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あるカップルがトランプ大統領の就任を前に結婚を決意した”わけ”

日本人とアメリカ人の2人は、結婚という道を選んだ。愛し合っている、それだけが理由ではなかった。

「初対面のとき、ちょー失礼だったんだよ、こいつ」

日本人の林康紀さん(25歳)が、笑いながらBuzzFeed Newsに語った。アメリカ人のマシュー・クスソクさん(32歳)と出会った当時を懐かしむ。そんな2人は、ゲイのカップル。2016年、アメリカで結婚した。

出会いは、その1年ほど前。新宿二丁目のゲイバーだった。康紀さんが「調子どう?」と話しかけた相手が、マシューさんだった。

「なんで君と話さなきゃいけないの?僕と会話するのに値する人間かどうか説明して」

そんなマシューさんの返答だったが、康紀さんは怖気づかなかった。

「はあ?ってなって。当時、起業して経営していたLGBT向けサービスを提供する会社のことや将来のビジョンの話をして、『話すに値するっしょ?俺』って言ったの」

マシューさんは、少し照れながら「がんばってくれて嬉しかった」と振り返る。バーでの会話は弾み、その後にデートを重ねた。3ヶ月後に恋人の関係になり、同棲を始めた。

シングル同士では得られないもの

Kensuke Seya / BuzzFeed

「僕らにとって、結婚はパートナーシップ。『I love you so much!』だけのロマンチックなものではないんだ」

2人は愛し合っている。しかし、結婚の決め手は、それだけではなかった。彼らが必要としたのは、シングル同士では得られない「権利」だった。

互いの人生の目的や価値観が似ていた。いろんな国に一緒に遊びに行き、いつか海外で働いて2人で暮らすーー。未婚の場合、暮らしたい国で仕事を見つけなければビザを取得できず、一緒に暮らせない恐れがある。

マシューさんは大学の英語教師で、康紀さんはIT系のスタートアップ企業に勤める。どちらも職を確保できる保証はない。そんな会話をするうち、「結婚しよう」と自然に決まった。

同性婚を認める国なら、どちらかが仕事を見つければ、配偶者ビザを利用して2人で暮らせる。また、税金の控除もあるし、例えば一方が病気になったときには、もう一方は有給休暇をもらえて看病に専念できる。

「トランプ大統領の就任前で良かった」

結婚証明書を持ち、嬉しそうにする2人。
Koki Hayashi

結婚証明書を持ち、嬉しそうにする2人。

2016年6月、アメリカの連邦最高裁判所が同性婚を認める判決を下し、全米で同性婚が合法化されることになった。

トランプ大統領は、就任前の同年11月、同性婚について「最高裁で結論が出ている。それで構わないと思う」と話した。ところが、就任後にも、性的少数者(LGBT)の支援者らから、性的少数者に差別的な政策を取る可能性があると指摘されている。

2人が結婚したのは12月、アメリカ・コロラド州。移民にも厳しい立場で臨むトランプ大統領に対し、康紀さんは不安が募った。

「ビザや同性婚の法律に関してトランプが変えるかもしれず、100%大丈夫だと言い切れないと思った。だから、就任する前に結婚しようってなった」

今になってみれば、就任後に結婚しても良かったのかもしれないが、それは結果の話だ。「前で良かった」と2人とも感じている。マシューさんは、こう見ている。

「今のアメリカでは、同性婚をダメって言ったら、『ノートランプ』って多くの国民に突き放される。しかも、彼はたくさんの問題を抱え、忙しい。ゲイの結婚を禁止する力も時間も、今はないのでは」

それでも、こうも思う。

「世界が変わるスピードは速いから、怖い。だから、就任する前に結婚して良かった」

交換した結婚指輪、噛みしめる幸せ

Koki Hayashi

「職員も家族もみんな『おめでとうー!』って言ってくれたんだ」

役所には、マシューさんの家族と一緒に行った。結婚許可証にサインをして、証明証をもらった。

そして、結婚指輪をその場で交換した。これから人生を共に歩むことを誓い合い、決意が生まれた。いつか結婚式を挙げたいとも考えている。

「自分の手を見たときに、結婚したことを実感するし、2人で立てた約束、選んだ道を思い出すよ」と話すマシューさん。

朝起きるとベランダで朝食をとる。仕事を終えて帰ってきたら、ハグをする。そんな毎日を送っている。

「そういう習慣が、家族と実感させるよね。一緒に暮らせて幸せ」

社会を変えるために

Kensuke Seya / BuzzFeed

大学生でカミングアウトした2人は、職場でもオープンにしている。しかし、親とは一時、不仲になった。マシューさんは5年間、康紀さんは半年間、関係を取り戻すのにかかった。今では理解があるし、結婚を喜んでくれている。

康紀さんは、アメリカの永住権がそのうち手に入る。しかし、マシューさんは、同性婚を認めていない日本の永住権をもらえない。2人は社会を変えたいと思う。

ゲイであると多くの人が「カミングアウト」して、存在を知ってもらうことが、その力になると信じている。

マシューさんはこんな考えを持つ。

「カミングアウトってプールにダイブする感覚に似ている。勇気がいるし、とても怖いけれど、ジャンプしたら一気に気持ちが楽になれる」

康紀さんはこうだ。

「キモいとか言ってくる人は必ずいる。でも、言い続ければ、時間はかかるけれど、相手が見方を変えてくれるよね」

辛い思いもしてきた2人だからこそ、気持ちを強く持てる。

マシューさんは最後にこう期待した。

「日本では、ゲイだとオープンにする人と会う機会が少ない。あまり知らないからこそ、受け入れる態勢が整わないんじゃないかな。だから、カミングアウトするゲイが増えれば、変わると思っている。アメリカだってそうやって変わったんだから、日本もきっと変われるよ」


BuzzFeed Japanは、4月26日より5月9日まで「LGBTウィーク」として、LGBTに焦点をあてた記事やコンテンツを集中的に発信します。

13人に1人は、セクシャル・マイノリティ。これは株式会社電通が2015年、成人約70,000人を対象に調査した結果です。LGBTをはじめとする性の多様性は、そのまま社会の多様性へとつながります。私たちは今回の特集を通じて、多様性をポジティブにとらえる機会を提供したいと考えています。

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バズフィード・ジャパン ニュース記者

Kensuke Seyaに連絡する メールアドレス:kensuke.seya@buzzfeed.com.

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