「小池劇場」はやくも第2幕。舞台は都議会へ

    地域政党の誕生?

    都知事選で圧勝した「小池劇場」第2幕は早くも始まっている。自民党に逆らって立候補した小池百合子さんにとって、当選は次なる戦いへの狼煙だ。選挙の勝因を振り返り、今後を展望する。

    逆境をバネに

    小池さんが圧勝したのは、逆境をバネにする戦略と、幸運のおかげだった。

    まず、自民党都連が小池さんを推薦せず、増田寛也さんを擁立したこと。皮肉なことに、これで小池さんは「無党派」というカードを手に入れた。無党派層からの支持は、都知事選で勝つための重要な要素だ。

    そこに、自民党都連の除名をチラつかせる「締め付け文書」が、傲慢だと反発を受けたこと。元都知事の猪瀬直樹さんによる「都議会のドン」内田茂・自民党都連幹事長への批判など、援護射撃もあった。

    小池陣営はこの流れに乗り、演説で声高に都連批判を繰り広げて、支持を伸ばした。

    一転して見せた連携姿勢

    ところが小池さんは、当選直後のインタビューで一転、「都議会との連携」を強調した。議席の半分近くを占める都議会自民党と全面対決しては、自らの政策を実現できないからだ。

    選挙中から、布石は打ってあった。小池さんは批判対象を、自民党の「都連」に絞った。選挙で優勢が伝えられる中、当選後を意識して敵をむやみに増やさなかった。

    自民党本部の批判はしなかった。東京新聞のアンケートで、小池さんは「安倍政権」を100点満点で90点と評価した。演説では、アベノミクスや女性活躍など、安部政権のキーワードも散りばめた。

    こうした姿勢もあり、朝日新聞の出口調査によると、自民党支持層でも増田さんより、小池さんに投票した人の方が多かった。

    自民党との駆け引きは?

    自民党の中にも動きがあった。小池さんの当選を受けて「除名論」だけでなく「連携論」も出てきた。

    時事通信によると、菅義偉官房長官は8月1日の記者会見で、小池さんの処分について、「政府が関わることではない。東京都連の問題だ」とする一方、「政府として、国民のために(小池氏との)連携は必要だ」と述べた。

    小池陣営も当選後、すでにいろいろな「メッセージ」を発している。

    選挙戦を通じてただ一人、自民党の現役国会議員として小池さんの傍に立ち続けた若狭勝・衆議院議員は、小池さんの当選後、BuzzFeed Newsを含む記者たちに囲まれ、「有権者の審判を踏まえると、除名は難しいのではないか」と話した。

    その一方で、自民党を離党する可能性にも言及。衆議院議員を辞め、小池さんの後釜として東京10区の補欠選挙に出ることも「選択肢の一つ」とした。

    さらに記者から、「都議会のドン」の対抗馬として、来年の都議選に出る可能性について問われると、苦笑いしながら「もし衆議院議員をやめて都議選に出たら、インパクトは大きいですよね……」「一つの選択肢としては考えたことがありますよ」と話した。

    若狭さんは加えて、「小池知事が議会運営を考えるにあたって、自分のスタンスを理解してくれる人が一人でも多くいればいいと思うはず。地域政党を考えていく可能性は高い」とも語った。

    自民党に残る。自民党を出る。自民党の対抗馬となる。地域政党を結成する。こうした選択肢をどれも否定せず、自民党や都連の出方を見ているのだ。

    小池さんの基盤は?

    こうした戦略をとるのは、そもそも、都議会に小池陣営の議員がほとんどいないからだ。小池支持を表明しているのは、若手都議3人の会派「かがやけTokyo」だけだ。

    選挙戦についてはそれで乗り切れた。手慣れた事務所スタッフ。入り口には「差し入れ一切お断り」と注意書きがあり、飲み物すら出していないが、集まった支持者たちは和やかに談笑していた。

    ボランティアも集まった。告示日、都内の掲示板にポスターが貼られるスピードは、増田候補や鳥越候補に見劣りしなかった。

    イメージカラーである緑色の何かを持って、街頭演説に来るようSNSで呼びかけた。徐々に、動員をかけている対抗馬に見劣りしない人数が集まるようになった。最終日には、池袋西口駅前が支援者で埋まった。

    朝日新聞の出口調査結果でも、無党派層の圧倒的な支持を得ていることがわかる。

    武器は民意だが

    だが、議会の同意を得て、政治を進めるとなると、話は変わってくる。

    都議会改革を掲げて当選した小池さんにとって、都議会との対決で都政を停滞させることもできないし、かといって安易な妥協をすることもできない。バランス良い舵取りが求められる。

    今回、選挙で圧勝したことで、「民意」を得た小池さんだが、それを背景に議会と対峙できるのは、小池さんへの強い支持が続いている間だけだ。

    移ろいやすい無党派層。期待と関心を持ってもらえる間に、味方議員をどれだけ増やすことができるのか。小池劇場、第二幕の勝負は、そこにかかっている。

    サムネイル写真:時事通信