政治家の「記憶にない」発言は、帝国議会から当たり前? 決まり文句は通用しません

    当時の流行語になった元祖の発言は40年前

    築地市場の移転について問う東京都の石原慎太郎元知事からの回答は、「記憶にない」だった。小池百合子知事は静かに苛立った。

    時事通信

    石原元知事から、築地市場の豊洲への移転をめぐる経緯などを聞いた質問状に対する回答が10月14日、小池知事のもとに届いた。

    小池知事は、この日の定例会見でこう発表した。

    「具体的な回答はなかった。細かいことは事務方がやっていた、自分は聞いていない、記憶にない、分からない、覚えていないという回答だった」

    「一度は先方から、私に会いたいと申し出があったわけで」とし、石原元知事から依頼があったが、石原元知事が撤回し、質問状を送ってのやりとりになったことを改めて説明。”期待はずれ”の回答だったといい、鋭く言い放った。

    「やはり都合の悪いことをいま、むしろ伝えてもらわないと明確な答えにならない。作家生活、都知事を続けてこられた功績を無になさらないようにしていただきたい」

    高齢も理由に挙げていることにも触れ、「質問状によって思い出されたこともあるかと思いますので、聞かなければならないことをまたご依頼することになるかと思う」とした。

    「記憶にない」はいつから当たり前なのか。過去を振り返ってみたい。

    1.国内最古の政治家による「記憶にない」発言は、故・和田博雄元農林大臣?

    帝国議会時代の1946年9月の衆議院の委員会で、和田元農林大臣は「どういう言葉で正確に表現しましたか、一寸私記憶にないのであります」と述べた。

    議事録によると、「事業は強力な政府の政治力によってやる」と演説で語ったことがあったといい、言葉の意味を問われて答えていた。言葉の表現は難しい。

    2.「記憶にございません」を流行語にさせたのは、実業家の故・小佐野賢治氏。

    時事通信

    「昭和最大の政商」と呼ばれた小佐野氏。

    1976年、ロッキード事件に関与したとして、衆議院予算委員会で証人喚問を受けた際、こう連発した。

    「いや、全く私は記憶ありません」「全くいまのところ記憶がありません」「私も古い話ですから記憶がございません」

    「記憶にございません」が、当時の流行語になってしまった。

    3.法廷で裁判長に呆れられた元兵庫県議・野々村竜太郎氏。

    時事通信

    政務活動費約900万円を私的に使ったとして、記者会見でも法廷でも、世間の話題をさらった野々村氏。

    今年1月、神戸地裁であった初公判。被告人質問で「記憶にない」「覚えていません」と90回以上語った

    裁判長は、「思い出す時間を」と願った野々村氏に、「難しいことではない。記憶にあるかないかはすぐ答えられる」とツッコミをいれた。

    今年7月に懲役3年、執行猶予4年(求刑懲役3年)の判決が言い渡されている。

    4.放射能についての発言を指摘された丸川珠代五輪担当相も、記憶をたどった。

    Kim Kyung-hoon / Reuters

    丸川五輪担当相は、環境相時代の今年2月、衆議院の予算委員会で、松本市で講演した際に述べた発言について質問を浴びた。

    議事録によると、東京電力福島第一原発事故に関連して、追加被曝線量を年間1ミリシーベルトとする国の長期目標について、こう語ったそうだ。

    「『反放射能派』と言うと変ですが、どれだけ下げても心配だと言う人は世の中にいる。そういう人たちが騒いだ中で、何の科学的根拠もなく時の環境大臣が決めた」

    この発言について、尋ねられるとこう返した。

    「私の記憶によれば、私はこの言い回しはしていないという記憶なんです」

    その後、発言を認めて、撤回。「福島の皆様には誠に申し訳ない」と陳謝した。

    5.記憶に新しいのは、やっぱり舛添要一元都知事。

    Toru Hanai / Reuters

    漫画「クレヨンしんちゃん」や美術品を購入したり、家族と一緒に宿泊費したり…。政治資金の公私混同疑惑が取りざたされた舛添元都知事。

    今年6月の都議会総務委員会の集中審議で、正月に千葉県のホテルで家族と宿泊し、面談した出版会社社長との連絡手段を聞かれると、こう連発。

    「記憶が定かではございません」「全く記憶にございません」

    都政を混乱させたとして辞職。都政は、小池知事にバトンタッチされた。

    人間なら忘れることもあるが、あまりに度が過ぎると、世間からお叱りを受けそうだ。誰もが「功績を無になさらないように」。

    Kensuke Seya / BuzzFeed

    バズフィード・ジャパン ニュース記者

    Contact Kensuke Seya at kensuke.seya@buzzfeed.com.

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