江戸川高3殺人事件で無期懲役判決 遺族「頑張れたよって抱きしめて言いたい」

    東京地裁の判決は「無期懲役」。判決を受けて、遺族が記者会見を開いた。

    都立小岩高3年の岩瀬加奈さん(当時17歳)が2015年11月、東京都江戸川区のアパートで殺害された事件で、東京地裁(島田一裁判長)は5月23日、青木正裕被告人に求刑通り無期懲役を言い渡した。

    岩瀬さんの父・正史さん(48歳)と、母・裕見子さん(49歳)と姉・伊藤咲貴さん(23歳)が判決後に記者会見した。

    父・正史さん「非常に残念です」と肩を落とした。遺族は死刑を求めていたが判決は無期懲役。「永山基準が一つの大きな壁になったかなと率直に思いました」と語った。

    永山基準とは裁判所が示した死刑基準のことで、犯行の性質や動機、手段、被害者数や、犯人の年齢、前科、情状などを考慮して、やむを得ない場合に死刑が許されるというものだ。

    正史さんは語る。

    「他の事件との公平性といいますが、犯行内容も、犯人の裁判中の態度も……同じ事件ってないはずなんですよ」「被害者が1人でも死刑になったケースはあります。じゃあ、加奈の場合、どんな事情があれば死刑になったのかを逆に聞いてみたいです」

    青木被告人と加奈さんは、同じバイト先で働いていたことがあった。判決によると、青木被告人は2015年11月12日午後1時20分ごろ、自宅アパートで岩瀬さんの首を締めて殺害し、性的暴行を加えようとしたが目的を遂げず、財布から現金7500円などを奪うなどした。

    今回の裁判全体について、遺族はどう捉えているのだろうか。

    姉・咲貴さんは「後悔はありません」と話す。

    「裁判に至るまでの時間は長くて辛いものでした。加奈がいてくれたから(裁判員裁判の)5日間、やってこれた。加奈のおかげでいま、ここに4人でいられると思っています」

    裁判が始まる前、遺族は「本当のことが知りたい」と語っていた。

    青木被告人は初公判で起訴内容を認め、「申し訳ございません」と謝罪したが、その言葉をどう受け止めたのか。

    遺族は「反省は感じられなかった」と声を揃えた。

    裕見子さんは「本当の犯人の気持ちはわからなかった」という。

    最も気になったのが、捜査段階での調書と、法廷での証言が食い違っていたことだという。「ウソだろと声を大にして言いたかった」と裕見子さん。

    正史さんも「できるなら、あの場で怒鳴りつけてやりたかったですが、それも叶いませんので……」と続けた。

    実名での裁判

    今回の裁判では、起訴罪名に強姦未遂罪が含まれていたため、遺族が匿名での審理を求めることもできた。しかし、遺族は「法廷で加奈の名前が出なければ、事件がなかったことのようになる」「名前を法廷で当たり前に呼べないのはおかしい」として、実名での審理を望んだ。

    記者会見では、マスコミ各社からその点についての質問が相次いだ。全ての質問に丁寧に答えた後、母・裕見子さんはこうつけ加えた。「事件が起きたとき、実名も年齢も、住んでる地域も、警察発表以上に報道されました。ところが、実名で裁判すると、なぜ騒ぎ立てるのか。マスコミからの質問が多いことに驚いています」

    「ちょっと人が良すぎるよ」

    この判決について、加奈さんにどう伝えたいか。そう問われた姉の咲貴さんは「加奈の代わりに、証人として、加奈の言葉を伝えてあげたよ。4人で頑張れたよって、会ったら抱きしめて言いたいと思います」

    母・裕見子さんは次のように答えた。

    「娘に対しては、『ちょっと人が良すぎるよ』と言葉をかけると思います。私たちが望んでたものと違ってた。犯人の命を助けてしまったと思うので……。自分の命が終わって加奈に会えるとしたら、先ずひと言、それを言うかもしれません」

    「判決を聞いたときはショックでしたが、とても優しい娘でしたので、犯人の命ですらも、娘は救ってしまったのかなと思いました。ですが、私たちがここで体調を崩したり、おかしくなってしまったりすることを娘は望みません。判決に縛られることなく、3人で、そして加奈も一緒に前を向いて生きていきたいと思います」