効率よく雪かきができるため、積雪地帯には欠かせない「除雪機」。
しかし、ひとたび事故が発生すると、命を落とす確率が非常に高いことがわかった。
製品評価技術基盤機構(NITE)によると、除雪機による死傷事故は2012〜21年度の10年間で計36件あったが、約7割の25件が死亡事故だったという。
なかには大人が使用した際に、子どもが巻き込まれたケースもあった。
なぜ死亡率が高いのか。そして、NITEが呼びかける「絶対にしてはいけない」使い方とは何か。
非常に高い確率で死亡・大けが
NITEによると、2012〜21年度に起きた除雪機による事故36件のうち、死亡は25件、重傷は10件、軽傷は1件だった。
36件中35件が死亡・重傷事故となっており、非常に高い確率で死亡、大けがにつながったことがわかる。
特に事故が多いのは大雪のシーズンで、この10年間では2020年度の12件(死亡7件、重傷5件)が最多だった。
被害者の年齢別では、60歳代以上が7割超の27件を占めた。
下敷き、巻き込まれで……
事故の原因では、「除雪機の下敷きになった」(16件)が最も多く、全てが死亡事故となった。
NITEの担当者によると、除雪機の重量は一般的に250キロ前後、大型で600キロ超という。
次に多かったのは「オーガに巻き込まれた」(7件)。
オーガは除雪機の回転部にあるらせん状の刃部分で、死亡が6件、重傷事故が1件だった。
「背後の壁と除雪機の間に挟まれた」も4件あり、3件が死亡事故だった。
子どもが巻き込まれた事例も
具体的には次のような事故が発生している。
広島県の80歳代男性が除雪機の下敷きになり、搬送先の病院で死亡。
後進中に転倒し、除雪機が男性に乗り上げて下敷きになった。
操作ハンドルから手を離した際に自動的に除雪機が停止する「デッドマンクラッチ機構」が無効化されていた。(2021年1月)
新潟県の男児(9)が除雪機の回転部(オーガ)に巻き込まれ、搬送先の病院で死亡。
使用者が除雪機のエンジンを切らずにその場を離れ、周囲で遊んでいた子どもに回転するオーガが接触したとみられる。(2021年1月)
山形県の70歳代男性が除雪機のオーガに巻き込まれた状態で発見され、搬送先の病院で死亡。
除雪機のエンジンをかけたまま回転するオーガに近づいたため、誤って下半身がオーガに巻き込まれたとみられる。
使用者の体が除雪機から離れるとコードが除雪機から外れてエンジンが停止する「緊急クリップ」を装着していなかった。 (2021年2月)
このほか、北海道の70歳代女性が物置で作動中の除雪機によりかかった状態で発見され、搬送先の病院で一酸化炭素中毒死したケースもあった。
なぜ安全機能を解除?
また、発生した36件の死傷事故のうち、15件が安全機能を無効化したり、使用していなかったりした。
特に、操作ハンドル(レバー)から手を離した際に自動的に除雪機が停止するデッドマンクラッチの使用は重要だ。
しかし、寒い環境で何時間もレバーを握り続けなければならないことから、この安全機能を解除する人がいるという。
NITEの担当者は「雪の中で事故が発生すると、救急車の到着が遅れたり、雪に埋もれて発見が遅れたりし、死亡につながる可能性が非常に高くなる」と指摘。
そして、次の5ポイントを遵守するように呼びかけた。
- 作業中は周囲に人を近づけない
- エンジンをかけたまま離れない
- 雪詰まりを取り除く際は手ではなく雪かき棒を使う
- 後進する際は後方の障害物や足元に気をつける
- デッドマンクラッチは解除しない