性器にシリコンを注入して死亡したブロガー、ファンはパートナーの責任を追及

    タンク・ハフェルテーペンと、「ご主人様」のディランは、2人の関係をつづったブログで人気を博していた。しかし、タンクが性器にシリコンを注入し、死亡したことで、ファンたちはディランの責任を問い始めた。

    Ben Kothe / BuzzFeed News; Getty Images, Arman Ellis

    オーストラリア出身のジャック・チャップマンは、支配的なボーイフレンドと付き合っている間に大きな変化を遂げた。名前も、住んでいる国も、友人も変わった。体つきも変わり、ぽっちゃりした体形から、マーベルのスーパーヒーローを思わせるたくましい体格に変身した。さらに、性器の大きさも劇的に変わった。そして、命を落とした。

    ディラン・ハフェルテーペンとの主従関係が始まった約6年後、チャップマンは、法的に「タンク・ハフェルテーペン」と改名した。

    ディランはいわゆるご主人様で、筋骨隆々の体にタトゥーを施している。2人は一緒にいた7年間に、ソーシャルメディアでちょっとした有名人になった。2人の体のサイズ、特に、一目で大きいとわかるタンクの性器に、体毛が濃く、がっしりした「熊系(gay bears)」と称されるゲイたちが夢中になったのだ。

    ディランと付き合い、ファンたちから励ましを受けている間、タンクはシリコン注入によって陰のうと陰茎を大きくしていた。法律でも禁止されている危険な身体改造だが、「ゲイナー(gainer)」心理とよく結びつけられる。

    ゲイナー心理とは、可能な限り体を大きくしたい、体重を増やしたいという強烈な欲望のことだ。筋肉派のゲイナーも、脂肪派のゲイナーもいる。タンクもゲイナーを自称し、ソーシャルメディアで称賛や激励を得るため、性器にシリコンを注入していた(このリンクは、公共の場でクリックしないことをおすすめする)。

    タンクがTumblrに投稿した写真を見たあるファンは、「うっとりするような下着の膨らみ。まるでハンサムなミノタウルスですね」と絶賛。別のファンは、「真下に垂れ下がった性器が最高。きっとあなたのご主人様は毎晩枕代わりにしているのでしょう」と褒めたたえた。

    10月9日、タンクは呼吸困難になり、病院に運ばれた。そして6日後、シリコンによる肺塞栓症で死亡した。

    タンクの死と、それを取り巻く状況は、主従関係と虐待の間の、ときに曖昧な境界線について問題を提起している。さらに、タンクが所属していた過激な身体改造の世界では、死の責任は誰にあるのかという疑念が生じている。

    友人の「アフィル」はタンクの死について熟考した長い文章で、「ジャックがどれくらい入院していたか、どのような体験をしたかはわかりませんが、ディランが彼を孤立させたこと、彼の死を友人たちに隠していたことは事実です。私はそのことをとても不快に思っています」と述べている。

    ディランはBuzzFeed Newの取材に対し、「いろいろな臆測が飛び交い、悲しく思っています」と心境を語った。タンクの死が騒動を巻き起こしていることについては、すべて「偽情報」や「陰謀説」だと一蹴している。

    Arman Ellis

    左から「ビフ」(「子犬」と呼ばれる男性たちの一人)、ディラン、タンク、友人のアーマン・エリス。あるイベントの会場にて。

    「彼が少し困っていたのは、誰もが見てとれました」

    タンク(家族と一部の友人は今でも彼をジャックと呼んでいるが、本人が法的に名前を変更しているため、本記事ではタンクを使用する)は若きゲイとして、出身地メルボルンの活気ある熊系シーンに引き寄せられた。22歳のとき、地元で開催された熊系のコンテストに参加。優勝こそ逃したものの、友人たちはファンの人気を集めていたと話している。

    2008年、タンクは「Cubby House」というポッドキャストを始め、すぐに国際的な熊系コミュニティーでファンを獲得した。しかし母親によれば、実生活では仕事に行き詰まりを感じており、米国のグリーンカードくじに当たったとき、遠距離恋愛のボーイフレンドであるディランと一緒に過ごすため、チャンスに飛びついたという。

    友人たちはタンクについて、心が広く、好奇心が強い、温和な人物だったと振り返っている。友人のカイル(名字は匿名希望)は、「彼は大柄の、頭が抜けた男で、いつも笑っていました」と話す。

