Updated on 2019年12月20日. Posted on 2019年12月13日

    終わってみれば圧勝だった。イギリス総選挙、保守党の勝利がもたらすものは。

    「ポイント・オブ・ノーリターン」という言葉がある。船や飛行機が「ここを超えれば、引き返すことができない地点」のことだ。

    終わってみれば圧勝だった。

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    12月12日投開票のイギリス総選挙。BBCによるとボリス・ジョンソン首相率いる与党・保守党が過半数を獲得した

    出口調査によると、選挙前から50議席を積み増し、過半数(326)を大幅に上回る勢い。1987年のサッチャー政権以来の歴史的な勝利となりそうだ。

    保守党の圧勝が伝えられると、ジョンソン首相は今回の選挙を「歴史的」とし、「保守党政権は、国民の負託を得ることができた」と事実上の勝利宣言を発表した

    労働党は惨敗、コービン党首「次の選挙は党を率いない」

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    最大野党の労働党は歴史的な惨敗。現有議席から71議席を失い、191議席の見通し。コービン党首は敗北を認め、「次の総選挙では党を率いない」と表明した。

    労働党はブレグジットへの姿勢が玉虫色で、国民投票のやり直しを公約に掲げたこと、ジェレミー・コービン党首の社会主義的な政策などが、党内不一致を招き、有権者の支持も集められなかった一因とみられている。

    地盤であるイングランド北部などで、保守党に議席を奪われたことは、今回の選挙を象徴する出来事だった。

    648 results are now in. View them here: https://t.co/pHAmhckPls


    UK, Blyth Valley Constituency result CON-ECR GAIN FROM LAB-S&D CON-ECR: 42.7% (+5.4) LAB-S&D: 40.9% (-15.0) BREXIT-NI: 8.3% (+8.3) LDEM-RE: 5.3% (+0.7) GREENS-G/EFA: 2.8% (+0.6) Turnout: 61.8% (-3.0) #Election2020 #UKElection

    労働党の地盤であるイングランド北東部の旧炭田地域ブライスヴァレー選挙区。保守党が労働党を破った。

    野党内では選挙協力が進まず、これも保守党の躍進を招いた。自由民主党はジョー・スウィンソン党首が議席を失った。

    スコットランドは独立への動きに拍車か

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    SNPのニコラ・スタージョン党首

    一方で、ブレグジットに反対していたスコットランド国民党(スコットランド民族党、SNP)の躍進にも注目が集まる。出口調査では55議席を得る勢いだ。

    今後、スコットランドでは、独立を問う3度目の国民投票と独立後のEU加盟を目指す動きに拍車がかかりそうだ。

    動向次第では、イギリスの「連合王国」という国のかたち自体に変化をもたらすかもしれない。

    なぜ、保守党は大勝したのか。

    Twitter / Via Twitter: @BorisJohnson

    保守党の宣伝動画より。映画「ラブ・アクチュアリー」の名シーンのパロディを取り入れている。

    なぜ、保守党は大勝したのか。一言で言えば、国民はブレグジット(EU離脱)の行き詰まりに心底うんざりしていたからだ。

    すでにEU離脱を決めた国民投票から3年半が経過。政権と議会で離脱条件の調整が一向に進まず、袋小路にはまっていた。

    「ブレグジットを実現するために投票しよう」――。保守党は、ブレグジットをめぐる国民感情を匠に利用し、労働党の票田の切り崩しに成功したと言える。

    エコノミスト誌は、EU離脱強硬派のナイジェル・ファラージ氏が率いるブレグジット党と保守党が選挙区を調整したことも、保守党勝利の背景だと分析している。

    今回の選挙で大勝したことで、ジョンソン政権、そしてイギリスは1月31日に期限を迎えるEU離脱に突き進むことになる。

    だが、選挙ですべてが解決したわけではない。

    国民投票以来、ブレグジットに対する国民世論はいまだ二分され、イギリス領北アイルランドとEUに加盟するアイルランドの国境の扱いなど、離脱までの課題はなおも残る。

    EUにとっても大きな試練

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    イギリスのEU離脱が現実味を帯びることは、第二次世界大戦の反省から生まれ、国際協調を目指すEUにとっても大きな試練となる。

    そもそもイギリスという国は、戦後のヨーロッパ統合の動きには反発的だった。

    EUの前身であるESSC(欧州石炭鉄鋼共同体)、EEC(欧州経済共同体)、EURATOM(欧州原子力共同体)に反発したイギリスは、北欧諸国とともに1960年に欧州自由貿易連合を結成。フランス、ドイツ中心の西ヨーロッパ統合に対抗した。

    ところが輸入超過などで独自路線の経済が行き詰まると、イギリスはECへの参加を求め、1973年に加盟したという経緯がある。

    EU発足後、統一通貨の「ユーロ」が導入されてもイギリスは自国の通貨ポンドを維持し続けてきた。

    「ポイント・オブ・ノーリターン」という言葉がある。船や飛行機が「ここを超えれば、引き返すことができない地点」のことだ。

    今回の総選挙は、イギリスとEUにとって「ポイント・オブ・ノーリターン」となるのだろうか。


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