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北朝鮮のミサイル 背景にある核戦略 国民はどう備える?

専門家に聞いた。

Kazuhiro Nogi / AFP=時事

北朝鮮が8月29日早朝、弾道ミサイルを発射し、襟裳岬の東、約1180キロの地点に落下した。今回のミサイル発射が持つ意味とは、どのようなものだったのか。北朝鮮のミサイル問題に詳しい、静岡県立大学グローバル地域センター特任助教・西恭之さんに解説してもらった。

「今回、北朝鮮が8月29日朝、平壌順安(ピョンヤン・スナン)空港から発射したミサイルは、中距離弾道ミサイル(IRBM)の『火星12』とみられています」

「ミサイルは、北海道上空の宇宙空間を飛行し、襟裳岬の東、約1180キロの太平洋に落下しました。防衛省は水平距離2700キロ、最高高度550キロ、飛行時間14分と推定しています。人工衛星打ち上げを目的としない北朝鮮のミサイルが、日本上空を飛行するのは初めてです」

北朝鮮の核戦略

西さんはこのように解説する。ただ、北朝鮮は、90年代からずっと、日本に届く長距離ミサイルを持っていた。

これまでとは、何かが異なるのだろうか。

「後ほど挙げるように、北朝鮮は日本へ届く弾道ミサイルを1990年代から保有しています。しかし、さらに射程の長いミサイルの開発によって、日本への脅威は増しています」

「北朝鮮は非核戦力で韓国とアメリカに劣り、敗戦した場合は体制が倒れる国です。そのため、なんらかの原因で戦争が始まった場合、または始まりそうだと北朝鮮が判断した場合、まず射程の短い核兵器を使用し、『停戦しなければ射程の長い核兵器も使用する』と警告することによって、アメリカに停戦を強制しようとする核戦略をとる可能性が高いのです」

「実を言えば、冷戦中のヨーロッパの西側陣営も、ソ連陣営の大軍の進攻を抑止するため、同じような核戦略をとっていました。北朝鮮が、さまざまな射程のミサイルをそろえるのは、日本の米軍基地や都市への攻撃も含めて、この核戦略の選択肢を増やしているということです」

北朝鮮の核戦略の背景には、このような考え方があるようだ。

朝日新聞によると、北朝鮮の狙いは米軍基地がある米グアム島や、日本の主要都市を攻撃できる十分な能力があることを誇示することだったと、韓国国家情報院は分析しているという。

北朝鮮はいま、どのようなミサイルを持っているのだろうか?

「射程の短い順に挙げます。(米)はアメリカ政府の呼び名で、(朝)は北朝鮮の呼び名です」

1. スカッドC(米)、火星6(朝):射程距離500キロ。韓国全域と日本の対馬へ届く。対馬へ発射された場合、4〜5.5分で到達する。

2. スカッドER=射程延長型(米)、火星7(朝):射程距離1000キロ。西日本、新潟県、東北地方の日本海側、北海道南部に届く。北朝鮮は2017年3月6日に北西部から4発を発射した際、ミサイルの射程を1000キロとする円が描かれた地図を金正日氏が見ている写真を公開し、長崎県の米海軍佐世保基地と山口県の米海兵隊岩国基地を射程に入れていることを宣伝した。佐世保や岩国へ800キロの距離から発射された場合は5.5〜7分、中部地方などへ1000キロの距離から発射された場合は6〜8分で到達する。

3. ノドン(米):940キロ(搭載量1トン)〜1200キロ(搭載量0.4トン)、日本の本土に届く。沖縄を攻撃するには搭載量をさらに減らす必要がある。スカッドCをもとに開発され、1993年に日本海へ試射された。関東地方へ1200キロの距離から発射された場合は7〜9分で到達する。

4. KN-11(米)、北極星1(朝):潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)。射程距離は1250キロあり、日本の本土に届く。より遠くの目標を攻撃するには、発見されにくい潜水艦への配備が必要。開発中に液体燃料ロケットを固体燃料ロケットに変更した。昨年8月24日に試射に成功した。

5. KN-15(米)、北極星2(朝):射程は1250キロ、日本の本土に届く。陸上で、履帯(キャタピラ)のある自走式発射機に配備されている。今年2月11日と5月21日に試射に成功した。

6. KN-10ムスダン(米)、火星10(朝):射程は3000キロ。北朝鮮からグアムを攻撃するには射程が300〜500キロ足りない。一般的な弾道でも、迎撃が難しい高高度(ロフテッド軌道)へ弾頭を打ち上げても、日本全国を攻撃できる。旧ソ連の液体燃料SLBM R-27をもとに開発された。沖縄へ1600キロの距離から一般的な弾道で発射された場合は8〜11分で到達する。ロフテッド軌道の場合、飛翔時間はさらに数分以上長くなる。昨年6月22日に日本海上空のロフテッド軌道で試射に成功した。

7. KN-17(米)、火星12(朝):射程は5000キロ、グアムにも届く。今年5月14日に日本海上空のロフテッド軌道で試射に成功し、8月29日朝、北海道上空の宇宙空間を飛行し、太平洋に落下した。スカッド系ともムスダンとも異なる液体燃料ロケット。

8. KN-14(米)、火星14(朝):北朝鮮が7月4日と7月28日に日本海上空のロフテッド軌道で試射された、大陸間弾道ミサイル(ICBM)。ペイロード(核弾頭などの搭載物)の重さが7月28日の試射と同じであれば、射程は1万900キロに及び、アメリカの首都ワシントンが入る。

「さらに、北朝鮮は8月23日、金正恩氏による国防科学院化学材料研究所の視察の写真を発表し、2段式SLBM「北極星3」3段式ICBM「火星13」の開発を進めていると宣伝しています」

日本国民はどうすれば?

東京市場の為替ボード
Kazuhiro Nogi / AFP=時事

東京市場の為替ボード

仮に、これらのミサイルが北朝鮮から日本に向けて発射されたとすると、4分〜11分程度で到達してしまうことになる。Jアラートが鳴ったとしても、避難のための時間はほとんどない。国民としては、どう行動すべきだろうか。

「その場合は、政府の指示に従い、ミサイル等の落下が警報されている場所では、内閣官房ウェブサイト『国民保護ポータルサイト』に掲示されている行動で身を守るほかありません」

「この行動は、イスラエル軍が湾岸戦争中のミサイル攻撃の教訓などをもとに、国民に周知している内容に、日本の現状でできるだけ近づけたものです」

数々の戦争・紛争を経て、現代戦を経験してきたイスラエルとは事情が違いそうだが……。

「イスラエルと日本の現状は、大きく2つの点で違います。まず、イスラエルではシェルターなどの避難施設が整備されています。さらに、弾道ミサイルやロケット弾の発射警報から着弾するまでの時間が、全国各地についてあらかじめ計算され、国民に周知されています」

状況の異なる日本において、被害を抑えるためにはどんなことが必要なのか。西さんは次のように話していた。

「弾道ミサイルが発射されてから、Jアラートの警報が出るまで1分ほどかかります。それから4〜5分でシェルターなどへの避難を終わらなければ、被害は避けられません」

「より被害を抑えるためには、避難訓練の定例化や、頑丈な建物や地下街・地下鉄駅などにシェルター機能を持たせることなどが必要になってくるでしょう」

バズフィード・ジャパン ニュース記者

Kazuki Watanabeに連絡する メールアドレス:Kazuki.Watanabe@buzzfeed.com.

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