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どんな服や下着を着ていても性的同意にはならない。「#私がそれを着たいから」に込めた思い

ジャーナリストの伊藤詩織さんが、被害に遭ったという日に着ていた服を身にまとって語った。

氏名と顔を公表して性暴力の被害を訴えているジャーナリストの伊藤詩織さん。

彼女は9月11日夜、性暴力に抗議し、被害者の連帯を訴える「フラワーデモ」に参加し、初めてマイクを握った。

この日、被害に遭ったという日に着ていた服を身にまとい聴衆の前に立つと、メッセージを伝えた。

「どんな服や下着を着ていても、どんな状況に置かれても、同意がなければ同意ではありません」

デモは今年3月、性暴力事件の無罪判決が相次いで報道されたことを受けて始まった。

4月から6月の毎月11日に開かれ、4回目となった今回は雨天中止にする地域もあったが、全国17都市で同じ日に実施された。

このデモが呼びかけるのは「花」を持って集まること。

初開催の時から、「声をあげた性暴力被害者へ、声をあげられない被害者へ、そして私たちは性暴力を許さないという声をあげ続ける、そのために共にいる」という『#WithYou』 の思いを込めた花をそれぞれが身につけることだけを決め、集ったのだという。

この日の東京のデモでも、花を持った人や、花をモチーフにしたものを身につけた人が集まり、『#WithYou』や『#MeToo』のプラカードを掲げる人がいた。

そして、被害の当事者や家族に当事者がいる人らがマイクを持って、それぞれの思いの丈を述べた。

伊藤さんがデモに参加したのは2回目。スピーチをしたのは初めてだという。

白いカーディガン、黒いブラウス、黒いパンツ姿だった。靴だけは異なるが、被害を受けたという当日に着ていた服だったという。

マイクを握った伊藤さんは「今日、一番お話したいことがあって、それは性的同意についてです」と話を始めた。

「4年前に被害に遭ったときの服を着てきました。それからこの服を着るのに、すごく抵抗があって、着たことがなかったです」

「だけど、やっぱり『あなたの着ていたものが悪かったから』『挑発的だったから』『下着がこうだったんでしょ?』とそういった言葉が尽きなかった。それで、今日はみなさんの前に出て、私はこれを着ていましたと伝えたくて来ました」

なぜこの服を着ていたのか。当日の心境はこうだったという。

「これが当日、私が着ていたものです。何も考えないで着ていた服なんですけど。そのときの記憶って、本当にずっと残っていて、またこの服を着ることがあるとは思わなかったんですけど。やはり着ているもの、履いているものに対して、『だからいけない』というのは絶対にあってはいけないと思います」

「被害に遭うことなんて、全く予想せず、想像もできないことだと思います。誰も被害を予想して着ているわけではないので、どんな服を着ていても、下着であっても、絶対にそれが同意になるわけがないですよね」

「どんなに飲んでしまっても、どんな場所に行っても、どんな時間に歩いていても、それは性的同意とはみなされません」

アイルランドで2018年、少女をレイプしたとして罪に問われていた男性の裁判において、被害に遭った少女が着用していた下着が引き合いに出されことを話し、「どんな服、下着であっても絶対に、それが同意になるわけはないです」と訴えた。

そのうえで、日本の法律の問題点を指摘した。

「まだ日本の今の法律では、『何が同意か』の部分が抜けてしまっているがために、どれくらい暴行を受けたのか、どれくらい戦ったのかを証明できなければ、被害だと認めてもらうことができないことが多くあります」

「でも、そんなことを言ったら、この犯罪を許してしまっている。犯罪は起きてもしょうがないことだと社会に言われているような気がします」

また、スウェーデンでは、『#MeToo』を受け、相手から「Yes」などと明確に性交渉に同意した言葉や態度を証明できなければレイプにあたると法改正されたとし、「私たちにもそれが必要だと思います」と呼びかけた。

「今まで声をあげられなかった人がいるのは、何を着ていたの、どこにいたの、と繰り返し被害者に責任が向けられたり、自分で思ってしまうからだと思います」

「私も今日までこの服を着なかったのは、そういった自分に対する責める言葉がどこかにあったからだと思います」

「でも、どんな服を着ていても、どんな下着をつけていても、どんな状況に置かれても、同意がなければ同意ではない。その意識を一緒にシェアできればと思い、ここに立ちました」

どんな服装をしていようと性的合意にはならない。今日は被害等時に実際に着ていた服で性的同意についてお話させていただきました。 I spoke at #Flowedemo and wore the clothes that I was wearing when I was raped. #thisisnotconcent #私がそれを着たいから #フラワーデモ

伊藤さんはイベント後、自身のTwitterアカウントでハッシュタグ『#私がそれを着たいから』をつけて思いを投稿した。

前述のアイルランドの裁判では、被害に遭った少女が着用していた下着が引き合いに出されために抗議運動が広がった。

女性たちは怒り、Twitterで抗議を示すために、世界各国からハッシュタグ『#ThisIsNotConsent(これは同意ではない)』とともに下着の投稿が相次いだ。

伊藤さんはデモの前はBuzzFeed Newsのインタビューに応じ、日本では「『#私がそれを着たいから』で、被害者を含む人たちがどんな服を着たってそれが批判されたり、『落ち度』とされるものではない。自由に自分の着たい服を投稿してくれたら」と思いを語った。

#ThisIsNotConsent Just beacuse my panties are cute doesn't mean i'm saying yes #ThisIsNotConsent


伊藤さんは意識を失った状態で性行為を強要され、重大な肉体的・精神的苦痛を被ったとして、元TBS記者の山口敬之氏に対して民事裁判を起こしている。

一方の山口氏は反訴。そのため、裁判では山口氏による訴訟も併合して審理している。