「家族はばらばらに…」旧統一教会を巡り、2世信者だった女性が語った「過去」とは?安倍元首相銃撃事件で

    旧統一教会を巡る被害救済を行ってきた弁護士連絡会が会見を開きました。会見には、2世信者だったという女性も取材に応じ、体験を話しました。

    奈良市の近鉄大和西大寺駅前で7月8日、参院選の応援演説をしていた安倍晋三元首相が銃撃され殺害された事件。

    逮捕された山上徹也容疑者(41)は、奈良県警の調べに「特定の団体に恨みがあり、安倍元首相がこれとつながりがあると思った」と供述。朝日新聞NHKなど複数のメディアが「母親が宗教団体に多額の献金をして破産した」と伝えている。

    事件をきっかけに「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)に社会の注目が集まっている。

    同連合は11日に会見し、山上容疑者の母親が教会員だったと認めたうえで、「家庭が破綻していたことは把握していた」「過去、献金でトラブルがあったが、2009年にコンプライアンスを強化し、末端まで献金に対する姿勢を変えた」と説明した。

    これに対し、多額の献金や高額な物品購入など、旧統一協会を巡る被害の救済活動などを行ってきた「全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)」が12日、都内で会見した。

    「山上容疑者の母は2002年に自己破産」

    全国弁連は、1987年に全国の弁護士ら約300人が賛同して結成。信者やその家族、企業や官公庁などから、年平均で1000件程度の問い合わせを受けているという。

    会見の冒頭で、声明を発表した。

    声明はまず、安倍氏への銃撃を「いかなる理由があろうと、決して許されない」と厳しく非難。

    その上で、

    ・山上容疑者の母親が統一教会に多額の献金をし、家庭を崩壊させられたことへの恨みが事件の動機であるという報道が事実だとすれば、母親の常軌を逸する統一教会への献金をはじめとした活動のため、どんなに苦しんできたことか

    ・多くの元信者やその家族、2世信者の苦悩や葛藤に接してきた当会としては、かねてよりこのような実情について心から憂いてきた

    ・家庭を崩壊させる統一教会の活動について、行政も政権を担う党の政治家もこの30年以上、何も手をうってこなかった。今回の行為は決して許されないことを重ねて強調したうえで、こうした問題に対し社会としてどう取り組むべきかが、改めて今回問われていると考える

    とした。

    全国弁連の山口広弁護士は「山上容疑者の母親は2002年、奈良地裁で自己破産している」とした上で、こう述べた。

    「自己破産は献金によるものとしか考えられないが、統一教会は認めなかった。借金しても献金させられたという信者は、ほかにもいっぱいいる」

    紀藤正樹弁護士も「統一教会への献金から家族が崩壊し、怨恨につながった可能性がある」との見方を示した。

    元2世信者の女性が語ったこと

    この日の会見では、40歳代の2世信者という女性が、衝立の裏側で取材に応じた。女性は自らの体験として、次のように語った。


    母親が統一教会に導かれ(入信し)、家庭のことが全て統一教会に変わりました。子どもに教えを強要し始めました。

    私は夫婦関係が悪かった父と母の家庭環境で育ち、いつも父に泣かされている母を女性としてかわいそうだなと思って育ちました。そんな母が導かれた統一教会への教えを受け入れることは親孝行になると勘違いしました。

    いわゆる「ビデオセンター」に通って洗脳が始まり、21歳の時に合同結婚式を受けることになりました。

    教会からは「どんな国の人であっても断ってはいけない」「どんなに学歴がなくても断ってはいけない」「障害があったり、経済的に難しくても断ってはいけない」と言われ、神に誓わされました。

    相手は2歳下の韓国人で、家も職も親もなく、中学校中退という人でした。要するに、住む場所がなかったので統一教会に転がり込んできた人と、永遠の伴侶としてマッチングされました。

    断れなかったのは、祝福を受ける前に神に誓わされたからです。3年後に彼が日本に渡ってきて、一緒に生活をするようになりました。

    「サタンがついているから…」

    彼は気に入らないことがあると私を殴ってきたので、辛くて教会長などに相談しても「彼にサタンが取り付いているからだ」と言うだけでした。

    当時、統一教会では「避妊してはいけない」と言われていたので、自然と子どもができました。しかし、彼の暴力はおさまらなかった。

    離婚を禁止されていましたが、娘に暴力が波及すると思い母に相談しました。母は絶対に離婚はだめだと言いました。「家庭が壊れることはサタンが一番喜ぶことだから」という理由でした。

    しかし、彼が日本での永住権欲しさに統一教会を利用したということがわかり、離婚を申し出ました。

    離婚はできましたが、母はとても悲しみました。統一教会では「夫婦でなければ天国にいけない」といわれているからです。私も天国にいけないという思いを抱くようになりました。

    そんな時、韓国の教会の人から再祝福(再婚)を受けないかと言われました。

    韓国で再祝福を申請すると、140万ウォン(約14万円)かかりました。しかし、最初に日本で合同結婚式をした際は、140万円の献金を要求されました。

    「日本人は大金を払わされても感謝しろ」という教えがあるのです。

    娘を連れて再祝福を受けましたが、相手の韓国人にお金を使い込まれてしまい、自己破産させられました。

    私は10年間、韓国で暮らしましたが、教祖の死をきっかけに洗脳がとけて2013年に子どもを連れて日本に帰りました。


    「解決の方向に進んでほしい」

    女性は「協会側の会見での献金などの発言内容は、事実と異なる」としたうえで、最後に安倍元首相の銃撃事件に関してこう述べた。


    「犯人を擁護することは何一つない。ただ、人生を統一教会によって破綻させられた身としては、やったことは間違っていますが、それだけ統一教会は人生を破壊します。私は母とは縁を切り、姉妹はばらばらになりました」


    「今、統一教会に関わってきた人たち、2世はどんなに苦しい思いを持っているか理解できます。正しいように報道され、放置されてきた問題が少しでも解決に進んでほしい」

    旧統一協会長「2009年以降トラブルない」

    世界平和統一家庭連合の田中富広会長は11日の会見で、山上容疑者の母親について、「最近は1か月に1回の頻度で教会の行事に参加していた」と説明。

    「犯人の動機が解明されていない中で、様々な憶測が飛び交うということは、本人あるいは家族、親族の心情を考えれば、極力控えていただきたいという思いがある」とした。

    母親が多額の献金をしていた事実があるかどうかについては、「献金は本人の意思。ノルマという扱い方もしていない」と答え、具体的な献金額は明らかにしなかった。

    一方で、山上容疑者の母親が「破産されたことは聞いている」とし、「母親は1998年に入会したと思われるが、破産は2002年頃。献金をどのくらいしたかは二十数年前なのでたどりきれていない」と答えた。

    また、最近の母親の状況に関しては、「2009から17年頃まで連絡が取りきれていなかったが、2、3年前から改めて教会員と連絡を取るようになり、この半年くらいは月に1度のペースで教会の企画に参加していた」とした。

    信者が多額の献金を求められた問題については、「2009年に当時の会長が会見してコンプライアンスの徹底を図る声明を発表した。2009年以降、そのようなトラブルはありません」と述べた。