    タンクが死亡当時に暮らしていたシアトルでの友人アーマン・エリスも、同様の印象を持っている。「私たちはビデオゲームやポップカルチャー、写真でつながっていました。私は遊び好きで、滝に行ったり、ボートに乗ったり、水兵帽をかぶったりして楽しんでいました。人々はばかだと思ったかもしれませんが、彼も同じように楽しんでいました」

    タンクはシアトルで、HIV感染者に食事を提供する組織の一員として働き、公衆衛生分野のキャリアを積みたいと考えていた。タンクに仕事を通じて助けられたという女性は、「タンキーおじさん」が小さな息子にクリスマスプレゼントをくれたことをよく覚えている。

    一方、タンクの友人アーロン・クルーカは次のように述べている。「彼が少し困っていたのは、誰もが見てとれました…恋愛関係で少しうまく行っていず、いつも居場所を探しているような感じでした」。タンクはインターネットに居場所を求めた。

    タンクは、自身のラジオ番組とTumblrを通じて、米国の大きな熊系コミュニティーとつながり、ディランと話すようになった。ディランは「Noodles and Beef(ヌードルズ・アンド・ビーフ)」というブログを持っており、Tumblrでは有名人だった。ディランはBDSMパーティーや、「子犬」と呼ばれる男性たちとの多重関係をブログにつづり、読者を喜ばせていた。ディランは筋肉の発達した印象的な体とハンサムな顔の持ち主で、ブログとそのニュースレターで挑発的な写真を紹介していた。

    2010年ごろ、タンクがまだオーストラリアにいたとき、2人の遠距離恋愛が始まったと友人たちは話している。タンクのブログによれば、ディランがタンクに「首輪を付けた」という。つまり、タンクの首に鍵付きの鎖が巻かれ、主従関係が結ばれたということだ。

    3年後、タンクは米国行きのビザを取得。サンフランシスコにあるディランの自宅で「アルファ」、「カルネ」、「ビフ」というほかの子犬たちと暮らし始め、その後、シアトルに引っ越した(2016年、2人の関係が中断し、タンクが家を出ていた間、「アンガス」という赤毛の子犬が追加された)。

    彼ら「ファミリー」は、しばしばジョック・ストラップ(スポーツ用アンダーサポーター)や、体を強調するフットボールパッドを身に着け、人気ゲイクラブや「フォルサム・ストリート・フェア」のようなイベントに行き、注目されることを楽しんだ。2016年、オーストラリアを旅行した際は、ディランとタンクでセックスクラブを訪れ、「プールでセックスし、夜の客たちを喜ばせました」。2016年3月、タンクはディランの星座であるおうし座のタトゥーを胸に刻んだ。ディランはそのことについて、「(ディランの)ブランドを手に入れた」と報告している。

    オンラインで詳述されている2人の関係は、ディランが「ご主人様」、タンクが「子犬」という主従の力関係に基づいていた。そして、ポリアモリー(一度に複数人と性愛関係を持つこと)、BDSM、レザー、子犬プレイ、熊系、ゲイナー、身体改造という複数のシーンをまたいでいた。2018年の現在、多くの人が幸せで健全な性生活に、これらのシーンを取り入れている。

    しかし、タンクの友人たちの一部は、2人の関係を心配していた。タンクとともにポッドキャストの司会役を務めていたケビン・リーダーは有害な関係と表現し、ディランのパートナーだったレイモンド・スミスは、ディランは人を巧みに操ると指摘した。

    タンクがオンラインに投稿した「ルールと責任」リストには、ご主人様が設定した「体の目標」を達成しなければならないと明記されており、「(子犬の)体重、筋肉量、プロポーションに関する」具体的な数字が設定されていた。

    また、「ピアス、タトゥー、生理食塩水による陰のうの膨張を含む身体改造、ステロイド、HGHを含む筋肉増強剤に関しては、すべてご主人様の意向に従う」ことを義務づけられていた。

    ディランは以前、「International Pup Play Perspectives」のインタビューで、タンクは重量挙げの選手を目指していると話していた。「私は彼と主従関係を結び、目標達成を助けることにしました。趣味を追求するため、カロリーの必要量を満たすため、金メダルを取るために必要なことをするのです」

    ディランはBuzzFeed Newsに宛てた声明の中で、オンラインに出回っているリストは「タンクが書いたエロティックなフィクションであり、彼の服従的なファンタジーを反映したものです」と述べている。

