紅白で得点カウントしている「野鳥研究部」って何者?

    調べてみました。

    年末ですね。

    年末といえば『NHK紅白歌合戦』

    紅白といえば最後に紅組と白組の点数を競います。

    そのときにいつも気になっていたことがありました。会場の得点を双眼鏡でカウントしている「野鳥研究部」です。

    いつもサラっとしか紹介されないので

    「野鳥研究部」って何!?

    と、ずっと疑問に思っていました。

    というわけで、調べに行ってきました。

    のどかな公園だな〜。





    ……あっ!野鳥研究部!

    めちゃめちゃ熱心に鳥を見ています。みなさん麻布大学の学生だそうです。

    「あーいたいたいた」

    視線の先には鳥。

    「めっちゃ見える!」

    写真を撮ったり、

    図鑑と照らし合わせたりと、熱心に鳥を観察しています。

    これが「鳥見」とよばれる定例活動だそうです。いわゆるバードウォッチングです。

    鳥見のあとは「鳥合わせ」

    鳥見が終わると、図鑑とスマホを取り出し、何かをはじめました。何しているんだろう……。

    「今日見た野鳥を確認してるんです。『鳥合わせ』といいます」

    スマホで何を見ているんですか? と聞いてみたところ、「メモしてるんです! 現代っ子なので!」とのこと。

    いまどきの大学生は紙のメモ帳なんて使わないらしいです。

    しばらくすると、みんなで円を作って報告会をはじめました。

    「オナガガモ V、コガモ V、カイツブリ V、アオサギ VC、カルガモVC……」

    VとかVCとか呪文のようなものを唱えはじめます。

    あとで聞いてみたところ、Vは「目視できた鳥」Cは「地鳴きが聞こえた鳥」の意味なのだそうです。ちなみにS「さえずり」というのもあって、鳥の鳴き声に「さえずり」と「地鳴き」があることをはじめて知りました。

    「……以上35種です。番外編は『はじめて自転車に乗れた男の子』です」

    鳥だけでなく、その日に見た変わったものも報告するみたいです。かわいい。

    どうして紅白へ?

    活動が終わったあと、どうして紅白に出演することになったのか聞いてみました。

    「……実は私たちもよくわかっていないんです」

    まさかの「わからない」との答えが……!

    「でも、昔に(麻布大学・野鳥研究部が)NHKさんの他の番組でもお世話になっていたことがきっかけみたいです」

    後日、NHKの広報に確認したところ、出演依頼の理由は「当時の制作過程の中で、総合的に判断し依頼したものです」としか答えられないとのことでした。

    ちなみに野鳥研究部は、1993〜2002年までと、2013年以降の集計をしています。2003年〜2012年は機械集計でした。

    機械集計からまた野鳥研究部に戻った理由について、学内では「北島三郎さんが紅白を引退されるのがきっかけだった」などの噂がたっていたこともあるようです。ただ、誰も正確な情報はわからないままでした。

    この経緯についても、NHKの回答としては「演出上の都合による変更です」のみとのこと。

    それにしても、紅白ってめちゃめちゃ緊張しそうですがどうなんでしょうか。

    「いやぁ?」

    「なんか気づいたら終わってるからね」

    会場のうちわを数える時間は、だいたい1分くらいだそうです。

    ところで、うちわを数えるのと鳥を見るのって似ているんでしょうか?

    「いや、鳥見るほうが大変です。(うちわは)動かないんで」

    「別次元だよね」

    ちなみに、麻布大学・野鳥研究部の実力は2018年の「学生バードソン」というバードウォッチングの大会で総合優勝するほど。

    「鳥の鳴き声を聞き分けることも大事なので、普段からCDを聴いて勉強しています」

    鳥が大好きなみなさん。去年の紅白の後は、海に初日の出を見に行き、そのまま鳥見をしたそうです。

    「(紅白用に)ちょうど双眼鏡をもっていたので、鳥初めしました」

    それぞれに「推し鳥」

    ちなみに、みなさんそれぞれの「推し鳥」がいるそうです。聞いてみたところ、さっきまでとは明らかに違うテンションで前のめり気味に答えてくれました。

    「私は『ハシビロガモ』です」(部長 村山果穂さん)

    「普通のカモよりくちばしが広くて鼻の穴が見えるんです。そこがなんかキモカワイイです」


    「私が好きなのは『ジョウビタキ』です」(副部長 四ツ釜桃子さん)

    「この背中で語るオラオラ系な感じが好きです。あと、『野鳥のくせになにそのオレンジ!?』みたいな」


    「私は『ハシボソガラス』です」(金木真央さん)

    「そこら辺にいるカラスには、ハシボソとハシブトの2種類がいるんです。ハシボソの方がちょっとくちばしが細くて、顔がしゅっとしててかわいいっていうのが好きなポイントです」


    「私は飼っていた『ウズラ』です」(村山カンナさん)

    「昔はいっぱいいたらしいんですけど、今はすごい数が少ないし、人がいないところにいるので、見るチャンスがあまりないんです。いつか見たいと思っている鳥です」


    「私は『モズ』です」(渡部綾夏さん)

    「顔がかわいいっていうのも理由で好きなんですけど、『はやにえ』っていうエサを刺したりするギャップが好きなんです」

    「はやにえ」とは、捕まえた獲物を木の枝などに刺すというモズの習性です。


    「僕は『ウソ』という鳥が好きです」(菱沼泰之さん)

    「フォルムがかわいいのと、鳴き声がかわいいんですよね。僕には『ウソゥ』って鳴いているように聞こえます」


    「僕は『サンコウチョウ』です」(佐久間幹大さん)

    「このアイリングの青がすごいきれいで。サンコチョウがいるかもしれないというところに何回か行ったんですけど、鳴き声だけでまだ一回も実物を見れたことがないんです。いつか絶対見ます!」

    「やっぱり、鳴き声しか聞こえない鳥を必死になって探して見つけたとき、鳥見って楽しいなって思います」

    「それはあるよね。あと、鳥で四季を感じられるよね。冬鳥を見て冬を感じたり」

    「あと、『飛ぶ』って人間には絶対にできないことだから、動きを見てるだけで楽しい」

    「鳥を知らなかったら、そこらへんにいる鳥は『鳥』っていうくくりだと思います。でも、種類がわかると、ふだん何気ない道を歩いているだけでもちょっと楽しくなれるんです」


    というわけで、野鳥研究部の正体は鳥が大好きすぎる学生さんたちでした。

    紅白の話を聞くつもりが、いつの間にか鳥について熱くプレゼンされていたので、帰りには「鳥って最高だな」という気持ちになりました。

    ちなみに、今年の紅白への出演はまだ未定とのことですが、もし出演していたらぜひ注目してみてください!