男同士、女同士で結婚できる国が、欧米を中心に増えている。日本でも「同性婚」を求め、全国の457人が日本弁護士連合会に人権救済を求めた。彼らはどんな人たちで、どんな理由で同性婚をしたいと求めているのか。
申立人たちは「同性婚をする権利」が認められないのは人権侵害だ、と主張。日弁連から国に対して、意見を出してほしいと要求している。
日弁連は4月25日、この申立を認めるかどうか判断するため、聞き取り調査をした。BuzzFeed Newsは、調査を受けた9人の申立人に話を聞いた。
「国、社会、家族からも、見放されたと感じてしまうときがある」

七崎良輔さん(28)は、男性パートナーと都内で2人暮らしをしている。付き合って2年。お互いに「夫夫(ふうふ)」だと思っている。ずっと互いの面倒をみることを約束し、公正証書までつくった。
だが、法的な結婚はできない。そのため周りからは、夫夫として扱ってもらえない。
夫夫の日常生活を綴るブログには、「結婚ごっこ乙」と、匿名コメントが書き込まれた。見付けたとき、パートナーにも言えず、こっそり泣いた。
「ごっこだなんて……」。言い返したかった。しかし、言い返すことができなかった。法的な意味での結婚をしていないのは事実だからだ。それもショックだった。
親族の法事。妹や従兄弟は呼ばれているのに、自分たちには声がかからない。親には、積極的に反対されはしないが、受け入れられてもいない。
秋には結婚式を開こうと思っている。1月に申し込んだのに、会場の寺からはまだOKがもらえない。
もし日本で、同性婚が認められていれば、状況は違ったかも知れない。
「愛する人と一緒に暮らせて、認めてくれる友達もたくさんいる。だから、贅沢を言ったらいけないのかもしれないけど、ときおり、家族からも国からも、社会からも見放されていると感じてしまう」
関係性を説明するのは「非常に難しく、しんどい」

東京・中野区在住のカップル小川葉子さん(52)と大江千束さん(55)。2人は付き合って23年。パートナーとして、とても強い結びつきがある。
そんな2人だが、全く面識のない人たちに、お互いの関係性を説明するのは「非常に難しく、しんどい」ことだと感じている。母の葬儀の場でも、「友達」ということにしておいた。もし同性婚という制度があれば、すんなり説明ができるのに……。小川さんはそう話す。
「母は亡くなる直前になって、やっと私たちの関係を認めてくれた。本当に嬉しかった。でも、もし同性婚が認められていれば、もっと早く認めてもらえたかもしれない」
2人にとって、結婚とはなんだろうか。
小川さん「結婚とは、権利と義務を両方とも引き受けること」
大江さん「結婚は、信頼や尊重に裏打ちされた、対等な関係。人生を共に生きる伴侶を得ること」
「同性婚が認められれば、自殺や親子断絶が減らせる」

東京都板橋区在住の佐藤郁夫さん(56) 。25才の時、男性とキスをしているところを妹に見つかり、家族に同性愛が「バレた」。母は「男が好きなのか。自分の育て方が悪かったのか」と自分を責めた。それがショックだった。
その時、家族には、たまたま好きになったのが男性だったと説明した。いまだったら、家族にもっとうまく話せただろうと思う。だけど、LGBTなんていう言葉もなかった当時は、そんな風にしか言えなかった。
LGBTをはじめとする性的少数者(セクシュアル・マイノリティ)は、自殺率が高いと言われている。
「結婚という形が認められれば、セクシュアル・マイノリティの自殺や、親子の断絶を減らせると思う」
佐藤さんにとって、結婚は「未来」。
「一時の関係じゃなくて、最後まで成し遂げるのが結婚だと思う。別れちゃう人もいるけど。僕らは普通に結婚したいんですよ。男女が、愛し合って一緒に暮らしていこうと結婚する。それと同じなんです」。
「ゲイだけど、相手が誰でもいいわけじゃない」

横浜市のゴードン・ヘイワードさん(36)と渡辺勇人さん(35)。2人は付き合って6年目。2014年1月3日に、米カリフォルニアで同性婚をした。どちらの職場も理解がある。周囲にもカミングアウトしていて、日常生活で困ることはない。
だが、渡辺さんの両親には、まだ関係を認めてもらえていない。
先日、ヘイワードの同僚がガンになった。「もし同じ事になったら、病室で看病させてもらえるだろうか。日本では家族でないから、法的には権利がないといって、追い出されたらどうしよう。僕は外国人だし、色々と心配」
2人にとって、結婚とは何か?
渡辺さんは「同性婚は、同性の友達とどう違うのか、と聞かれた」と、話す。
「結婚は、人生を共に歩むこと。それに加えて、みんなわざわざそんなこと口に出さないと思うけど、性的なこともある。相手に性的魅力を感じないなら、結婚はしないでしょう」
「僕らはゲイだけど、男だったら誰でもいいわけじゃない。単なる友達と結婚相手は全然違う。男女の場合と同じ」
「愛し合って、支え合って……。望むことは男女と同じ」

横浜市の鹿賀理恵子さんと椿久美さん。ともに40代の女性カップル。
鹿賀さんは以前、女性パートナーをガンで亡くした経験がある。オーストラリア人である女性パートナーは、体調不良で働けなくなり、就労ビザが切れて、闘病生活の途中で帰国を余儀なくされた。
鹿賀さんは看病のため、オーストラリアに出向いた。危篤状態。予断を許さない状況で旅行ビザの期限がきた。現地の移民局と交渉し、特別に延長を許してもらうことができた。
前回は、なんとか看取ることができたが、二度とそんな心配はしたくない。
日弁連の調査では、「どうして結婚したいのか、周りの理解があればいいのではないか」という質問があったという。
鹿賀さんは「じゃあ、あなたたちストレートの男女は、どうして結婚するのと、こっちが聞きたくなった。2人が愛し合って、支え合って、看取ったり、看取られたりしたい。財産も残せれば、残してあげたい。望むことは、男女の場合と何も変わらない」
椿さん「同性にも、男女と平等なスタートラインを用意してほしい」
「これ以上クローゼットの人たちを増やしたくない」

ケイさんは「クローゼット」。レズビアンであることを周囲には秘密にして、生活している。愛する相手のことを隠し続けたまま、40代になった。相手とは付き合って17年、同居して9年。まさに「伴侶」であり「家族」だという。
結婚しろというプレッシャーに晒された2人は、ともに同じ境遇であるゲイの男性と「友情結婚」をした。ケイさんは離婚したが、パートナーの女性はまだ男性と籍を入れたままだという。
法的関係においては、パートナー女性と17年はぐくんだ信頼関係・愛情よりも、友情結婚したゲイ男性との「婚姻関係」の方が強くなってしまう。ケイさんは、そのことに理不尽さを強く感じている。
だが、ケイさんが同性婚を求めるのは、「法的関係」だけが理由ではない。
「LGBTのほとんどはセクシュアリティを隠したまま生きています。これからの世代には、私のように差別や偏見を恐れ、マジョリティに合わせた窮屈な人生を歩んで欲しくない。同性婚の法制化によって、同性愛者への差別、偏見がなくなることを、心から望んでいます」