台湾東部・花蓮県で発生した地震で、ある日本人が2月9日、被災者や懸命な捜索活動を続ける消防隊員らのために、200食のラーメンを無料で振る舞った。
「地震の怖さをよく知っているから、できることを」と車に材料を積んで、現地に駆けつけ、その場で調理。できたての1杯で被災者らの心を温めた。
ラーメンを提供したのは、台南市に暮らす野崎孝男さん。
台南市の外交顧問で、ラーメン店「Mr.拉麺(ミスター・ラーメン)」を経営している日本人だ。
地震が起きたと知った野崎さんは、台湾人のスタッフと2人で麺やスープ、チャーシューなどの材料を積み込んで現地に向かった。
被害の大きい花蓮市内に着くと、その場でラーメンを作った。
被災地では、生死をわけるとされる「72時間の壁」が刻一刻と近づいていた。消防隊員や看護師ら医療スタッフなどの疲労はピークだった。
そんな彼らが行列を作り、笑みをこぼした。野崎さんは一人ひとりに「お疲れ様、頑張って」と声をかけて、ラーメンを手渡した。
野崎さんは台湾で暮らして約10年。2016年2月に台湾南部で起きた大規模な地震の被災者だ。
その経験から考えに変化があったと野崎さんは話す。
「3日間、倒れたビルの近くで私もお手伝いをしましたが、寒い中、台南市の皆さんらの頑張りに感動しました。だから、自分もできることをやろうとあの時からさらに思うようになったんです」
当時、台南市内のビルに住んでおり、立っていられないほど揺れた。地震の怖さは「よく知っている」。
「怖い思いをされたみなさんに温かいラーメンで少しでもリラックスしてもらえれば、と思ってラーメンを持ってきました。温かいものを食べると幸せな気持ちになれるので」
特注した麺を使った自慢の博多ラーメン。食べた男性は「温かくて美味しい。食べると元気になる。いいね!」と親指を立てた。
野崎さんは台湾の人たちに向け、こうメッセージを送った。
「私も個人の立場でできることを一生懸命やっています。地震は非常に悲しい出来事ですが、日本人、日本は台湾を応援していますので、ぜひ台湾の皆さん頑張ってください。台湾加油(ジャーヨ、中国語で頑張れ)」