「ガン患者でも都知事はできる」鳥越俊太郎は健康不安説にこう答えた

    「偏見は捨ててください」

    元毎日新聞記者で、ニュースキャスターとして活躍している鳥越俊太郎さん(76)が7月12日、都内で会見し、都知事選への立候補を表明した。鳥越さんは2005年に大腸ガンになって以来、闘病生活を送ってきた。会見でも、その点に記者が切り込んだ。はたして、知事の激務に耐えられるのか。

    鳥越さんは、相手をじっと見つめて、「(みなさんが気にするのは)当然ですよね」と返した。

    そして現在の体調について、語り始めた。

    鳥越さんにとって、ガンとは。

    「僕は大腸ガンから始まって、肺、肝臓と、4回手術しています。大腸ガンはステージ4でした。4期のガンを経験しております」

    「ステージ」は、ガンの進行度合を表す指標で、ステージ4は病状がいちばん進んだ状態を意味する。

    真剣な表情で身を乗り出す鳥越さん。

    「しかし、もう大腸ガンから11年。最後の肝臓の手術から、もう7年経っています。ガンになる前より、現実のところ、元気なんです。健康なんです。今、人生の中で一番健康だと、自分では思っています」

    「もちろん、食事には気を使っておりますし、ジムに週3回行ってトレーニングも積んでおります。健康には非常に気をつけております」

    自分の体調のことから、ガン患者全体へ話題が広がる。そして、鳥越さんの声にだんだんと力がこもってくる。

    「だから、ガンの患者だから、ね。ダメだとか。ガンの患者だから何もできないとか。そういうね、偏見は捨ててください。ガンの患者だからこそできることもあるんです」

    「日本には、ガンの患者がたくさんいらっしゃいます。残念ながら、ガンの患者であることによって、仕事ができなくなっている方もいらっしゃいます」

    「ガンのサバイバーが、元気に働く社会を作りたい」

    「私はガンのサバイバーが働くための組織の代表をやっています。ガンになったけれども、幸い生き残った人たちが、元気に仕事をしていく。そういう社会を作りたいと心から思っています」

    「その一つの見本として、私はそれを実践して、みなさんに『ああ、ガンの患者でも都知事ができるんだな』と。そういう人がいてもいいじゃないですか」

    ここまで一気に話して、鳥越さんはジョークを混ぜる。

    「都知事というのは仮定の話ですよ。なれるかどうかわかりませんけれども。皆さんがうまいこと書いてくれれば、なれるかもしれない。まあ、それは冗談ですけれども……」

    そして、一息ついて、このようにまとめた。

    「そういうことですので、健康にはご心配はいらないということですね」

    「一番の強みは何ですか?」

    記者にそう問われた鳥越さん。

    「強み、う〜〜〜〜〜〜〜ん」

    そして、5秒ほど沈黙したのちに、こう切り出した。

    「強みねえ。まあ、楽天的なとこかな?」

    「ガンになっても何とかなるだろうと、いつも思ってた。ガンになっても別に、悲観……ショックを受けなかったですよ。何とかなるだろうと思って、切り抜けてきましたので」

    「ガンになることに比べたらですね、知事になって遭遇するであろう、さまざまな苦難や障害は、それほど大変なものじゃないんじゃないかな。ガンを切り抜けてきたということを考えればね」

    「常に前向きで楽天的である、ということが、まあ敢えて言えばね。強みかな、と」