2時間15分・舛添要一東京都知事の記者会見で、起きていたこと

    5月20日、会場には重たい空気が漂っていた。

    公私混同や政治資金流用の疑惑が次々と報じられている舛添要一都知事。5月20日午後の定例会見には、通常の4倍以上の報道陣が詰めかけた。知事は冒頭、疑惑について謝罪したが、記者からのさまざまな質問には、「まず第三者の目で、調査していただいてから」と2時間にわたって繰り返し、ほぼ中身のない不毛なやり取りが続いた。

    2時間15分に及んだ、会見を振り返る。

    170人の報道陣

    開始1時間前、会見場はすでに大勢の報道陣で賑わっていた。

    ふだん、舛添知事の定例会見に集まる記者は、せいぜい40人程度。しかし、東京都広報課によると、この日は記者がおよそ100人、ビデオ30人、スチールカメラマン40人がや出席した。前週よりも10人ほど多く、ここ2年では最多だろう、という。

    演台には乱立するマイク。記者席も、急きょ増設されたが全く足りず、立ち見が相次いだ。壁際にはビデオカメラが並び、空いたスペースを巨大レンズを抱えたカメラマンが埋めた。

    緊迫感が漂う会見場に、舛添知事が現れた。入り口で深々と礼。

    一斉にシャッターが切られ、フラッシュで知事の体が照らされた。

    知事はゆっくりと演壇に上がると、無言のまま、置いてあったペットボトルから、グラスへと水を注いでゆく。

    そして、一呼吸置いてから、ゆっくりと話し始めた。

    知事が「疑惑」について話し始める。

    「私の政治資金に関しまして、さまざまなご指摘を受け、都民の皆様はじめ、たくさんの方々にご心配とご迷惑をおかけしていますことを、心から深くお詫び申し上げたいと思います……」

    知事はうつむきがちにこう話し、約7秒間、深々と頭を下げた。

    知事は続ける。

    「(5月13日の定例記者会見の)私の説明に関しましては、『わかりにくい』とか『信じがたい』などの声がありましたことを、真摯に受け止めております」

    そして、疑惑への対応方針を、次のように説明した。

    「政治資金規正法に精通した弁護士などに、私の関係団体の政治資金の支出を見ていただくことにいたしました。現在複数の弁護士に打診中でございます。第三者の目からしっかり調査をしていただき、改めるべきところを改め、信頼回復ができますようにしっかりと対応してまいりたいと思います」

    知事からの発言はおよそ1分45秒。疑惑の内容には一切踏み込まなかった。

    そして、長く不毛な質問時間が始まった。

    質問タイム

    記者たちは、疑惑についての具体的な質問を、相次いで知事にぶつけた。

    「千葉県木更津のホテルで本当に会議は開かれたのか」「購入した絵画はどんな活動に使ったのか」……。

    舛添知事は、頷きながら記者の言葉を聞く。そして身を乗り出し、相手の目をしっかりと見ながら、時には身振りも交えて話す。

    しかし、具体的な疑惑の内容については、一切触れない。

    「まず第三者の厳しい目で調査をしていただいて……」

    「厳しい第三者の目で調べていただいたほうがいい……」

    「それも専門家が厳しい第三者の目で……」

    結局、どの質問にも同じ答えしか返していない。


    会見場の空気は、次第に重たくなっていく。

    「弁護士には話せるのに、都民の前では話せないのか」「知事自身の言葉で説明してほしい」と、問い詰めるような質問が記者たちからは出る。それでも舛添知事は、第三者の調査までは何も言えない、という立場を貫いた。

    2時間15分に及んだ会見。知事は最後に「どうも、長いことありがとうございました」と述べると、深々と一礼した。

    質問を長時間受けつけながら、具体的な回答は避け続ける会見。去り際の知事の顔には説明責任を果たした満足感はなく、疲労だけが色濃く浮かんでいるように見えた。