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清原が受けた判決と、薬物依存との長い戦い 専門家はどう見たか

「絶対また使いたくなる」 その時にどうするのか?

覚せい剤取締法違反の罪に問われた清原和博被告人(48)に対し、東京地裁(吉戒純一裁判官)は5月30日、懲役2年6カ月、執行猶予4年の有罪判決を下した。弁護側が求めていた保護観察(国による指導・支援の制度)は付けられなかった。判決の理由と被告人の今後について、専門家に聞いた。

容疑は?

清原被告人は、次の3つの罪に問われていた。

  1. 知人から覚せい剤1.2グラムを8万円で譲り受けたこと(2015年9月)
  2. 覚せい剤を使ったこと(2016年2月)
  3. 自宅に覚せい剤0.2グラムを持っていたこと(2016年2月)

これらは、いずれも覚醒剤取締法違反で、1.は譲り受け、2.は使用、3.は所持にあたる。

争点は?

清原被告人は裁判冒頭で、これらの起訴事実を認めた。そのため、裁判の争点は、薬物から立ち直れる可能性がどれほどあるか、という点になった。

検察側は、「覚せい剤が生活の一部になっていた。再犯の可能性は高い」と主張した。

対する弁護側は「再犯の可能性はない」と反論。清原さんの友人で、元プロ野球選手・野球解説者の佐々木主浩さんが出廷し、「2回目はないと信じています」と述べた。

「深刻な依存」「強い常習性」

裁判官は、どう判断したのか。

判決は次のような点を挙げ、清原被告人の覚せい剤への依存が「顕著かつ深刻」で、「常習性も強い」とした。

  • 覚せい剤の量が「少量とは言えない」こと。
  • 自宅に複数の注射器があったこと。
  • 清原被告人の両腕に、数カ所の注射痕があったこと。
  • 2008年の引退後、覚せい剤に手を出していたこと。
  • 医療機関を受診したが、覚せい剤から離れられなかったこと。
  • 2014年以降、繰り返し使っていたこと。

「犯情は悪質」

清原被告人は裁判で、次のようなことが原因で覚せい剤を使うようになったと訴え、事情を酌んでもらいたいと主張していた。

  • 引退後、目標を失い、「心の隙間を埋めるため」に手を出した。
  • 仕事の減少や、妻子と別れた孤独を感じた時に、覚せい剤を使っていた。

しかし、裁判所は、覚せい剤は本人だけでなく社会全体にも害悪なので、こうした動機や経緯を酌むことはできず、「犯情は悪質」だと判断した。

「社会的制裁を受けている」

一方で、清原被告人に有利な事情として、判決は次のような点を指摘した。

  • 事実を素直に認めて、反省していること。
  • 父親や周囲の人たちが、治療に必要な環境整備などの支援をすると言っていること。
  • 友人(佐々木主浩さん)が出廷し、更生を助けると言っていること。
  • 前科がないこと。
  • 甲子園球場を沸かせ、プロ野球を代表する打者として活躍するなど、野球界で社会貢献をしてきたが、この件が報道されることで、すでに厳しい社会的制裁を制裁を受けていること。

そして、総合判断の結果、「社会内における自力更生の機会を与える」のがふさわしいと指摘。検察官の求刑そのままとなる、懲役2年6カ月、執行猶予4年の判決を下した。

専門家の意見は?

専門家はこの判決をどう見るのか? 覚せい剤や依存症の問題に詳しく、平林剛弁護士に聞いた。

まず、2年6カ月・執行猶予4年という量刑についてはどうだろうか?

