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うつから復帰訓練中「お前の行くところはない」と言われ……東久留米市職員の自死裁判・市が1500万支払いで和解

その言葉が「自死に向けてのアクセルになった」と主治医

自殺した東京都東久留米市の男性職員(当時43歳)の妻(40代)が、東久留米市に安全配慮義務違反があったとして5900万円の損害賠償を求めていた裁判。東京地裁立川支部で12月15日、和解が成立した。和解内容には、市が遺憾の意を表明し、遺族に1500万円を支払うことのほか、今後、市職員に適切なメンタルヘルス対策をすることなどが盛り込まれた。

遺族側が霞が関の司法クラブで会見した。代理人の山口広弁護士は「職員のメンタルヘルス対策が欠けていた東久留米市に、改善を約束させた点で意義がある」「今後、自治体職員の自殺が少しでも減ることを願う」と述べた。

復帰に向けて訓練中。回復の兆しが見えていた。

亡くなった男性は、東久留米市の学校給食職員だった。職場のストレスで約2年休職した後、2013年5月から復職訓練を受けていた。長く希死念慮(死にたいという考え)があったが、回復の兆しが見える、と主治医は判断していた。

その状況が一変したのが、2013年7月22日のことだった。

訴状などによると、男性はこの日、上司である学務課長に呼び出され、次のような言葉を投げかけられた。

「Y小学校から苦情が入ったから出勤停止です。もうY小には行かないでください。他の学校にはお前のことをよく思っていない人が大勢いるから8月は自宅待機です。9月も受け入れ先が見つからなかったら自宅待機です」「お前の行くところはない」

男性は、職場から帰って自殺の準備をした。だが、幸いなことに、この日は妻が食い止めた。

翌7月23日、男性は妻の勧めで、職場の保健師に相談した。保健師は学務課長の発言をパワハラだと判断し、職員課の職員に伝えた。また7月30日には、男性の主治医が急激な症状の悪化を心配し、市に電話を入れている。しかし、市側の対応は大きく変化しなかった。

男性は結局、8月4日に自殺した。

主治医の判断は?

代理人弁護士が主治医に対し、7月22日に上司から言われたことと自殺との関連を尋ねたところ、次のような答えが返ってきたという。

「大いに関連があると思います。少なくとも自死に向けてのアクセルのようなものだったと思われます」

保健師が「抗議の辞職」

原告側の訴えを大幅に認める和解が成立した背景には、主治医のこのような証言のほか、職を辞した保健師の訴えがあった。

裁判には、一通の辞職届が証拠として提出されていた。男性の相談を受けた保健師が、2013年8月31日付で書いたものだ。

そこには、「辞職理由」として、次のように書いてある。

「セクハラ・パワハラの防止は、メンタル相談に頼るものではなく、管理監督者をはじめ職員の意識改革が必要であると以前申し上げました。しかし、一向に改善される兆しも見えないまま、先般、自殺者を出してしまったことに強い憤りを感じます」

「また、メンタル相談は相談者への共感と受容が大前提にありとても重要なことです。そのことに理解が得られない環境の中では、今後、仕事を続けていくことはできません」

どんな問題点があったのか?

代理人弁護士は、市側の次のような問題点を指摘した。

(1)東久留米市では、職場復帰支援プログラムの内容が決まっておらず、明確な説明もなかったため、本人が復職への見通しを持てなかった。

(2)関係者たちが一堂に会した協議や、具体的な職場復帰プランがなく、フォローアップも適切ではなかった。

(3)管理職向けのメンタルヘルス研修がなかった。

(4)職場復帰への不安感や焦燥感に全く配慮せず、かえって復職できないのではと不安を生じさせるようなパワハラ発言があった。

(5)学務課長の発言を受けて自殺を準備したことなど、本人や妻、保健師、主治医が市側に伝えたにもかかわらず、適切な対処がなかった。

成立した和解で、市側は厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」を活用することや、職場復帰プランの作成、管理職向けの研修実施などを約束した。

「ちょっとホッとしています」

亡くなった男性の妻は記者会見で、涙ぐみ、言葉を詰まらせながら、次のように話した。

「つらい言葉をかけられて……、非常につらい時期もあったんですが、そんな時にこちらにいる先生方に相談させていただき、なんとかこのような、市役所が責任をわかってくれた、理解してくれたことに、今日ちょっと……ちょっとホッとしています。できればうちの主人が職場復帰訓練をしている間に、きちんとしたプログラムがなされていたらよかったなと思います。二度とこのようなことが起きないことを、心から願っています」

並木克巳・東久留米市長は、BuzzFeed Newsの取材に対し、職員課を通じて次のようにコメントした。

「このようなことを招いたことにつきまして、亡くなられたご本人はもとより、ご遺族及び関係者の皆様に深くお詫び申し上げます。今後このようなことが起こらないよう、職場復帰支援体制をさらに整備し、フォローアップの充実を図るとともに、管理職へのメンタルヘルス研修を定期的に実施するよう努めてまいりたいと存じます。大変申し訳ございませんでした」

バズフィード・ジャパン ニュース記者

Kazuki Watanabeに連絡する メールアドレス:Kazuki.Watanabe@buzzfeed.com.

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