火を出さずに吸える「加熱式たばこ」。
この吸い殻を子どもが誤飲してしまう事故が後をたたない。
テーブル上やごみ箱などに吸い殻が放置されているため、子どもが手に取ってしまうケースが確認されている。
最近では熱を誘導するための金属片が入っている商品もあり、取り扱いには注意が必要だ。
加熱式たばことは?
加熱式たばこを吸うには、たばこ葉が詰められた「スティック」などを本体キットに差し込み、加熱する必要がある。
国民生活センターによると、このスティックなどを子どもが誤飲する事故が2017〜22年度(10月末まで)の約6年間で112件発生した。
年齢別では「9〜11か月」が46件(41%)で最も多く、「1〜1歳2か月」が31件、「6〜8か月」が16件と続いた。
寝返りやハイハイ、つかまり立ちをする時期に多く発生しているといえる。
誤飲した時に加熱式たばこが置いてあった場所
では、子どもはどのような状況でスティックなどを誤飲してしまうのだろうか。
約6年間で発生した112件のうち、最も多かったのは「テーブル・机の上」で22件だった。
国民生活センターによると、1歳児は「高さ50センチの台の手前から40センチほど」は手が届くという。
そのほか、「ゴミ箱やゴミ袋の中にあった」(16件)、「カバンの中」(9件)、「床・畳に置いてあった」(6件)が多かった。
「飲み物の缶などに廃棄されていた吸い殻を飲み残しの飲料とともに誤飲した」というケースも4件あった。
スティックの中に入った金属片が……
最近では、熱の誘導体として「金属片」が入れ込まれたスティックも販売されている。
昨年6月には、10か月の男児がソファに置かれていた加熱式たばこからスティックを取り出して誤飲した。
緊急外来でレントゲンを撮ったところ、熱誘導体の金属片が胃のなかにあることがわかった。
金属片は翌朝に自然排出されたが、誤飲した際に口やのど、消化器官を傷つける可能性がある。
加熱式たばこの誤飲の特徴
また、消費者庁が2021年1月に行った調査では、子どもがたばこを「口に入れたことがある」「入れかけたことがある」と回答した人が500人中94人に上った。
吸い殻を自宅で捨てる場所(複数回答)として「灰皿」と回答した人は、紙たばこが249人だったのに対し、加熱式たばこは98人にとどまった。
一方、「リビングや自室のごみ箱」と加熱式たばこで回答した人は50人と、紙たばこより35人多かった。「台所のごみ箱」も26人多い47人だった。
つまり、加熱式たばこは火を使わないため、ごみ箱にそのまま吸い殻(スティック)を捨てる人が多い。
しかし、子どもにとっても手が届く場所にあるため、誤飲してしまう可能性があるということだ。
関係機関は誤飲を防ぐため、次のことに注意を呼びかけている。
- 家では禁煙を心がけ、子どもの目の前でたばこを吸わないようにする
- 子どもの手の届く場所や灰皿、ゴミ箱に放置しない
- 飲料の缶やペットボトルを灰皿代わりに使用しない
万が一誤飲した場合は……
112件のうち、60%にあたる68件が治療や処置を受けており、「要通院」は29件、「要入院」は8件だった。
日本中毒学会理事の杉田学氏(順天堂大学医学部附属練馬病院教授)は消費者庁に寄せたコメントで、たばこの誤飲で「ニコチンによる急性中毒」が起きる危険性があると警鐘を鳴らしている。
杉田氏のコメントによると、血中のニコチン濃度が高くなると、血圧低下や不整脈、けいれんなどの症状が誤飲から数時間以内に起こる可能性がある。
万が一、子どもが誤飲してしまった場合は、口の中に残っているものをぬぐい、窒息に注意しながらうがいをさせる。
子どもが吐きたそうにしていれば吐かせたほうがいいが、無理やり吐かせたり、水や牛乳は無理に飲ませなくてもいいとしている。
また、重篤な症状は稀だが、たばこが浸っていた液体を飲み込んだ場合は大量のニコチンが溶け込んでいることから、「少しの量でも中毒症状が容易にあらわれ大変危険」と注意を呼びかけている。
誤飲の疑いがあった場合は、すぐに子どもの医療電話相談(#8000)や救急安心センター事業(#7119)に連絡し、必要があれば直ちに医療機関を受診する必要があるという。