10月27日午前(現地時間)、ペンシルベニア州ピッツバーグのシナゴーグ(ユダヤ教の礼拝所)で銃乱射事件が発生した。
銃撃犯は、自動小銃と少なくとも3丁のけん銃で武装。銃を乱射し、シナゴーグを襲撃した。
事件当時、シナゴーグでは赤ちゃんの命名式が執り行われていた。駆けつけた警察官との銃撃戦の末、地元在住の白人男性(46)が拘束された。
少なくとも11人が死亡、6人が負傷した。
CBSニュースは、銃撃犯が犯行時に「ユダヤ人は全員死ね」と叫んでいたと伝えた。
犯人のものとされるSNSには、ユダヤ人を非難する言葉が複数回にわたって投稿されていた。
当局はユダヤ教徒を狙った「ヘイトクライム(宗教や人種差別などに基づく憎悪・偏見を動機とする犯罪)」として、29の罪状で訴追。FBIが捜査にあたっている。
市当局の担当者は「私が今まで見てきた中で、最悪の現場だった。まるで航空機の墜落現場のようだった」と語った。
ジェフ・セッションズ司法長官は「宗教に基づく憎悪と暴力は、私たちの社会には存在しない」「これらの犯罪は、非難されるべきであり、アメリカの価値観とはまるで一致しない」と声明を発表した。
FBIのジョーンズ特別捜査官も事件の凄惨さに言及。「最も恐ろしい犯罪現場」と述べた。
■民主党の要人に爆発物も 中間選挙前、アメリカの分断は…
11月6日に中間選挙を控える中、アメリカでは社会の分断を象徴するような事件が相次いでいる。
10月24日には、複数の民主党要人やCNNに宛てた爆発物のようなものが入った不審な小包が見つかったとFBIが発表した。
小包の中身はパイプ爆弾と見られ、バラク・オバマ前大統領とヒラリー・クリントン元国務長官の自宅など民主党の要人らに送りつけられた。
FBIは10月26日、フロリダ州在住の男(56)を逮捕したと発表。
投資家のジョージ・ソロス氏や俳優のロバート・デ・ニーロ氏など、民主党の大口献金者やトランプ政権に批判的な著名人に宛てたものも見つかり、当局は警戒を強めている。
トランプ氏に批判的な人々からは、こうした事件はトランプ大統領が敵対する人物やメディアへの憎悪を扇動してきた結果だと批判する声があがっている。
かたやトランプ大統領の支持層からは、爆弾騒動は民主党側の自作自演ではないかという憶測が流れるなど、アメリカの社会の分断はますます深まっているように映る。
■トランプ大統領、爆発物事件には恨み節
トランプ大統領は、こうした事件をどう捉えているのか。
まず、爆発物事件について。
トランプ大統領は10月26日、Twitterで「期日前投票と世論調査で共和党はいい感じなのに、“爆弾”騒動のせいで勢いを失った」と不満を綴った。
その上で「ニュースは政治の話を扱わず、とても残念だ」「共和党のみなさん、外に出て投票して!」と、中間選挙での共和党支持を呼びかけた。
■銃乱射事件では死刑復活に言及、銃規制の強化には否定的
一方、銃乱射事件については「ピッツバーグでの事態を注視している」「多くの死者が出たようだ」「神のご加護を」と、Twitterで哀悼の意を表明した。
さらに、「この邪悪な反ユダヤ主義の攻撃は、人類への暴行だ」と、銃撃事件をヘイトクライムだと認定。「憎しみを克服するために団結しなければならない」と呼びかけた。
トランプ大統領の長女イヴァンカ氏と夫のクシュナー氏はユダヤ教徒だ。
27日にイリノイ州で開かれた演説会でも、銃乱射事件に言及。「このような犯罪は極刑に値する」と述べ、死刑制度が撤廃された州で死刑を復活させるべきだと提起した。
ただ、11月の中間選挙を念頭において、銃規制の強化には従来通り慎重な姿勢を見せている。
トランプ大統領の支持層には、NRA(全米ライフル協会)など合衆国憲法が認める銃保有の権利を重んじる有権者が多いためだ。
トランプ大統領はワシントンからイリノイ州の演説会に向かう前、記者団から銃規制強化の必要性を問われると、こう語った。
「銃規制と今回の事件はほとんど関係ない」
「(武装した警備員がいたら)こんなにひどいことにはならなかった」