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足負傷のコロナ陽性者、救急搬送まで「35時間超」。救急車出動「95%」以上の都内、救える「命」のためにできること

足をけがしたコロナ陽性者の救急搬送に「35時間超」を要した事例も出てきました。都内では医療・救急車が逼迫しており、より一層の適正利用が求められています。

足のけがで入院が必要な新型コロナウイルス陽性者を救急搬送する際、受け入れ可能な病院を見つけるまでに35時間超を要したことが、東京消防庁への取材でわかった。

第7波の急激な感染拡大で、病院と救急車は逼迫した状態が続いており、同庁がTwitterで「救急車の出動率が『95%』以上」と投稿した回数は6月以降で28回。

コロナ患者だけでなく、けがや他の病気があったとしても救急搬送先が見つからない現状が浮き彫りになっている。

夏は熱中症のリスクもある。本当に医療が必要な人の「命を守る」ため、救急車を適正に利用することが求められるが、その判断の助けになる2つの手段を紹介する。

搬送されるまでに35時間47分

東京消防庁によると、70歳代の男性がこの夏、屋外で歩行中に転倒し、右足の太もも部分を負傷した。

診察した医療機関で入院することになったため、PCR検査を実施したところ、コロナ感染が判明。この医療機関はコロナ患者を取り扱っていなかったため、男性を転院させるために救急車を要請した。

救急隊員は右足のけがとコロナを両方診てくれる病院を探したが、1日たっても見つからず、結果的に別の病院に搬送できるまで35時間47分を要したという。

同庁管内で救急搬送先が見つからなかった最長時間は、昨年夏(第5波)の23時間35分だった。今回のケースでは、それよりもさらに半日かかったことになる。

コロナ禍前と比較して450%増

【救急出動増加中!】 救急車の出動率が97%を超えているため、現在非常編成した救急車31台を含む306台で運用していますが、通報を受けてから救急車の到着までに時間を要する場合があります。 https://t.co/gVQA55jkJH #東京消防庁

Twitter: @Tokyo_Fire_D

救急出動が増加している現状を訴える東京消防庁のツイート

救急車が現場到着後、医療機関への照会を4回以上行なっても、救急搬送先が30分以上見つからない場合を「救急搬送困難事案」という。

総務省消防庁の統計によると、全国の消防本部から抽出した搬送困難事案(8月1〜7日)は6589件。そのうち、東京消防庁が2900件と44%を占めている。

この2900件は前年同期比で89%増、コロナ禍前の2019年同期比では450%増となっている。

東京消防庁は、救急車の出動率が高い日はTwitterで適正利用を呼びかけている。

ここ最近で最も救急出動率が増加した日は7月24日だった。

【救急出動増加中!】
救急車の出動率が99%を超えているため、現在非常編成した救急車29台を含む300台で運用しています。 119番通報が多数入電しているため、繋がりにくい状況です。
通報を受けてから救急車の到着までに時間を要する場合があります。

このような状態が続くと、コロナ患者以外でも、けがや別の病気などで一刻を争う患者を救急搬送できないケースが出てくる。

本当に必要な人が医療が受けられるように、東京消防庁も救急車の適正利用を呼びかけており、その判断の参考になる2つの手段の利用を推奨している。

東京版救急受診ガイド

まずは、「東京版救急受診ガイド」だ。

急な病気やけがを患った際、病院へ行くべきなのか、救急車を呼ぶべきなのかを判断するためのもので、日本救急医学会監修のもと東京消防庁救急相談センター運営協議会が管理している。

実際の使い方は次の通り。

利用規約に同意すると、「共通の兆候」として次のような項目が表示される。

  1. いつもどおりにしゃべれない
  2. 息苦しい顔色や唇の色が悪い。または冷や汗をかいている
  3. しっかりと受け答えができない
  4. 1〜4に当てはまらない


例えば「4」を選ぶと、16歳以上の「大人」かどうか確認される。

大人を選択すると、「息が苦しい」「意識がおかしい」「頭痛」「しびれ」「尿が出にくい」「のどが痛い」「発熱」など約40の症状を選ぶページが表示される。

「発熱」を選ぶと、「吐き気はあるか」や「起き上がることができないか」などと、さらに詳しい項目の選択を求められる。

「どれも当てはまらない」にし、次の「立ちくらみが起きましたか?」で「はい」をクリックすると、相談結果として「今すぐに受診 / 内科・救急科」「1時間以内に病院へ行かれた方がよいかと思います」と出た。

症状や相談結果は緊急度に応じて色分けされており、赤は「救急車を呼ぶ」、黄色は「今すぐ医療機関を受診する」、緑は「今後に医療機関を受診する」となっている。

また、相談結果のページには、かかりつけの病院がない人向けに、病院を一覧できる情報サイトのリンクも添付されている。

発熱相談センター

次は、東京都が設置している「東京都発熱相談センター」だ。

ここでは、発熱の症状があってかかりつけ医のない人などの相談に応じている。

看護師や保健師が24時間体制で相談を受け付けており、症状を聞き取って、その内容に応じて身近な医療機関を案内してくれる。

センターは相談件数が増えていることを受け、8月からは「医療機関の案内」に特化した新たなダイヤルも開設。一般オペレーターが24時間対応している。

東京都発熱相談センター(看護師、保健師が対応)
03-6258-5780、03-5320-4592(24時間、土日・祝日を含む毎日)

東京都発熱相談センター 医療機関案内専用ダイヤル
03-6630-3710、03-6636-8900、03-6732-8864(24時間、土日・祝日を含む毎日)

このほか、救急車を呼ぶかどうか迷った際の連絡先として、「#7119」もあるが、現在は電話が殺到しており、つながりにくい状態が続いているという(東京消防庁関係者)。

ためらわずに救急車を呼ぶことも必要

一方、ためらわずに救急車を呼ぶケースは「総務省消防庁救急車利用マニュアル」に記載されてある。

大人の場合は、「顔半分が動きにくい」「手足が突然しびれる」「急な息切れ」「激しい腹痛が持続する」「支えなしで立てないくらい急にふらつく」などだ。

15歳以下の子どもは、「唇の色が紫」「呼吸が弱い」「手足が硬直している」「けいれんがある」「顔色が明らかに悪い」など。

医療は限りある資源。関係機関は、緊急度に応じて適切に救急車を利用するよう呼びかけている。

(サムネイル:Getty Images、東京消防庁のツイッターから)