なぜ北朝鮮のミサイルは"これまでにない脅威"で、迎撃しなかったのか 政府の説明は

    安倍晋三首相は北朝鮮のミサイルを「これまでにない深刻かつ重大な脅威」と発言した。

    「これまでにない深刻かつ重大な脅威」

    北朝鮮が8月29日午前5時58分ごろ、弾道ミサイル1発を平壌近郊の順安(スナン)地区から発射した。これについて、安倍晋三首相はこの日の会見で「これまでにない深刻かつ重大な脅威」と発言し、厳しく非難した。

    なぜ「これまでにない」と考えているのか。

    菅官房長官は、報道陣に記者会見で問われるとこう語った。

    「事前に通告もない。あってもいいというわけでもないけれど、そういう中で上空を通過したわけだから、そこは従来とは全く違う意味で極めて深刻度は高い。このように政府としては対応していきたいと思っております」

    菅官房長官は事前通告がなかったから「これまでにない」脅威だとしているが、北朝鮮のミサイルが、事前通告なく日本上空を通過したのは初めてではない。

    北朝鮮は1998年8月、事前通告なく人工衛星の打ち上げと称する長距離弾道ミサイル「テポドン1号」を発射。日本上空を越えて三陸沖の太平洋に落下した。事前通告がなかっただけではなく、初めて日本上空を通過したミサイルだった。

    小野寺五典防衛大臣は閣議後の会見でこの「テポドン1号」ついて触れて、次のように述べている

    「1998年の時には予告なしだったが、それ以降は予告が一応あった。予告なしにこのようなミサイルを発射することは大変危険なことであるし、断じて許してはいけない」

    今回、なぜ破壊措置を講じなかったのか。政府の説明は。

    今回のミサイルで、日本上空を通過したのは計5回となった。

    政府は、ミサイル発射を受けて全国瞬時警報システム(Jアラート)を12道県に配信。自衛隊による破壊措置は実行しなかった。

    破壊措置に至らなかった理由を問われた菅官房長官は、午前の記者会見で「我が国の安全安心、そうしたものを総合的に考えて判断をするということであります」と具体的な回答を避けた。

    一方で、小野寺防衛大臣は「飛来する恐れがないと判断したこと」がその理由だと語った。

    「防衛省と自衛隊としましては、北朝鮮が弾道ミサイルを発射した際には、自衛隊の各種レーダーにより発射を確認しておりましたが、我が国に向けて飛来する恐れがないと判断したことから、弾道ミサイル等破壊措置は実施しておりません。他方、艦艇および航空機による警戒監視活動は継続して実施中である」

    二段構えで構築される日本の弾道ミサイル防衛

    では、万が一の際の弾道ミサイル防衛(BMD)はどうなっているのか。

    まず、イージス艦に搭載される海上配備型迎撃ミサイル「SM3」が、大気圏外で弾道ミサイルを狙う。外れた場合は、抵高度で地上配備型迎撃ミサイル「PAC3」が地上から十数キロで破壊に挑むことになっている。

    現行の「SM3ブロック1A」の到達高度は約300キロ。「PAC3」とともに今回発射されたミサイルについて、推定される最高高度約550キロには届かない。

    防衛省は、北朝鮮が今回発射したミサイルをどう考えているのか。BuzzFeed Newsの取材に、担当者はこう話した。

    「ミサイルがPAC3などの射程範囲内なら迎撃は可能です。今回に関して言えば、迎撃できなかったではなく、迎撃しなかった、必要がなかったとしか言えません」

    防衛省は防衛態勢の強化を図る。高度1000キロ以上に達する「SM3ブロック2A」を米国と共同開発し、2021年度の配備を目指している

    BuzzFeed JapanNews