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「精神に問題がある方はちょっと」採用を撤回、面接官の言動による苦しみ

優秀な人材で、企業としては採用した方がメリットが大きいとしても、採用担当者の言葉一つで、求職者側から離れてしまうこともあれば、自社のブランドを傷つける恐れもあります。

求職者を相手にした面接の際、その人がどんな人かを見定める質問によって、深く傷つける場合があります。

特に求職時にさまざまな困難を抱えているのが、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)の当事者たちです。

どんなに仕事の適性や職務能力があったとしても、採用担当者の言葉一つで、企業から離れようと決意し、悪いブランドイメージを抱く人もいます。

一部の企業で、どんなケースがあるのか紹介します。

まずLGBTとは何を意味するのか。一般的に、次のような人のことを言います。

レズビアン=こころの性が女性で、好きになる性が女性である人。女性同性愛者。

ゲイ=こころの性が男性で、好きになる性が男性である人。男性同性愛者。

バイセクシュアル=好きになる性が、男性と女性のどちらでもある人。両性愛者。

トランスジェンダー=広い意味で、出生時の性とは異なるこころの性、もしくは表現する性を持つ人。

仕事を探すときに困難をより感じやすいのは

日本のLGBTの割合は、人口の約8%(電通、博報堂、日本労働組合連行総連合会のそれぞれの調査より)で、約1000万人いるとされています。

つまり、家族や友人、知人、職場の同僚など、日頃から会う大切な人たちが、当事者ではないとは断言できません。

求職者だって同じで、人の言動や環境によって苦しんでいる当事者たちは多くいます。

企業にLGBT対応の助言などをしているNPO法人の虹色ダイバーシティによる2016年度の調査では、「からだの性」「こころの性」「ふるまう性」「好きになる性」の4つからなるセクシュアリティに関して、求職時に困難を感じる非当事者は約6%でした。

一方で、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアルは計44%、トランスジェンダーにいたっては70%にのぼったというのです。

では、当事者が求職時、どんな困難を感じた事例があるのでしょうか。LGBTダイバーシティ採用広報サイト「JobRainbow(ジョブレインボー)」による2018年の調査では、こんな声が報告されました。

「『そういう、精神に問題がある方はちょっと』と言われた」(20代/レズビアン)

「新卒の面接でカミングアウトした際に、『来なくていい』と言われた」(20代/ゲイ)

「身体の状態がどうなっているか等、細かく聞かれた」(20代/トランスジェンダー女性

「レディーススーツを着用しただけで不採用という扱いを受けた」(20代/トランスジェンダー女性

「インターン中にホモネタで笑っていた社員さんがいた。その後、その人から『ここの会社の人たちは理解ある人ばかりだよ』と言われた」(20代/バイセクシュアル)

これらを見ると、求職者がセクシュアリティを告げた結果、採用されなかった例もあるのがわかります。

採用の可否とは本来、何で決めるべきか

企業向けに『LGBTフレンドリー企業マニュアル』も作成し、各社への助言もしているジョブレインボーは、採用の可否とは本来、「求職者個人の仕事の適性や職務能力によって決めるべき」だと指摘します。

だからこそ、採用担当者は求職者のセクシュアリティを基本的に聞き出すべきではなく、仕事と関係ない部分で求職者が壁を感じるのは望ましくありません。一歩間違えれば、言動はセクシュアル・ハラスメントになりかねません。

そこで、ジョブレインボーは、相手や自社のブランドを傷つけないため、採用担当者は常に次の意識を持つべきだと訴えます。

・「この人はLGBT当事者かもしれない」と常に想定し、自分の差別的言動に注意すること

・職務で必要な能力だけを重視すること

・相手を「個人」として扱い、偏見やステレオタイプを押し付けないこと

・他の人に勝手に口外しないこと

人の見た目やふるまいだけでは、その人のことは何もわかりません。適性や能力はあっても、自分らしく働けるか不安を感じている求職者もいるかもしれません。そのうえで、どんな人に対しても、採用担当者からこんな言葉があればよいかもしれない、とアドバイスします。

「お仕事をする上で、何か心配な点はありますか?たとえば性別、セクシュアリティ、障害、持病などに関して心配な点があれば、あなたの話したい範囲で結構ですので、ぜひお話しください。この場で知り得たことは、私以外の者には共有しません」

もしカミングアウトされた場合には、「伝えてくださり、ありがとうございます」などと受け止める姿勢を示し、「打ち明けてくださったことで評価に影響することはない」と伝えることが重要だといいます。

「何かしてほしいことはありますか?」と相手の悩みや質問を尋ねるのも適切だそうです。

「不適切な発言=社内で常態化している証拠」

ジョブレインボーの社長で、ゲイであると公言している星賢人さんは、企業側が当事者たちに配慮すべき理由について、BuzzFeed Newsにこう話します。

「採用担当者の言動は、口コミだけでなく、ネットの口コミサイトやSNSなどですぐに外部に広がる社会になりました。LGBTの当事者間でも、差別的な言動をした社員がいる企業のリストが回っているほどです」

「それに、学生が受けた差別的な言動を聞き、企業に直接抗議したり、学生を紹介しないと告げたりする大学も増えてきています。社会の価値観は確実に変わってきました」

星さんは、「採用担当者が不適切な発言をした=社内で常態化している証拠」だと指摘。発言を聞いた非当事者でも、その企業への志望度を落とす現状があるといいます。

「誰しもがマイノリティになり得ます。採用担当者の言動や、社内の制度を見て『この企業は、マイノリティに対してこういう姿勢なんだ。心理的に受け付けられない』と考える非当事者も増えているんです。だからこそ、配慮することで、たとえ落ちた人でも、『あそこの会社を受けて良かった』と思ってもらい、その感想を広げてもらうべきだと思います」


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