フジテレビ「新報道2001」は10月9日の放送で、前の週に報じた「豊洲市場の柱が傾いている」という疑惑について、「誤解を招いた」と事実上の訂正をした。

問題の放送はどういう内容だったのか。
フジテレビは10月2日放送の「新報道2001」で、築地市場の豊洲移転を取り上げ、豊洲市場加工パッケージ棟の柱が傾いているのではないか、と指摘した。
根拠としたのは、東京都中央区の渡部恵子区議が提供した1枚の写真。ネット上では、この報道に対し、「柱の傾きはカメラの性質によるもの」だという指摘があった。
写真を撮る時にレンズを傾けると、周辺が歪んで見える効果があるからだ。
VTRでは、提供写真を使った。だが、柱が傾いていると強調するために、写真を回転させ、右側の柱が垂直、左側が大きく左に傾いているように見せているのではないか、との声も出た。
番組は、プロカメラマンや建築の専門家などの意見を紹介し、豊洲市場やその周辺の地盤沈下の影響による柱の傾きが疑われるとの方向で報じた。「柱の歪みはカメラレンズによるものだ」とする都の職員の話も取り上げたが、全体としては、柱が傾いていると印象づける内容で、そこに批判が集まった。
放送後、BuzzFeed Newsが都に問い合わせた。

BuzzFeed NewsがフジテレビにFAXで質問状を送ると、こう回答が。「東京都は否定しており、番組であらためて事実関係を検証したいと考えております」

報道を知った東京都議会の音喜多駿議員は、問題の柱を計測。「柱はまったく傾いておりませんでした」とツイートした。
朝イチで豊市新市場パッケージ棟の「疑惑の傾いた柱」を視察・計測してきました。当然のことながら、柱はまったく傾いておりませんでした。写真では傾いて見えるけど、撮り方でこうなるんですって。 これを騒ぎ立てた一部の議員・メディアには強… https://t.co/BsuP3zJeoc
「新報道2001」は10月9日の放送で、柱の傾き問題を改めて報じた。
番組では、都立広尾病院の移転問題や点滴への異物混入で入院患者2人が中毒死した横浜市の大口病院の事件を扱った。
大島由香里アナウンサーが「つづいては、豊洲問題について、番組からご報告です」と話すとコマーシャルを挟んだ。
その後、須田哲夫キャスターは、こう話した。
「先週、豊洲市場の加工パッケージ棟4階で、9月に撮影された写真を紹介し、カメラのレンズによる可能性もありますが、柱が傾いているように見えるとお伝えしました」
「東京都はですね、番組の取材に対し、傾いていない4階の柱の写真を示し、『10月2日、当該柱の現状を改めて確認したが、歪みや傾き、ひび割れなどの不具合は認められなかった』と回答しました」
そのうえで、構造設計一級建築士の高野一樹さんと筑波大の蔡東生准教授のコメントをそれぞれ紹介。
高野一樹さん「柱は床や梁が固定されているので、大きく傾くことは基本的にない。傾いているなら天井にもしわやひび割れが出る」
蔡東生准教授「スマートフォンなどのカメラは非常に広角にできている。この特性で傾きが出てしまった可能性が高い」
須田キャスターは「こうしたことから、この柱が傾いて見えるのは、撮影の影響とみられます」とした。
また、VTRでは、提供写真をそのまま使ったが、スタジオでは「右側の柱を垂直に合わせたため、左側の柱の傾きが結果として強調されることになった」と写真の回転も認めた。
「一連の報道により、誤解を招いたことを真摯に受け止めます」
こう述べたが、謝罪はなかった。「報告」は約1分半で終わった。
今回の放送で高野さんが指摘しているように「柱は床や梁が固定されているので、大きく傾くことは基本的にない。傾いているなら天井にもしわやひび割れが出る」。
なのになぜ、10月2日の放送は、傾いている可能性を強く示唆する内容になったのか。BuzzFeed Newsの取材に「検証する」と話していたが、現場取材や関係者への聞き取りなどは、放送にはなかった。