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伊藤詩織さんの弁護団が語った、杉田水脈議員と大澤昇平さんを提訴した理由

伊藤詩織さんが、杉田水脈衆院議員と、大澤昇平・元東京大大学院特任准教授を相手取って提訴。弁護団が語ったこととは。

ジャーナリストの伊藤詩織さんが8月20日、杉田水脈衆院議員(自民)と、大澤昇平・元東京大大学院特任准教授を相手取り、2件の訴訟を東京地裁に起こしたのを受け、伊藤さん側の記者会見が開かれた。

弁護団を務める3人の弁護士たちが出席し、会場に伊藤さんが姿を見せることはなかった。弁護団が語ったこととは。

伊藤さん側は、2017年の記者会見後、SNS上で事実に基づかない誹謗中傷の投稿などにより精神的苦痛を受けたとしている。誹謗中傷する投稿数は、Twitterだけでも約1万件に達しているという。

このTwitterに関連し、6月に提訴した相手は、漫画家のはすみとしこさんと男性2人だった。

はすみとしこさんは、伊藤さんを誹謗中傷する内容のイラストを投稿し、男性2人は、はすみとしこさんの投稿をリツイートして広めるなどしたという。3人には、損害賠償や投稿の削除などを求めている。

その3人に加え、今回、新たに杉田議員と大澤さんが提訴された。

なぜ2人だったのか

伊藤さん側の弁護団は、杉田議員が、伊藤さんを中傷する内容の数多くのツイートに「いいね」 を押し、これらの中傷に好感を示したことが、訴訟を起こした理由だと説明した。

一方、大澤さんは、はすみとしこさんら3人への提訴後、「伊藤詩織」という通名で外国籍の人物が破産したことを示す官報の公告を添えて、「伊藤詩織って偽名じゃねーか!」とツイートしたことを問題視した。

なぜ2人が対象となったのか。弁護団は「影響力を持っているため」と語った。

杉田議員は、2018年当時で約11万(2020年8月20日現在は約18万)のフォロワーを持ち、国会議員という立場を併せ持つ。

大澤さんもTwitterで約2万フォロワーを持っており、「影響力がある」と判断したという。

弁護団による問題点の指摘

では、2人の何を問題視しているのか。

杉田議員による「いいね」の行動について、弁護団は次のように表現した。

「伊藤さんに寄ってたかり、ものすごい数の人たちが中傷した。杉田さんはその投稿を『いいね』をしていった。集団的ないじめのような構造を呈しているのが問題だと考えている」

「Twitterの『いいね』をする行為が、名誉感情の侵害に当たるいう過去の請求は確認できませんでした。どんな投稿であっても『いいね』をしていいのかと問題提起し、裁判所から不法行為だと認められなければならない」

大澤さんについてはどうか。

伊藤さんが破産した事実はなく、「伊藤詩織」も本名だという。大澤さんのツイートは「社会的評価を著しく低下させることは明らか」で、事前に事実関係を調べ、それが真実だと信じるに足る相当の理由もない、と主張している。

そのうえで、その投稿は、伊藤さんがはすみとしこさんらを提訴したことを中傷するもので「いわば『三次被害』ともいうべき」だと語った。

「性犯罪被害や(はすみとしこさんによる)二次被害について声をあげた伊藤さんへの三次被害について、責任を追及する意義があると思います」

弁護団は、今回の裁判を通して、人を誹謗中傷する投稿に「いいね」すること、そして「三次被害」があっていいものなのかと問題提起し、裁判所に判断を求めたいという。

代理人の佃克彦弁護士は「表現の自由、言論の自由があり、何でも言っていいというわけじゃない」と指摘する。

さらに、同じく代理人の山口元一弁護士は、「利用者がSNSを使用するにあたって萎縮してしまう」との意見に対し、「人の目に触れる発信行為をしているので、当然の負担だ」と語った。

杉田議員の事務所と大澤さんは、BuzzFeed Newsの取材に「訴状が届いていないため、コメントは差し控えます」とそれぞれ話した。

大澤さんはその後、Twitter上で提訴の理由について「正直全く意味が分からない」とし、「日本から言論の自由が奪われる。俺は断固抗戦する」などと投稿した。

今回の提訴により、伊藤さんは、控訴審がある元TBS記者の山口敬之さんをはじめ6人を相手に裁判を継続することになる。