly Report 2020; 69(14): 422-6.

7. Peltola V, Reunanen T, Ziegler T, Silvennoinen H, Heikkinen T. Accuracy of clinical diagnosis of influenza in outpatient children. Clin Infect Dis 2005; 41(8): 1198-200.

8. Levin M. Childhood Multisystem Inflammatory Syndrome - A New Challenge in the Pandemic. N Engl J Med 2020; 383(4): 393-5.

9. Belot A, Antona D, Renolleau S, et al. SARS-CoV-2-related paediatric inflammatory multisystem syndrome, an epidemiological study, France, 1 March to 17 May 2020. Euro Surveill 2020; 25(22).

10. Feldstein LR, Rose EB, Horwitz SM, et al. Multisystem Inflammatory Syndrome in U.S. Children and Adolescents. N Engl J Med 2020; 383(4): 334-46.

11. Zachariah P, Johnson CL, Halabi KC, et al. Epidemiology, Clinical Features, and Disease Severity in Patients With Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) in a Children’s Hospital in New York City, New York. JAMA Pediatrics 2020: e202430.

12. Bin Nafisah S, Alamery AH, Al Nafesa A, Aleid B, Brazanji NA. School closure during novel influenza: A systematic review. J Infect Public Health 2018; 11(5): 657-61.

13. Sadique MZ, Adams EJ, Edmunds WJ. Estimating the costs of school closure for mitigating an influenza pandemic. BMC Public Health 2008; 8: 135.

14. Brown ST, Tai JH, Bailey RR, et al. Would school closure for the 2009 H1N1 influenza epidemic have been worth the cost?: a computational simulation of Pennsylvania. BMC Public Health 2011; 11: 353.

15. Wong GW, Li AM, Ng PC, Fok TF. Severe acute respiratory syndrome in children. Pediatr Pulmonol 2003; 36(4): 261-6.

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18. Xie X, Xue Q, Zhou Y, et al. Mental Health Status Among Children in Home Confinement During the Coronavirus Disease 2019 Outbreak in Hubei Province, China. JAMA Pediatr 2020.

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