「私はゲイです」文京区議がカミングアウト 死別したパートナーへの思い

    LGBT自治体議員連盟が発足

    性的指向と性自認に関連する人権擁護を目的とする「LGBT自治体議員連盟」が7月6日に発足した。世話人の当事者5人が都庁で記者会見した。文京区議の前田邦博さん(51歳)は初めて、公の場で「私はゲイです」とカミングアウトした。

    議連は、具体的には、同性パートナー制度や、LGBT当事者の自己肯定感を上げる施策、いじめ・自殺・貧困・感染症・依存症の予防などについて勉強会を開き、情報交換するという。

    トランス女性の世田谷区議・上川あやさん(49歳)は、国レベルでのLGBT関連立法が停滞している中、同性カップルのパートナーシップを公に認める制度が、渋谷区・世田谷区を皮切りに各地で始まった点に言及。「そうした実績を地方議員に共有し、社会を変えていくベースとしたい。地方から柔軟に変えられるものは変え、それを国レベルに育てていきたい」と話した。

    LGBT自治体議連には、当事者でなくても、趣旨に賛同する議員であれば参加できる。現職の議員は「正会員」、前・元職や候補予定者は「賛助会員」になる。ゲイの豊島区議・石川大我さんによると、北海道〜沖縄まで全国によびかけたところ、すでに78議員(元職2人含む)が賛同し、参加を表明した。より多くの参加者を呼びかけている。議連は、第一回の勉強会を7月27日〜28日、東京都豊島区で開く予定だ。

    初めて公にカミングアウトした前田さん。なぜ、このタイミングだったのか。

    前田さんは15年前、男性のパートナーと死別したときの体験から、語り始めた。

    「(パートナーが)救急車で病院に運ばれたとき、集中治療室の前で、生死もしらされずに待たされました。私は幸い、相手の両親と仲が良く、両親が『家族です』と言ってくれたので、面会謝絶にはなりませんでした。しかし、『単なる同居人』では面会できず、看取ることもできなかった」

    「また、葬儀でも、配偶者なら喪主になれるが、喪主になれませんでした。高齢の親戚が理解できないということで、私は親族席にもいられませんでした。遺品も好意で引き渡してもらえましたが、そうでなければ何も手にできなかった。賃貸住宅も、相手方の名義なら、追い出される可能性もありました」

    「私は個人的に、2人の関係性が認められるよう努力をしていました。しかし、いざという時に、普段の生活で関わっていない人たちからの横槍があれば、抵抗できません。それは、制度がないから。そして、社会からの認知がないからです」

    当然の権利とされているものが、LGBTには保障されていない——。それは強烈な体験だった。

    なぜ、いままで隠していたのか?

    前田さんは「いままで公表できなかったのは、恐かったからです」と率直に語った。実は議員になった後にも、議会事務局に嫌がらせの連絡があったり、信頼して話した人に、ゲイだと言いふらされたりした経験があるという。

    議員という周りから支えられなければならない立場。そこからのカミングアウトは、下手をすると議員の立場を失う危険性がある。

    しかし、いよいよ5期目50代となり、いま社会を変えなければという「焦り」を感じた。この立場の人間が社会に発信することが、社会の変化に繋がる、と前田さんは考えた。

    「私がカミングアウトすることで、LGBTも、それ以外のマイノリティも『悩んでます』『助けて』と声を出しやすい場や雰囲気を作っていきたい」

    目指すのは、雰囲気を変えるだけではない。

    「仕組みや制度をつくることで、違いを容認し、多様性が認められ、相互扶助ができる社会にしたい。大切な人と、共に暮らしていける社会にしたい」

    前田さんは自分自身について、「ゲイが結婚せず、ゲイとして自覚を持って生きるようになった、日本で最初の世代だ」と語る。

    前田さんは「LGBTは若い世代だけのことではなく、どの世代にも同じだけ存在しています。私と同世代の人たちも続いてほしい」と語っていた。