「メディアまで私物化されれば、民主主義は死ぬ」前川氏が語った「権力とメディア」

    日本記者クラブで開いた記者会見で……

    「この一件を通じて、全く別の問題として認識を新たにしたのが、国家権力とメディアの問題だ」——。

    前・文部科学事務次官の前川喜平さんは6月23日、日本記者クラブで開いた記者会見でこう切り出した。

    「ここにはメディアのみなさまが、むしろ日本を代表するメディアのみなさまが集まっておられるわけですけれども……」

    「一つは私に個人攻撃だと思われる記事が5月22日の読売新聞に掲載されました。これはもちろん私としては不愉快なことでしたが、その背後に何があったかは、きっちりとメディアの関係者の中で、検証されるべき問題だと思います。私は個人的には、官邸の関与があったと考えております」

    前川氏は続ける。

    「それから、加計学園に関わる文書の信ぴょう性ですとか、官邸からの働きかけといった問題について、私に最初にインタビューを行ったのはNHKです。ところが、その映像はなぜか放送されないままになっております。いまだに報じられておりません」

    「また、この真相を表す内部文書の中でも、非常に決定的な9月26日の日付付きの文書がありますが、官邸の最高レベルという文言が入っている文書ですね。これは、朝日新聞が報じる前の夜に、NHKは報じていました。しかし、核心の部分は、黒塗りにされていました。これはなぜなんだろう」

    「あの、NHKを責めているわけではないんですけれども」

    会場には、200人以上の記者らが詰めかけている。

    テレビの「コメンテーター」についても、前川氏は疑念を呈した。

    「それから、報道番組を見ておりますと、コメンテーターの中には、いかなる状況証拠や文書が出てきたとしても、官邸の擁護しかしないという方がいらっしゃいます」

    「お名前は差し控えますけれども。森友問題の時にもそういうことが繰り返されていましたが、森友学園問題で官邸擁護のコメントを出し続けた方の中には、ご本人の性犯罪が検察・警察によってもみ消されたのではないかという疑惑を受けている方もいらっしゃるわけです」

    「自浄作用を期待」

    前川氏は、話をこう締めくくった。

    「こういったことをふまえて考えますと、私は日本の国の国家権力とメディアの関係については、非常に不安を覚えるわけであります」

    「国家権力と第四の権力とまで言われるメディアとの関係を、国民の視点から問い直すという必要性。また、メディアの中で自浄作用が生まれることを期待したいと思っています」

    記者からも、この点について質問が出た。

    「どうして、『官邸の関与』があったと思うのか? その根拠は?」

    記者からの質問を受けて、前川氏はこうきり返した。

    「まず、杉田副長官から、そういう場所(出会い系バー)には行くなとご注意を受けていました。つまり、このことは官邸は知っていた情報でした」

    「そして、読売新聞の記事が出たのは5月22日のことでした。5月20日と21日に読売新聞記者からアプローチがありました。私の私的な活動について、報じるつもりでコメントがほしいということでしたが、私は答えませんでした。正直申し上げて、読売新聞がそんな記事を書くとは思いませんでした」

    「一方、同じ21日に、和泉総理補佐官から、文科省の某幹部を通じて、『和泉さんが話をしたいといったら応じるつもりがあるか』と打診を受けました。私は『少し考えさせて』と言ってそのままにしておきました」

    「私は報道が出たとしても構わないというつもりだったので、報道を抑えてほしいと官邸に頼もうということは思っていませんでした。私は、読売新聞のアプローチと、官邸からのアプローチは連動していると感じました」

    「それが一つの根拠です」

    前川氏は、こう語っていた。

    「もしこういうことが、私以外の人にも起きているとするならば、それは大変なことだと思います。監視社会化とか、警察国家化が進行する危険性がある。権力が私物化され、第四の権力であるメディアまで私物化されるということになるとすれば、日本の民主主義は死んでしまう。その入り口に立っているんじゃないかという危機感を持ったんです」