「上野学園大学」が経営陣を批判した教授を相次ぎ解雇 「無効だ」と裁判に……

    何が起きているのか?

    「盲目のピアニスト」辻井伸行氏らを輩出した音楽大学「上野学園大学」に異変が起きている。大学は2016年12月、創業者一族に多すぎる給与を支払っていたほか、ファミリー企業に清掃などの業務を発注し、極めて高額な業務委託料を払っていたなどと第三者委員会から指摘を受けていた。

    そして2017年3月と4月、こうした問題を学内から指摘していた「新しい上野学園を作る会」の共同代表2人が、相次いで解雇を通告された。そのうちのひとりで、2016年度まで音楽学部・学部長だった声楽家・村上曜子氏は5月16日、解雇無効などを求める訴訟を、東京地裁に起こした。村上氏と代理人弁護士は都内で記者会見し、「解雇は批判を封じ込めようとするもので、見せしめだ」と主張した。

    Kazuki Watanabe / BuzzFeed

    村上曜子氏(左)と代理人の秋山直人弁護士(右)

    経緯を振り返る。

    上野学園大学は、1958年に設置された音楽大学だが、このところ経営状態が悪化。第三者委員会の報告書によると、2015年度末時点での累計損失額は約31億円になっていた。

    村上氏によると、大学は損失を補てんするため、世界的に貴重な「バッハの自筆楽譜」を約3億5000万円で売却したり、メンデルスゾーンやダウランドの自筆楽譜、ロジェーリのバイオリンなども約7400万円で売却していたという。

    辻井氏を指導者したピアニストの横山幸雄教授ら教員有志は、こうした事態を重く見て、創業者一族の問題経営を指摘した。

    第三者委員会の調査では……

    大学側は2016年6月、石橋慶晴・元理事長を退任させ、代わりに妻の石橋香苗氏を理事長とするなど、経営体制を変えた。

    しかし8月、文科省は第三者委員会を設置して調査するよう、大学に要求した。

    第三者委員会が2016年12月にまとめた調査報告書では、創業者一族である石橋裕・元学園長や石橋慶晴・元理事長に高すぎる報酬を支払っていたせいで補助金が減額され、それが「財務状況をさらに悪化させ」たと認定された。また、学校から、石橋家が経営するファミリー企業に支払われた清掃・食堂などの業務委託料も「不相当」とされた。(他業者に委託した場合と比べて、9年間で8億4000万円ほど高かったという)。

    第三者委員会は、上野学園大学の経営について「ガバナンスの機能不全により、法令や内部規則に基づかない場当たり的な意思決定がなされてきた」と批判。「一刻も早い正常化及び秩序の回復に向けて、必要な努力を行うよう望む」とした。新理事長の石橋香苗氏は2017年1月、「歴史と伝統に恥じない再生を果たす決意」と表明した。

    解雇は正当なのか?

    その一方で、大学側は3月、4月に「作る会」の共同代表をつとめる横山教授と村上氏を、相次いで解雇した。

    大学側は村上氏を解雇した理由について、村上氏が学部長の立場を利用して学園の内部情報を開示し、学園の名誉・信用を傷つけた、などとしている。

    村上氏側は、一連の情報開示は公益通報・内部告発であって、その指摘が真実だったことは第三者委員会の調査報告書が示している、などと反論。解雇は無効だと主張している。

    学校法人上野学園は報道各社に対し、代理人を通じて次のようにコメントした。

    「訴状送達後、速やかに内容を精査して対応いたしますが、村上氏の解雇には合理的な理由があり、相当な処分であると判断しております。当学園といたしましては、現時点では本件に関するこれ以上のコメントは控えさせて頂きます」


    バズフィード・ジャパン ニュース記者

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