back to top

辞められない、休めないブラックバイト。なぜ学生はその理不尽さに耐えてしまうのか?

社会経験がないから、「そもそもおかしい!」と気づけない若者と、そこにつけ込む大人たち。

「辞めさせてもらえない」「レジの不足金を弁償させられそう」「給料が支払われない」……。学生アルバイトの現場には、そんな法令違反があふれているとして、「ブラックバイト対策弁護団あいち」の弁護士らが3月7日、厚生労働省に申し入れをした。労働基準監督署の機能を強化し、労働法のルールを義務教育で教えるよう求めた。

バイトを辞められない問題

弁護団のもとに寄せられる相談は多岐にわたる。たとえばこんな相談だ。

家庭教師に登録したところ、強引なシフトを組まれた。辞めようとしたら、「交代要員が決まるまでは指導を続けてもらう、続けなければ罰金だ」と言われた。

弁護団事務局長の久野由詠弁護士は話す。

「塾講師や家庭教師は、生徒との信頼関係のもと、一定期間続けることが期待されています。だから辞めにくいんです」

「バイトはいつでも辞められる。でも『あなたが辞めて、生徒の成績が落ちたらどうする』『もし生徒が辞めたら賠償してもらう』と言われたら、反論しにくい。罪悪感につけ込まれて、脅されて、体調を崩してしまって、どうにもならなくなって相談に来るケースが多いです」

塾や家庭教師の場合、実態は管理・監督されている労働者なのに、会社側は「業務委託契約の個人事業主だ」と主張して、労働法のルールを守らないケースが目立つそうだ。

弁護団ができたきっかけは、2014年5月、名古屋の若手弁護士がブラックバイト被害者向けの無料電話相談会をしたことだった。9時間もやったのに、相談はたったの2件。メンバーは「少なすぎる。学生が被害に気づいていないのが原因ではないか」と感じた。

弁護団はこれまで、中学、高校、大学への「出前講座」を約40回実施した。現在約40人の弁護士が所属し、メールや電話で相談を受け付けている。相談件数は累計200件を超え、中には弁護士が介入して解決したケースもある。

しかし、「ブラックバイト問題を根本的に解決するためには、個別に学生を救ったり、地域レベルでワークルール教育をするのでは限界がある」と感じるようになった。そこで今回、国レベルで「働かせ方改革」を実現してほしいと厚労省に申し入れたのだという。

学生であることが尊重されず、不当に働かされているアルバイトを「ブラックバイト」と名付けた大内裕和・中京大教授は「日本の働き方に地殻変動が起きている。ブラックバイト問題を放置すると大変なことになる」と話す。

高校生・大学生の時点で、不当な働かされ方に慣れてしまう。それは危険なことだと、大内教授は話す。

中には、あえて大変な職場でアルバイトし、就職活動の際に「キツい職場で耐えた」とアピールする学生もいるそうだ。

学生から出た「仮説」

アルバイト現場では、季節のセールで余った商品を買い取らされたり、勝手にシフトを入れられたりといった、不当な扱いが横行している。

なぜ学生は、そんな扱いを受けてもバイトを辞めないのか。それを受け入れてしまうのか。

労働環境は全体的に悪化し、わりのいい仕事はそうそうない。非正規雇用が増え、アルバイトへの負担も以前より重くなっている。

大内教授のゼミで話し合ったところ、学生からは、それらに加えて「中高時代の部活動で、理不尽な扱いに慣れてしまうから」という仮説が出てきたそうだ。

先輩・後輩、部活そっくり

大内教授は指摘する。

「多くの人が学校の部活動を通じて、なんのためにあるのかよく分からないルールでも、疑わずに受け入れることを学びます」

中には、そうした雰囲気を積極的に利用し、職場をコントロールするケースがある。大内教授は学生のバイト先を観察して、そう気づいたという。

「たとえば、ファミレスや居酒屋のミーティングは、声の掛け合い方が部活そっくりです。先輩が後輩を指導するところや、辞めたいといったら先輩が『なんでだ』と引き留めにくるところも、先輩から後輩へバイトリーダーを譲っていくのも部活のようですね」

「部活とブラックバイトで培った経験が、ブラック企業でも働ける感覚を作りだしている。限界まで耐えてしまう背景の一つには、こうしたこともあるのではないでしょうか」

大内教授はこう警鐘を鳴らし、義務教育の段階でワークルールを学ぶことの重要性を訴えていた。

バズフィード・ジャパン ニュース記者

Kazuki Watanabeに連絡する メールアドレス:Kazuki.Watanabe@buzzfeed.com.

Got a confidential tip? Submit it here.