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国と東電の説明は。数字で見る福島第一原発の「汚染水」と「処理水」の行方

福島第一原発から生まれている「処理水」の行方が注目されている。

2011年にあった東日本大震災により、東京電力福島第一原子力発電所で事故が起きた。

溶け落ちた核燃料を冷却するため、常に水をかける必要がある。ただし、それによって水は、高濃度の放射性物質を含む「汚染水」となる。

汚染水は、この瞬間も生まれ続けている。

いま、その汚染水に放射性物質の除去処理を施した後の「処理水」をどう処分するのかを巡り、国内外の注目が集まっている。

さまざまな議論が続いているが、日々流れるメディアの報道を追っても、十分に内容を理解することは難しい。そして、その基礎となるデータが、社会で共有されているとは言いがたい。

汚染水と処理水を巡る問題を考える上での一助となるべく、BuzzFeed Newsは今後、この問題を様々な角度から報じる。

その第一弾として、まず国と東京電力が汚染水と処理水について、どう説明しているのかを14の数字で紹介する。

(1)「汚染水」は3つの原子炉から常に発生

時事通信

東京電力福島第一原子力発電所3号機=2019年2月、福島県大熊町[代表撮影]

「汚染水」は、福島第一原発の3つの原子炉から常に発生している。

そもそも汚染水とは何か。汚染水が今も増え続ける基本的な構図はこうだ。

経済産業省によると、福島第一原発では、東日本大震災後に1〜3号機の原子炉内の核燃料が溶け落ちた。水素爆発も起き、大量の放射性物質が放出された。

原子炉内には、「燃料デブリ」と呼ばれる、溶けて固まった燃料が残っている。

この燃料デブリは、冷却状態を維持しなくてはならず、絶えず水をかける必要がある。

ただし、これによって核燃料と水が混ざって、高濃度のセシウムやストロンチウムなどの放射性物質を含んだ水ができる。これが「汚染水」だ。

また、汚染水がさらに発生する要因がある。水素爆発や地震などの影響で破損した原子炉建屋に、地下水が流れ込み、屋根からも雨水が入ってくる状態にあるのだ。

今後も、燃料デブリが原子炉内にあり続ける限り、汚染水は生まれ続けてしまうという。

(2)汚染水対策の3つの基本方針

時事通信

汚染水に浄化処理を施した処理水のタンク=2019年10月[代表撮影]

汚染水は、高濃度の放射性物質を含み、とても危険だ。だから、国や東京電力は、「3つの基本方針」を作り、対策を講じている。

基本方針は2013年、国の対策本部が決定した。次の3つからなる。

(1)汚染水を外へ漏らさないこと

(2)水を建屋内の汚染源に近づけないことで新たな汚染水の発生量をできるだけ抑えること

(3)発生した汚染水の放射性物質を取り除いてリスクを下げること

このうちの(3)は、浄化設備を使っておこなっている。その浄化後の水が、いわゆる「処理水」と呼ばれている。

(3)取り除けない1種類の放射性物質

時事通信

汚染水からストロンチウムなどの放射性物質を除去するALPS(アルプス)=2014年[代表撮影]

東京電力によると、浄化設備を使って汚染水から「処理水」にするプロセスはこうだ。

汚染水をまず「セシウム吸着装置」という設備に通す。

これによって、汚染水に含まれる放射性物質の大部分を占めるセシウムとストロンチウムを取り除く。

次に「淡水化装置」を使って塩分を分離。そして、最後に「多核種除去設備(ALPS)」と呼ばれる設備に汚染水を通し、最終的な処理水となる。

このALPSでは、62種類の放射性物質を取り除く能力を持つが、1種類だけ除去できない物質がある。

それが「トリチウム」という放射性物質だという。

この物質の安全性に対して懸念の声があり、処理後の水の処分方法がいま、国内だけでなく、世界からも注目されている。

(4)敷地に並ぶタンクは980基

時事通信

福島第一原発の敷地内に立ち並ぶタンク=2019年1月[代表撮影]

福島第一原発の敷地には、980基のタンクが並んでいる。

東京電力によれば、この数字は2019年10月24日現在のもので、そのほとんどが、ALPSを通した後の処理水が入ったタンクだ。

タンクは、より多くの量を貯められ、漏えいリスクが低い溶接型タンクを使用。継続的にタンクのパトロールや常に水位監視などをして、漏えいリスクに備えているという。

(5)タンクが満杯になるのは2022年

経済産業省 / Via enecho.meti.go.jp

このままだと、タンクが満杯になるのは、2022年とされている。

さまざまな対策によって、汚染水の発生量は、対策前だった2014年5月の1日あたり約540トン(経産省によると、単位は立方メートルでもほぼ同じ)から、1日あたり170トン(18年度)にまで減少した。

