「(LGBTは)生産性がない」と表現した自民党の杉田水脈衆院議員を擁護する特集を掲載し、批判の声が高まっている雑誌「新潮45」。
そもそも、どんな雑誌なのでしょうか。その歴史を紐解いてみました。
「新潮45」の「45」の意味とは?
編集方針は?
編集方針について、新潮社公式サイトではこう説明しています。
《その時々の編集部の方針によってノンフィクションや事件への志向が強まったり、独自の言論に力点を置いたり、誌面は変わり続けてきました》
《しかし、一つだけ変わらない「芯」のようなものがこの雑誌にはあります。それは『人の生き死に』について考えるということです》
(新潮社サイト「新潮45とは」より)
中高年向けの雑誌という特徴から、高齢化社会を念頭に「死」の問題を考えるエッセイ集なども刊行しています。
宇野千代、森繁久彌、谷川俊太郎、石原慎太郎ら各界の著名人が死生観を綴った『死ぬための生き方』はベストセラーになりました。
執筆陣の幅広さも魅力でした。過去にはビートたけし(北野武)さんもエッセーを連載。これをまとめた単行本『だから私は嫌われる』も好評を博しました。
少年犯罪で実名・写真を掲載、批判も
一方で、物議を醸した報道もありました。
1998年、「新潮45」(3月号)は大阪・堺市の殺傷事件で逮捕された19歳(当時)の少年の実名と写真を掲載。少年法に抵触し、人権侵害にあたると大きな批判を受けました。
少年法61条では、本人を特定できる記事や写真を出版物に掲載することを禁じています。
当時の編集部は、実名報道に踏み切った理由について、「残虐非道の犯罪である」「あと半年で二十歳になるのに、匿名化されて事件の本質が隠されている」などと説明。少年法に問題点があると主張しました。
これに対し、少年の弁護団は抗議声明を発表。
「少年法に違反する重大な人権侵害と言わざるを得ない」「営利主義に基づくセンセーショナリズムへの迎合に過ぎず、報道の自由の範疇を逸脱した重大な違法行為」と断じました。
このときは他社雑誌の編集者も批判の論陣を張りました。
雑誌「論座」の清水建宇編集長(当時)は、「少年法の罰則がないこといいことに自分は安全地帯に立ち、少年と家族らを犠牲にして法の不当を主張するのはひきょうだ」と、掲載に反対する意見を述べています(朝日新聞・1998年3月12日朝刊)。
発行部数は?
「新潮45」の発行部数も調べてみました。
日本出版協会が公開するデータベースでは2008年4月〜6月期以降の発行部数が公表されています。
この統計によると、「新潮45」の発行部数は2008年中は4万部を維持しましたが、出版不況も相まり以降は徐々に部数が低下。2012年1月〜3月には3万部を下回りました。
この間には朝日新聞社の「論座」や講談社の「月刊現代」、産経新聞社の「諸君!」など、いくつものライバル誌が休刊しています。
現編集長の若杉良作氏は2016年に就任
目指すのは「毒にも薬にもなる雑誌」
「新潮45」は編集方針について、公式サイトでこうも記しています。
《これからも「新潮45」は変わり続けるでしょう。時代に向き合いながら、新しいテーマに挑み、表現の幅も広がっていく。しかし、その「芯」の部分は変わりません》
《ネットの時代になっても、いやネットの時代だからこそ、「新潮45」は「人間」を書き続けていきます》
《ちょっと危険で、深くて、スリリング。
死角を突き、誰も言わないことを言い、人の生き死にを考える。一度読むとクセになるような「毒にも薬にもなる雑誌」
「新潮45」はそんな雑誌であり続けたいと思っています》