内閣府は3月7日、景気の状況を示す1月の「景気動向指数」について、3カ月連続で低下したと発表。基調判断を下方修正した。ところが、菅義偉・官房長官は「景気は緩やかに回復している」と強調している。なぜ食い違うのだろうか。
そもそも景気動向指数とは?
「景気動向指数」とは、景気変動で敏感に左右される生産、消費、雇用、金融の統計をもとに経済を予測する指数。「一致指数」では、鉱工業生産、有効求人倍率などの指標をもとに、景気の現状を示している。
内閣府は「景気動向指数」(2015年=100)の2019年1月速報値について、一致指数が97.9(前月比-2.7)になったと発表した。
これは3カ月連続の低下となり、2013年6月(97.0)以来の低水準。これをうけて内閣府は、景気動向指数の基調判断を「足踏みを示している」から「下方への局面変化」へと下方修正した。
「下方への局面変化」という言葉は、景気のピーク(山)が数ヶ月前にあった可能性が高いことを示している。
つまりは暫定的ながら、1月時点ですでに景気の後退局面に入っていた可能性を示唆している。
基調判断が「下方への局面変化」となるのは消費税の増税後に消費が冷え込んでいた2014年11月以来、4年4カ月ぶり。
景気動向指数と月例経済報告、なぜ食い違う?
これは政府の景気判断の見解を示す「月例経済報告の基調判断」と食い違う内容だ。
政府は1月、2月とも月例経済報告の基調判断で「緩やかに回復」という見解を示している。
さらに茂木敏充・経済再生相は1月時点で「(2012年12月に始まった)今の景気回復が戦後最長になったとみられる」と表明している。
景気動向指数は、指数の変化に応じて一定の条件を満たせば機械的に示される。そのため、過去にも政府の景気認識と一致しない場合があった。
菅官房長官、景気回復を強調
菅義偉官房長官は7日午後の記者会見で、1月の景気動向指数の発表をうけて「景気が後退局面に入っている可能性もある」と報道陣から問われると、以下のように述べた。
「景気動向指数は、各経済指標の結果をそのまま指数化するために、例えば中国の春節の時期が早いことから中国の輸出が手控えられるなど、本来であれば景気の基調とは分けて考えてもよい要因の影響もあると聞いています」
その上で菅官房長官は、「景気は緩やかに回復している」という従来の認識に変わりはないと強調した。
「いつから景気の回復、後退が始まったのか」は、経済学者などの有識者から構成される内閣府の景気動向指数研究会が、さまざまなデータや指標を精査した上で正式に判定する。確定まで1年程度を要するとされる。
茂木経済再生相は7日の記者会見で、「政府の景気判断は3月の月例経済報告で示したい。なお、過去には『下方への局面変化』とされても景気後退と判定されなかった例もある」と話した。