2020年には1日あたりの発生量を150トンまで低減することを目標としている。

とはいえ、汚染水が生まれ続ける限り処理水も増え続ける。タンクが満杯になれば、自ずと処理水は行き場を失うことになる。

しかし、まだ処理水の処分方法は決まっておらず、敷地内に貯蔵できるよう新たなタンクを設けるという措置をとっている。

現状の計画では、処理水を貯蔵するタンクを、2020年末までに約137万立方メートル分建設する。

2019年10月24日現在の処理水の貯蔵量は、約117万立方メートル。計画通りに進めば、2022年夏頃にタンクが満杯になる見込みだという。

一方、経産省によれば、タンクの置き場所をさらに増やす余地はないわけではない。

ただし、東京電力の広報担当者は「廃炉に向けて、燃料デブリの一時保管施設などを敷地内に建設する必要があるので、敷地内をタンクで埋め尽くすことはできない」と話す。安全上の観点から処理水を敷地外に運び出すことも容易ではないという。

(6)2種類の規制基準

経済産業省 / Via enecho.meti.go.jp

国は次の2種類の規制基準を設けている。

<1>タンクにおいて貯蔵する際の基準

<2>処分にあたって環境中へと放出する際の基準

ただ、タンクが満杯になるからといって、海や大気中に放出するなど単純に処分することはできない。

第一に汚染水に関する国の規制基準をクリアする必要があり、環境中に放出するとすれば、<2>の基準を満たさなければいけない。

(7)敷地境界で「年間1ミリシーベルト未満」に

経済産業省 / Via enecho.meti.go.jp

<1>の基準は、原発の敷地の境界における放射線量を「年間1ミリシーベルト未満」にするというものだ。原子力規制委員会が求めている。

これは、人間が宇宙や大地から常に浴びている「自然放射線」の放射線量を除いた数字だ。

ALPS導入前の2013年には、セシウムのみを取り除いた状態の高濃度汚染水をタンクに貯蔵していたため、敷地境界の放射線量は年間10ミリシーベルトほどあり、基準を大幅に超過していた。

同年からALPSが稼働したことで、2016年3月には<1>の基準を達成。つまり、タンクにおいて処理水を貯蔵する際の基準を満たした状態になったという。

(8)処理水の8割以上が基準超え

東京電力 / Via tepco.co.jp

処理水の2次処理のイメージ

現在、ALPSによって汚染水の浄化処理後の処理水は、すべて<1>の基準を満たしている。

タンクに保管し続けるならばそれでも良い。だが、最終的に処分するにあたって環境中へと処理水を放出する場合には、<1>の基準よりも厳しい<2>の基準を満たさなければならない。

しかし、タンク内には<2>を満たしていない処理水が8割以上にのぼるという。

理由は、ALPSには<2>の基準を満たす能力があるが、そのための処理には時間がかかるため、まずは<1>の基準を早期に達成することを優先したためだという。

さらに、ALPSの運用当初の不具合などもあり、大半の処理水がトリチウム以外の放射性物質を含むなど<2>の基準をクリアできていないという。

東京電力は環境へ放出する場合、処理水にもう一度浄化処理(2次処理)を行い、トリチウム以外の放射性物質の量を可能な限り減らし、すべての処理水で<2>の基準を満たす方針を示している。

(9)トリチウムの放射線は紙1枚で遮れる?

経済産業省 / Via enecho.meti.go.jp

トリチウムは、2次処理をしたからといって取り除けず、社会に懸念を与える大きな要因となっている。

では、この物質は何なのか。どれほど危険なのか。経産省は次のように説明する。

トリチウムは「水素の仲間(同位体)」であり、原子力施設からだけでなく、宇宙空間から地球へと降りそそぐ「宇宙線」と呼ばれる放射線と地球上の大気がまじわって、自然界でも常に生成されている。

そのトリチウムが酸素と結びつくことで、水とほぼ同じ性質の「トリチウム水」となり、私たちの身の回りに存在しているという。

トリチウム水は海や川、雨水、水道水、大気中の水蒸気に含まれ、人間は普段から自然と摂取している。

時事通信

処理水のタンク=2019年10月[代表撮影]