「裁判所は、執行猶予付判決の場合、求刑通りの判決を言い渡す傾向があります。執行猶予の期間については3年とされるのが一般的かと思います」

今回は執行猶予4年と、厳しくなっている。どうしてだろうか。

「裁判所は、判決理由で、自宅の複数の注射器や、複数の腕の注射痕、さらに医療機関の受診を経てもやめられなかった、といった事情にふれつつ、使用量や使用頻度から常習性が強い、と指摘しています。今回4年となったのは、そのような常習性から再犯可能性が高い、と裁判所が判断したためだと考えます」

「判決が出るとほっとしてしまうのが人情」

平林弁護士は、判決文の、ある一文に注目する。それは、「治療に必要な環境を整えることを含めて更生を支援する意向を示している」という部分だ。

清原被告人は3月に保釈され、社会に出てきている。だが、判決文のこうした表現からは、まだ支援が始まっていないようなニュアンスも感じ取れると、平林弁護士は言う。

「本来、薬物依存の治療は、1日も早く始めた方がいい。もし環境整備がこれからだとすれば心配ですね。判決が出ると、どうしても、ほっとしてしまうのが人情なので……」

「絶対にまた使いたくなる」

こうした点をふまえると、清原被告人の今後をどう見るべきだろうか。

「判決理由では、犯行動機として、引退後に目標を失ったことや監督になれなかったこと、妻子との離別の孤独感があげられています。薬物をやめるには、こういったことを自分の中でどう消化するかが重要となってきます」

「しかし、こうした気持ちは、一朝一夕に消化できることではありません。再び薬物を使いたい、使いたいくらい辛い気持ちになる状況は絶対に来ます」

「気持ちを受け止めてくれる人が必要」

どうすれば、そういう気持ちに勝つことができるのだろうか。

「そういったときには、『薬物を使いたい』『そのくらい辛い』という気持ちを否定せずに、一緒に受け止めてくれる人が必要です」

「そうした話を聞いた周りの人間は、『裁判にまでなって、あんなに迷惑までかけて、まだ薬物を使いたいだなんて、全く反省してない!』といった、否定的な反応をすることが少なくありません」

「しかし、周りがそういった反応をするため、自分の辛い気持ちを吐き出せない状況が続くと、再使用のリスクは一気に高まります」

「保護観察」はどうなった?

この裁判については、弁護側が「保護観察」を付けて欲しいと要望を出した。

保護観察になると、保護観察官や保護司から、更生のための指導・支援を受けることになる。一方で、定期的な面会などの約束を守らなければ、執行猶予が取り消されることもあり、ある意味では被告人側に厳しい制度だが、それをあえて求めた。

しかし、弁護側の要望は認められなかった。なぜだろうか。

「判決要旨は、その点について何も述べていません。ただ、保護観察付執行猶予は,単純執行猶予に比べて『重い』判決となるため、いわゆる『相場』からして『重すぎる』との判断があったのではないかと思います」

「保護観察のように、本人と継続的な関わりをもてる制度は、特に覚せい剤などの依存症を原因とする犯罪について、極めて有益です。しかし、仮に全ての覚せい剤の自己使用について保護観察を付するとすると、保護司の数が足りないのではないかと思います。さらに、近年ではダルクなどのリハビリ施設の職員や各種福祉職の保護司も増えてきていますが、依存症について正しく関われる保護司は、まだ少ないのが現実です」

佐々木主浩さん「僕は信じます」

清原被告人は判決言い渡し後、傍聴席を振り返って、「このたびは申し訳ありませんでした」と、頭を下げた。

佐々木主浩さんは、マスコミ各社に対し、次のようなコメントを発表した。

清原の更生をサポートしていく責任を感じています。彼の更生のためには「実刑がいい」という意見があるのも知っていましたが、彼が法廷で述べた反省の弁は、僕は信じます。判決を真摯に受け止め、失敗を繰り返さないように努力してくれると思います。社会的な制裁も受け、判決も出たので、まず2人きりで会って、今後についてじっくり希望や意向などを聞き、本音で話をすることからサポートを始めたいと思っています。そして、心身ともに健康にならないといけない。失った信頼もコツコツと取り戻していくしかない。球界の先輩、後輩らで、できる限りサポートし、彼の心の支えになれればと思っています。


バズフィード・ジャパン ニュース記者

Kazuki Watanabeに連絡する メールアドレス:Kazuki.Watanabe@buzzfeed.com.

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