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原爆の投下直後、政府はどう"対策"を発表したのか かつての読売と朝日の両紙を読む

「怖るに及ばず」「決して恐るべきものでない」。1945年8月の広島と長崎への原爆投下後、両紙はそう報じた。

1945年8月6日に広島市に、9日には長崎市に原子爆弾が落とされた。

原爆が投下された直後、政府はどのような”対策”を発表し、読売新聞(旧・読売報知)と朝日新聞はどう報じたのか。当時の東京版の紙面を読んだ。

廣島で焼爆(7日・朝日)

広島市に原爆が落とされた翌日、朝日新聞が「若干の損害を被った模様」と小さく伝えた。

六日五十分頃B29二機は廣島市に侵入、焼夷弾爆弾をもつて同市附近を攻撃、このため同市附近に若干の損害を蒙つた模様である

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翌日、両紙はその日のトップ記事として、「敵B29少數機の攻撃により相當の被害を生じたり」「新型爆彈を使用せるものの如きも詳細目下調査中なり」とする7日付の大本営発表を載せた。見出しは「B29新型爆彈を使用 廣島に少機 相當の被害(読売)」「廣島へ敵新型爆彈 B29少數機で来襲攻撃(朝日)」だった。

初めて落とされた見たこともない爆弾。その被害の全容はまだわかっていない。

読売は「落下傘で中空爆發 家屋倒潰と火災 正義は挫けず 見よ敵の虐」との見出しを掲げ、「未来永劫”人道の的”の烙印を押されたもので彼の仮面は完全に剥げ落ち日本は正義において既に勝つたといふべきである」とアメリカを批判しつつ国民を鼓舞。今からできる対策として、こう伝えた。

當局から對策の指示あるまでは従来の防空壕、横穴建設その他防空態勢の強化、疎開等を進めると共に少数機の来襲にも幾度の軽視を戒める必要がある

一方の朝日は「落下傘つき 空中で破裂 人道を無視する惨虐な新爆彈」の見出しで、「かくのごとき非人道なる残忍性を敢てした敵は最早再び正義人道を口にするを得ない筈である」と非難。続けてこう綴った。

対策に関しては早急に當局より指示されるはずであるが、それまでは従来の防空対策、すなはち都市の急速な疎開、また横穴防空壕の整備など諸般の防空対策を促進する要がある

今次の敵攻撃に見ても少數機の来襲といへどもこれを過度に侮ることは危険である

「我方の断乎たる報復を覚悟せねばなるまい」

両紙は9日、前日に内務省が発表した原爆に対する「防御方法」をそれぞれ以下の見出しで紹介。

「膚は絕對に露出せず 壕内待避が有効 高熱發す敵新型爆彈」(読売)

「火傷の惧れあり 必ず壕内待避 新型爆まづこの一手」(朝日)

「次の諸点に注意すれば被害を最小限度に食止め、かつ有效な措置であるから各人は実行しなければならぬ」などとして、5つの対策をそれぞれ文章を変えて載せた(下記は朝日のもの)。

  • 敵の一機に対しても油断は禁物、すなはち敵の大型機が近接した時は一機の場合といへども待避した方がよい
  • 待避は壕内待避が有效、すなはち屋外に漫然と出てゐることは禁物で、壕内待避でなければならぬ
  • 待避壕は掩蓋のあるものを選ぶこと、もし掩蓋のないところは毛布または布團類をかぶつて壕内に待避する必要がある
  • 壕外、屋外などにゐなければならぬ者は火傷をする危險があるから身体の露出部を少くするやうせねばならぬ、夏の服装は短衣軽装だが、新型爆彈に対しては手足などを露出しないやうにせねばならぬ
  • 倒壞家屋から火を発した例が多いから待避する時は台所その他の火の用心をすること 

また、読売は「一般の對策としては現地からの報告に基き次の如きものが有效と見られ」「被害を最小限に喰い止めることが可能となる」とした上で、必ず目と耳を覆うことなどと、独自の対策も伝えた。

さらに両紙は、アメリカへの敵意をむき出しにした一文を書いた。

敵はその人道を無視せる攻撃兵器の使用に對して當然わが報復を覺悟しなければならない(読売)

このやうな敵の非人道的な行為に対しては我方の断乎たる報復を覺悟せねばなるまい(朝日)

対策追加で「一層完璧である」

両紙は12日、陸海軍と防空総本部の専門家の広島への現地調査に基づき、対策が追加で発表されたとして掲載。これまで紹介した対策は「有效であるから」この対策を加えれば「一層完璧である」と、朝日は前日に特報として号外も出して伝えた。