ただし、トリチウムが放出するベータ線は、紙1枚あればさえぎれるほどエネルギーが弱い。

だから、人が体外のトリチウムからベータ線を受けたとしても、皮膚で止まるため、「外部被ばく」はほとんど発生しないとという。

一方、放射性物質が人の体内に入ることで影響を受ける「内部被ばく」はどうか。

現在の研究では、トリチウムは、体内に入ったとしても、新陳代謝などで蓄積、濃縮することなく、水と同じように体外に排出されると見られていると、経産省は説明している。

(10)フランスでは1京ベクレル以上を放出

経済産業省 / Via meti.go.jp

福島第一原発に限らず、国内外にある原子力発電所や再処理施設でも核分裂などによってトリチウムが生まれ、フランスでは1京ベクレル以上のトリチウムが放出されている。

また、かつて世界各地で行われた核実験によって生まれたトリチウムも残っている。

そうして人工的に生まれた高濃度のトリチウムは、一定のリスクを持つ。

そこで、原子力施設で生まれたトリチウムは希釈すれば悪影響がないという考え方から、それぞれの国の規制基準に基づいて大量のトリチウムが海や大気に排出されている。

経産省の図によると、フランスのラ・アーグ再処理施設では2015年、計約1京4000兆ベクレルものトリチウムを海や大気中に処分した。韓国や中国、イギリスなど各国も放出している。

日本も同様だ。全国の原子力施設で発生したトリチウムを含む水を40年以上にわたって処分しているという。

経産省によれば、それでもトリチウムを放出した近郊の海水のトリチウム濃度は、WHO(世界保健機関)による「飲料水水質ガイドライン」の基準を大幅に下回っており、また、健康への影響は確認されていないという。

(11)現在の濃度は約100万ベクレル/リットル

時事通信

東京電力から、汚染水などについて説明を受ける経産省の小委員会のメンバー=2019年8月、福島県大熊町[代表撮影]

福島第一原発はというと、敷地内に貯蔵している処理水におけるトリチウム濃度は、1リットルあたり平均約100万ベクレルにのぼるという。

これは、国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告に基づいて定められた、先述の「<2>処分にあたって環境中へと放出する際の基準」を大きく超過している。

その基準である「告示濃度限度」は放射性物質の種類に応じてそれぞれ決まっている。

たとえば、放出する水中においては、海や川に混じる前の「放出口における濃度の水を、生まれてから70歳になるまで毎日約2リットル飲み続けた場合に、平均の線量率が1年あたり1ミリシーベルトに達する濃度」と定められている。

一方で、大気中においても同様で、「敷地境界における濃度の大気を、生まれてから70歳になるまで毎日吸い続けた場合に、平均の線量率が1年あたり1ミリシーベルトに達する濃度」と決まっている。

(12)水中の基準は6万ベクレル/リットル

その基準にもとづいて設けられたトリチウムの告示濃度限度は、水中においては1リットルあたり6万ベクレル。大気中においては、1リットルあたり5ベクレルとなっている。

ただし、告示濃度限度というのは、あくまで1種類の放射性物質が水中や大気中において含まれる場合において、放射性物質ごとに定められたものだ。

環境中に放出する場合、トリチウム以外の放射性物質も水中や大気中に含まれていることを前提にする必要があり、そのために「告示濃度比総和」という基準を満たさなければならない。

それは、処理水に含まれるそれぞれの放射性物質の濃度限度に対する比を足し合わせて「1」を下回る必要があるというものだ。

経産省は、これらについて「日本では、放射性物質に関する非常に厳しい規制基準が設けられている」としている。

(13)検討される5つの処分方法

経済産業省 / Via meti.go.jp

経産省は有識者による汚染水処理対策委員会「トリチウム水タスクフォース」を設置し、処理水の処分について技術的観点から議論。5つの処分方法を検討した。

それは「地層注入」「海洋放出」「水蒸気放出」「水素放出」「地下埋設」だった。

「海洋放出」のようにこれまで前例があるものもあれば、「地層注入」のように事例がなく、技術的な課題があるものもある。

(14)もう一つの選択肢

経済産業省 / Via pref.fukushima.lg.jp

もう一つ、処理水をタンク内で長期保管するという選択肢も残される。

ただし、タンクに貯蔵している間の自然災害や、タンクそのものの腐食や操作ミスによる漏えいのリスクを抱え続けることになる。

経産省には、社会学者やジャーナリストなどの有識者が入る「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会」も設けられた。

タスクフォースによる技術的評価を受け、処理水の処分方法について風評被害など社会的な観点を中心に議論。タンク内での長期保管についても検討中だ。

その小委員会は、処理水を処分するにしろ、長期保管するにしろ、風評被害のような社会的影響は「避けられない」と見ている。

そう念頭に置いたうえで、どの方法になったとしても、影響を最小限に抑える対応策の検討が必要だとし、話し合いがいまも慎重に続けられているという。

<この記事は、Yahoo!JAPANとの共同企画で制作し、Yahoo!ニュースには11月15日に配信しました。>