    しかし、タンクはTumblr上でも、ディランと「契約」を結んだと書いている。Facebookには、タンクの腰にタトゥーの一部が見える写真が投稿されている。リストで定められた「ディラン様の所有物」のマークで、リストには「このブランドは2つの要素から成る。1つ目は“ご主人様の所有物”という文字と盾のモチーフ。2つ目はご主人様のファーストネームで、子犬がご主人様の正体を明かす権利を得ることが条件」と記されている。

    さらに、タンクはBDSMをテーマにしたあるブログのインタビューで、金銭、電話、時間、友人など、ディランがタンクの人生を大幅にコントロールできる契約書を作成したと語っている。

    タンクが死ぬまでシアトルで同居していたディランと4人の子犬たちは当初、電子メールや電話、テキストメッセージでの取材依頼に全く応答しなかった。BuzzFeed News記者が直接接触しようと試みたが、ディランらは警察を呼び、記者は逮捕、収監された。

    翌週、ディランと、子犬の一人であるダニエル・バルデラス・ハフェルテーペンが接近禁止命令の手続きを行った。その1週間後、ディランが電子メールでの取材に応じ、一連の質問に回答した。

    Arman Ellis

    タンクと、友人のアーマン・エリス。

    「恐ろしいこと」

    タンクとディランはそれぞれのブログで、シリコン注入の危険性を公に認めていた。ディランは、フェティシズムを追求した結果、命を落とした友人たちを見てきたと述べている。タンクも、「正しく行わなければ、健康上の大きなリスクがあります」という警告を発し、注入の手順や医療用シリコンの入手場所を教えることを拒否していた。

    それでもタンクは、サイズアップがわかる写真を投稿し続けた。ディランはBuzzFeed Newsに対し、「彼の性器や体を大きく見せるため」、写真を合成したこともあると話している。

    Tumblrを運営するタンブラー社は、BuzzFeed News宛てに声明を送付。特定アカウントについてコメントしているわけではないと断わった上で、自傷行為を助長する内容でない限り、身体改造や身体醜形障害に関する投稿は禁止していないと述べた。

    2016年2月、匿名の読者から「どこまで大きくするつもりか」と質問されたタンクは、「どこまで行けば十分かは、ご主人様が決めることです」と答えた。

    ディランにとっては、大きければ大きいほど良かった。2016年、筋肉を増やすことにとりつかれた「筋肉醜形障害」が「ABC News」で特集されたとき、ディランは65キロ足らずの体重だった10代から、約120キロの巨漢になるまでの道のりについて語り、強迫観念があることをほのめかしていた。

    「私はそのようなライフスタイルにのめり込んでいきました。もっと大きくなりたいという思いにとりつかれていたため、動き続けるゴールポストを、一度も問題視することなく、目指していました」

    一方でディランは、タンクに注入を強要したことを否定している。

    「これは彼のフェティシズムでした。私がシリコンを注入させたことはありません。それどころか、シリコンの除去を手伝ったことすらあります」

    ディランによれば、タンクは2014年にメキシコで自らシリコンを注入した。また、2人が別れていた2016年、再びサクラメントで注入したという。ディランはこのことを、彼が「もっとシリコンを注入したいという強い欲求」を持っていた証拠だと分析し、タンクを「誇り高き露出狂」と呼んだ。2018年5月、ディランはタンクを形成外科に連れて行き、一部のシリコンを除去させたという。

    陰茎や陰のうへのシリコン注入は違法で危険であるため、男性器をシリコンで大きくすることは一般的ではない。しかし、そうした行為に関心を持つゲイを中心とした小さなシーンは確かに存在する。アマチュアポルノの人気サイト「Xtube」には、性器にシリコンを注入した男性の動画がいくつかある。ある動画では、細い針とゴムチューブ、プランジャーを使い、自分で注入する様子を紹介している。最も人気のある動画は約3万回も再生されている。

    ワシントン大学医学部の教授で、肺疾患を専門とするマーク・ワーフェル博士は「どれくらい行われているかは把握していませんが、私たちが考えているより多くの人が行っているようです」と話す。「報告されているケースのほとんどは、自分で注入するか、秘密の場所に行き、注入してもらうかのどちらかです」

    性器へのシリコン注入は大きな危険を伴うため、医師たちからすれば驚くべき行為だ。体内で自由に動くシリコンはしばしば、重度の炎症を引き起こす。注入時に血流に入り込むことが多いが、注入後にリンパ系に移動することもある。球状のシリコンが血管に詰まれば、組織が壊死(えし)する。肺や脳の血管が詰まった場合は、酸素を奪われ、後遺症が残るか、命を奪われる。

