実は身近にある「人身売買」 NGOらが被害者の保護訴え、院内集会

    技能実習、留学に来たはずが実は……

    「人身売買」の根絶に取り組むNGOなどでつくるグループが6月13日、参議院議員会館で集会を開き、実態調査と被害者保護の法整備を訴えた。

    人身売買というと縁遠いように思えるが、これは日本でも存在する話だ。たとえば、都合のいい話を聞かされ、借金をして「外国人技能実習生」として日本にやってきたところ、1時間300円程度しかもらえないような劣悪な環境で長時間働かされた、というようなケースが現実に起こっている。

    NPO法人・移住連代表の鳥井一平さんによると、そうしたケースや建設現場で働く実習生が暴力を振るわれるケースなどが相次いでいるという。鳥井さんは、彼らが借金や強制送還の恐怖、複雑な契約にがんじがらめにされ、劣悪な環境で働くことを余儀なくされているとして、「これは人身売買、奴隷労働の構造だ」と語った。

    技能実習制度とは?

    この「外国人技能実習制度」は本来、国際貢献の一環として、日本の優れた技術を途上国の人たちに伝える制度だ。ところが、現実には実習生が単純労働に従事されられ、人権侵害も相次いでいるとして、国連人権理事会などから繰り返し批判や勧告を受けている。

    今年11月に施行される「技能実習法」では、実習生への人権侵害行為等に罰則が設けられるなどの保護が盛り込まれたが、逆に受け入れ枠や職種は拡大された。

    「留学」のはずが……

    集会ではほかに、アルバイトで学費・生活費がまかなえると聞いて「留学」したところ授業がほとんどないまま長時間労働をさせられたケースや、仕事があるといわれて来日した外国人が違法な性産業に従事させられたケースなどの報告があった。

    集会を主催した「人身売買禁止ネットワーク」共同代表の吉田容子弁護士は、こうした実態は、まだ十分に把握されていないと指摘。今後、政府とNGOが共同で「実態調査」をすべきで、人身取引の被害者を保護し、権利を回復するための法整備が必要だと訴えた。