  • 落下傘のやうなものが降下するから、これを目撃したら確実に待避すること
  • 鉄筋コンクリート造りの建物は安全度が高いから、これを有效に利用すること、しかし窓ガラスは破壞するから、これが飛散による被害を避くるやう心掛け、壁、柱型、窓下、腰壁を待避所として有效に利用すること
  • 破壊された建物から火を発することがあるから初期防火に注意すること
  • 傷害は爆風による傷と、火傷であるが、その内でも火傷が多いから火傷の手當を心得ておくこと、最も簡單な手當の方法はこの爆彈の方法は、この爆彈の火傷には油類を塗るか、塩水で湿布すればよい
  • 横穴式防空壕は堅固な待避壕と同様有效である
  • 白い下着の類は火傷を防ぐために有效である、待避壕の入口はなるべく塞ぐのがよろしい、蛸壺式防空壕には板一枚の蓋でもして置くと有效である

また、読売は11日に、朝日は12日に「長崎にも新型爆彈」と長崎市にも原爆が投下されたことを書いた。詳細は目下調査中である、と両紙とも載せたが、西部軍管区司令部の発表をそのまま書いた朝日は「被害は比較的僅少なる見込」と伝えた。

「決して恐るべきものでない」

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終戦の前日である14日、現時点でわかってきた原爆の実態について目撃情報や被害状況などから憶測を含めて報じ、読売は「怖るに及ばず」、朝日は「決して恐るべきものでない」と言い切った。

読売は、記事「怖るに及ばず”新型爆彈” 威力は八キロに及ぶ 閃光方向と反對の物蔭に待避せば火傷せず」を書いた。

「敵が誇大宣傳するが如き絕對的威力を持つものであるといふことは出来ぬと同時に狼狽することなく処置すれば被害を最小限度に止め得ることが出来る」

そして、「掩蓋壕なら大丈夫」「すばやく物かげに隠れること或ひは露出個所をおほふこと」などと対策を載せ、こう締めくくった。

要するに新型爆彈は相當の威力はゐるが對策の処置なしといふものではなく完全な防空服装と機敏な行動、余裕のある待避によつて十分防げるのである

朝日は記事「熱線には初期防火 頑丈な壕ならば眞下なら平氣」で、「一時噂されたごとき威力を持つたものではなく、防護さへしつかりやれば決して恐るべきものでないことがわかつて来た」とし、こう対策を書いている。

閃光を認めたら姿勢を出来るだけ低くして体の露出部を布、着物等で覆ふか、或ひは確実に壕に入ること、壕に入るひまがなかつた時は丈夫な家屋、柱等なんでもよいからそのかげに入つて遮蔽すること

ポツダム宣言の受諾、玉音放送

この日、日本政府はポツダム宣言の受諾した。

翌日、朝日は特報として号外を発行。「けふ正午に重大放送 國民必ず厳粛に聽取せよ」という見出しで、「この放送は眞に未曾有の重大放送であり一億國民は厳粛に必ず聽取せねばならない」と伝えた。

そして、終戦を伝える玉音放送が流れた。

終戦まで戦意を高揚し続けた両紙。軍部など外部からの圧力、自己規制、部数獲得競争…。さまざまな要因から「負け戦を勝ち戦のように報じた」ことに罪を感じ、戦後、多くの記者たちが会社を辞めた。反戦を訴える姿勢は、かつての反省から生まれた。

その年の末までに、広島に落とされたウラン型原爆「リトルボーイ」は約14万人、長崎に落とされたプルトニウム型原爆「ファットマン」は約7万4000人の尊い命を奪ったとされる。


今、政府が伝えている対策は

終戦から72年が経つ。北朝鮮は核・ミサイル開発を加速させており、政府は警戒を強めている。

政府は、北朝鮮が弾道ミサイルを日本に向けて発射した場合の対策も発表した。

内閣官房「国民保護ポータルサイト」が今年4月に弾道ミサイルの落下時における避難方法を公表している。

発射から「わずか10分」以内に落下する恐れがある弾道ミサイル。発射されると、「Jアラート」によって、サイレンやテレビ、メールなど通じて避難するよう周知される。

避難方法によると、メッセージが流れたら、直ちに頑丈な建物や地下に避難すること。ただし、建物が周りになければ物陰に身を隠すか、地面に伏せて頭を守る。屋内にいるならば窓から離れるか、窓のない部屋に移動するように、としている。

アメリカは8月9日、北朝鮮への先制軍事攻撃として、B1戦略爆撃機による弾道ミサイル発射基地などへの精密爆撃をする準備を整えたと明らかにした。

一方の北朝鮮は、4発の中距離弾道ミサイル「火星12」を同時に米領グアム島周辺に発射する計画を検討中だと表明。朝鮮中央通信が10日に報じた。

CNNによるアメリカ国民を対象にした世論調査によれば、北朝鮮の兵器開発を受けた軍事行動について支持する人は、反対を上回る50%だった。米朝間による戦争が始まれば、日本が巻き込まれる可能性は高い。

バズフィード・ジャパン ニュース記者

Kensuke Seyaに連絡する メールアドレス:kensuke.seya@buzzfeed.com.

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