バーは「婚活スポット」ではない。婚活サイトに無断掲載されたオーナーは憤る。

    バーとはどういった場なのか。オーナーバーテンダーの女性に思いを聞いた。

    神奈川県内のバーが「男女が集う婚活スポット」と無断で紹介されていたとして、店を経営し、バーテンダーでもある女性が「冗談じゃないって内容。断固抗議だ」とTwitterで訴えた。

    情報が掲載されたのは、婚活情報サイトだった。BuzzFeed Newsが当該サイトに見解を問うと、記事から情報は削除され、謝罪した。

    バーとはどういった場なのか。オーナーバーテンダーの女性に思いを聞いた。

    バーは、神奈川県平塚市の「バースコッチキャット」。

    オーナーバーテンダーである高橋妙子さんが、婚活情報サイトでの無断掲載に気づいたのは、半月ほど前だった。店の名前をネットで検索したところ、たまたま記事にたどり着いたという。

    「男女が集う婚活スポット!」の見出しで、平塚市内の複数の店舗情報を載せた記事だった。その中で、こう記されていた。

    高級感溢れる店内で、ワンランク上の異性との出会いを期待しているなら"バースコッチキャット"というゴージャスなバーがオススメです!

    そして、店の特徴のほか、「出会い方アドバイス」まで記載があった。

    男性は、一人でお酒を嗜む女性に積極的に声をかけ、女性は、男性から声をかけやすいようにカウンター席の一番端に座って準備しておきましょう!

    週末の20時以降になると、仕事終わりの男女の出会いの場になるので、勇気を出して新しい出会いを探しに本格派のバーに足を運んでみましょう!

    オーナーバーテンダーの思い

    店舗情報だけでなく、高橋さんがカクテルをグラスに注ぐ姿を撮った写真も無断で使われていた。以前、正式に取材を受けた雑誌社が撮影したものだという。

    その雑誌社のライターやカメラマンのことを考えれば、より不快に感じた。そこで、Twitterで「勝手に婚活サイトに掲載された。冗談じゃない!!って内容。断固抗議だ。どうやって連絡取ればいいんだろ」と声をあげた。

    彼女は、「異性に出会うためのバーとしての紹介でしたので、とても驚き、不快でした」とBuzzFeed Newsに語る。

    これまでグルメサイトやブログなどに、店舗情報が無断で掲載されることはあった。「良いお店を紹介する」という目的を感じられたため、気にすることはなかったという。

    しかし、今回は違った。婚活を目的として店を利用してもらいたいとは考えていないからだ。

    「この件をFacebookで投稿したところ、遠く離れたバーテンダー仲間からも『自分の店も同じように掲載された』『他にも同じ被害に遭っているお店がたくさんあるようだ』とコメントをいただきました」

    「今の時代は、ネット上の口コミを元に、さも自分が来店して記事を書いているかのようなサイトがたくさんあります。知らないうちに、自分の店が思いもしない方向に紹介されてしまう怖さも感じております」

    「抗議しようにも、連絡先さえまともに載っていないサイトも多く、泣き寝入りするしかないこともあるのは、本当に腹立たしいです」

    無断掲載した婚活情報サイトの見解

    BuzzFeed Newsは、婚活情報サイト上にあるメールアドレス宛に取材を申し込んだ。すると、編集部の担当者から「無断転載の件大変申し訳御座いません」と返答があった。記事から店舗情報を削除したという。

    「『バー=出会いの場』と認識しており」、クラウドソーシングでライターに「『異性と出会えるバー』について記事を書いてほしい」と執筆を依頼。

    「『平塚にあるバー』で検索した時に、上位にあるバーを載せてしまいました」と高橋さんの店を紹介した経緯を説明した。

    店舗情報の無断掲載や、写真の無断転載については、「『他のサイトもやっている』といった認識でおり、曖昧に考えておりました。相手に迷惑になる行為をしてしまい、大変失礼致しました」と謝罪した。

    「この度は、ご迷惑をおかけしてしまい大変失礼致しました。今後は、相手に迷惑にならない記事を執筆していきます」

    バーは出会いの場ではない

    高橋さんは、お酒や空間を楽しみつつ、自然と他の利用客と出会うことは否定しない。

    「お酒を傾けながら、とりとめもない話でリラックスしていくうちに、カウンターで新たな仲間や友人が出来ることも、素敵なバーの魔法です」

    「お付き合いを始めたり、ご結婚されるお客様もいます。それは素敵な出会いで、素晴らしいことだと思っております」

    一方で、「ナンパするために、またナンパされるために訪れる場所ではない」と強調し、そうした思いを最優先にして利用するのは「無粋の極み」だと言う。

    「バーは恋人や結婚相手を探しに、目の色を変えて声をかけるような無粋な場ではございません。よく言われることですが、バーは口説きにくるところではなく、口説いた人を連れてくる場所です」

    バースコッチキャットは2010年に開業した。高橋さんは、自身の店に込める思いをこう語る。

    「お一人でも、一日の疲れを癒しに、自分の時間を楽しみに、また、素敵な仲間との語らいに、大人の社交場としてご利用いただきたいとの思いでオープンいたしました」

    「バーでお酒を嗜むことが、大人になった自分への素敵なご褒美、リラックス法だと思っていただき、大人の節度を持った楽しみ方をしていただけたらと思います。素敵に、上手にバーを使ってくださる方が増えてくだされば、嬉しいです」