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築地と豊洲の市場”併存”は「選挙目当て」? 玉虫色の方針に3つの疑問

財源をどう確保するのか、採算が取れるのかが不明確なままだ。

地域政党「都民ファーストの会」を率いる東京都の小池百合子知事が、築地市場の移転問題で「築地は守る、豊洲を活かす」と基本方針を表明したのは、都議選の告示3日前だった。

自民党から「決められない知事」と批判を浴び続けた小池知事は、都議選を前に舵を切った。

ただ、豊洲に移転し、築地を再開発して市場機能を残すという基本方針は、説明が不十分だった。財源をどう確保するのか、採算が取れるのかが不明確で、「選挙目当てだ」とも指摘される。

小池知事は何を語り、都民、そして各党からどう評価されたのか。振り返る。

6月20日に急遽、臨時記者会見を開いた小池知事は、わずか30分間ほどで会見を打ち切った。報道陣で質問ができた記者は3人で、質疑の時間は約5分だった。

毎日新聞によると、都幹部が基本方針の内容を知らされたのは、約1時間前だったという。

小池知事は「豊洲、築地を両立させることが最も賢い使い道ではないか」と述べ、淡々と基本方針を説明した。

1.小池知事はどう説明した?

内容はこうだ。築地市場を豊洲市場に移転し、中央卸売市場としての機能を移す。そして、5年をめどに築地を食文化や観光の拠点となる「食のテーマパーク」として再開発する。競りなどの市場機能を築地にも確保し、「築地で営業したい」と希望する業者が戻れるようにする。

築地か豊洲のどちらかに決まる。多くの人がそう考えていたはずだ。斜め上をいく基本方針を掲げた小池知事は、「築地は宝だ」と強調した。

「長年培ったブランド力、そして地域との調和を生かし、改めて活用することが大切な宝を生かす方法ではないでしょうか」

築地を再開発する前には、土地を活用するとした。2020年の東京五輪・パラリンピックに間に合うよう、晴海地区に建設する選手村と競技会場を結ぶ「環状2号線」を開通させ、駐車場を整備するという。

一方、豊洲市場についての展望も語った。

「地下空間の追加対策など専門家会議から指摘のあったところの安全対策を講じた上で、生かすべきだ。冷凍、冷蔵、加工などの機能を一層強化して、ITを活用した総合物流拠点にする」

両市場をどう使い分けるのかは、「基本的な方針をもとに、早急に具体的な方策を詰めていくよう事務方に指示した」と述べるにとどめた。

具体的な説明がなかった話は、他にもある。豊洲への移転や再開発にかかる費用をどう賄い、築地も豊洲も残すことで採算が取れるのか、だ。

5884億円がかかった豊洲市場の整備費のうち、現在、約3600億円の借金が残っている。小池知事は、築地に市場機能を残した場合に借金をどう返済するのかなどは、都の職員に「精査させている」とした。

そして、豊洲で年間92億円出ると試算される赤字に触れ、両市場を併存する価値を次のように述べた。

「単に移るということになると赤字が継続する。それを打破するためにも築地の再整備と豊洲をうまく活用していくことで、ダブルのプラスに持っていきたい」

都の市場問題プロジェクトチームは、豊洲を開場した場合、今後6000 億円を超える維持管理費などがかかると試算しており、税金の投入も必要としてきた。

莫大な費用を賄うために、築地の跡地の売却も検討されてきたが、小池知事はそれを選ばなかった理由をこう説明した。

「築地を売却すれば、一時的にどっとお金が入ってくる。だが、ハコモノを作って終わりを作って終わりで『あとは知らない』と将来世代へのつけを残していいものだろうか」

都民は、会見をどう思ったのか。朝日新聞が6月24、25両日に実施した世論調査によると、小池知事の基本方針に賛成52%、反対30%だった。 一方、計画の詳細を明らかにしなかった姿勢については「評価しない」が58%で、「評価する(26%)」を上回ったという。

2016年8月に移転延期を表明から約10カ月が経ち、移転問題は大きく動いたが、財源や採算について具体的に示さないままに、選挙戦に突入。各党が、都議選で移転問題について舌戦を繰り広げた。

移転問題に関する各党の姿勢ははっきりしている。自民・公明は移転に賛成、民進は条件付きで賛成、共産党は反対している。都民ファーストは、小池知事の方針に賛成する。

小池知事は、6月23日の都議選告示日に渋谷区で街頭演説すると、次のように述べ、「豊洲ありき」で都議会を主導してきた自民党が問題視されるべきだとした。

「豊洲市場は6000億円の予算が執行されたのに、土壌対策はいまだ不十分。議会がチェックしてこなかったせいです」

対する自民党は「決めるのが遅すぎた」などと応戦。他の党からも小池知事に対する意見が出た。

菅義偉官房長官は6月25日、町田市内で「何回、会見を見ても分からなかった。一番ダメだと思ったことは、記者との質疑応答を5分で打ち切ったことだ」と会見時間に言及、築地を再開発するのには「税金が数千億円も必要になる」とした。

また、民進党の蓮舫代表は「小池さんは語っていないことがある。『築地も豊洲も』というが、いくらかかるのか。2つの市場の役割分担は何か」、共産党の志位和夫委員長は「小池氏は『築地ブランドを守る』と言ったが、2回も引っ越すなんて到底できない。豊洲移転と築地ブランドは両立しない」と主張した。

社民党の吉田忠智党首は、基本方針は選挙目当てだと聴衆に語りかけた

「小池知事は市場を豊洲に移し、築地も活用するという訳の分からない方針を示した。慌てて選挙を優先したからだ。これでは都民ファーストではなく選挙ファーストだ」

都議選の結果を受け、どう進むのか

先述の世論調査で、都議選で投票先を選ぶ際、移転問題を重視するかは「重視する」が30%、「重視しない」が63%との結果が出ている。都民の関心が薄まっていることが読み取れる。

築地と豊洲を併存する指針は、あくまで基本方針だとしており、選挙後に方向修正される可能性もある。

移転時期について、小池知事は基本方針を表明した会見で「市場関係者の方々と話を詰めなければいけない」としていたが、2018年5月を目指すとの考えを基本方針を表明した翌日の6月21日に明らかにしている。

都議選の結果を受け、移転問題はどう進むのか。「やっぱり選挙目当てだったのでは」と都民にみなされるのか。小池知事の舵取りに注目が集まる。


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バズフィード・ジャパン ニュース記者

Kensuke Seyaに連絡する メールアドレス:kensuke.seya@buzzfeed.com.

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