    コーネル大学ワイル・コーネル医学部で形成外科の助教授を務めるソフィー・バーチッシュ博士は「組織に入り込むと、スポンジに入ったゼリーのように固まります。つまり、シリコンを取り除くには、組織ごと切除しなければならないということです。これは問題です」と説明する。

    バーチッシュ博士によれば、医療グレードの注入用シリコンは通常、特定の眼科手術にごく少量、目薬1滴分くらいしか使用しないという。そのため、違法な注入には多くの場合、工業用潤滑油のような有害物質が使われるそうだ。

    陰茎や陰のうは無数の毛細血管とつながっているため、失敗のリスクが高い。それでも、多くの人が注入を希望する。

    米国美容整形委員会の委員長を務めるアレックス・ソーベル博士は「例えば、お尻に自分の脂肪を注入した場合、死亡のリスクは3000分の1です。想像してみてください。拡張した血管が無数にある場所に異物を注入するのです。

    しかも、注入するのは医学訓練を受けていない人物です。惨事を招く行為だということがわかるでしょう」と警告する。「これは回避可能です。この話題を口にすることすらやめればいいのです。そうすれば、この男性は今も生きていたはずです」

    タンクが入院した夜、「彼は気分が悪い、息苦しいと訴え、ぜんそくの吸入器を貸してほしいと言いました」とディランは振り返る。

    「NoodlesAndBeefは牢獄に入ったのか」

    タンクが10月に死亡した直後、Tumblrで騒動が巻き起こった。コミュニティーの一員への哀悼と、ディランへの激しい怒りが混在していた。同時に、いくつかの問題が提起された。

    ディランは、タンクを追悼するブログ記事で、自身の子犬が原因不明の肺疾患で死亡したと説明したが、タンクの友人やファンは懐疑的だった。そして、ディランが無理強いしたのではないかと考え、虐待の証拠を探すため、電子メールのアーカイブやテキストメッセージ、ウェブを徹底的に調べ始めた。

    Tumblr/Tank Hafertepen / Via web.archive.org*/brandedbulltank.tumblr.com

    2016年、タンクはTumblrに、涙を流す自身の写真と、ディランへの長い謝罪文を投稿した。ご主人様を失望させた自分は「最低の人間」だという内容であり、タンクがディランの許可を得ないで、友人宅の風呂に入ったことが原因だった。

    「私には愛される資格はありません。許される資格もありません。唯一、苦しむことだけがふさわしい人間です」とタンクは書いている。「子犬は、普段と違う人と会うとき、普段と違う活動をするとき、ご主人様に頼んで許可を得なければなりません…ご主人様が疑念を抱く可能性のある状況も避けなければなりません」

    主従関係やロールプレイに詳しいタンクの友人たちでさえ、この強制された謝罪の口調と厳しさに不安を覚えた。タンクのファンたちも同様だった。カイルはBuzzFeed Newsに対して、「風呂の一件があったときから、Tumblrコミュニティーは(ディランに対して)攻撃的になりました」と話している。

    数カ月後、タンクからカイルにメッセージが届いた。「誰にも言わないでほしい。自分のために、出口戦略が必要なんだ」。タンクとディランは別れたが、2017年夏までによりを戻した。その1年後、タンクは死んだ。

    Tumblrでは、タンクの死を隠したディランを非難する投稿が拡散し始めた。ディランはタンクの死後、複数の友人に対して、タンクがまだ生きているような話をしていたのだ。タンクが死んだ直後に発行したニュースレターでも、ディランとタンクがエアーマスクを付けた写真を掲載し、シアトルの空気が悪いことについて論じていた。パートナーが死んだことにも、入院したことにも言及していない。「アンガス、ビフ、タンクがいる家に帰ってきました…シアトルの街は山火事の煙に包まれています」

    ディランはBuzzFeed Newsに対して、「後悔しています」と語り、タンクが死んだという噂がすぐ広まったことに動揺したと説明した。「私は悲しみに暮れながら、当てもなく、情報源を突き止めようとしました。そして、激しく怒り、心の中で否定しました。私の行動は間違っていました。誤解を与えた人たちに謝罪します」

    しかし、ディランの行動に対する怒りはオンラインで拡大し続けた。ディランは間もなく、ソーシャルメディアのアカウントをすべて閉鎖した。彼のブログ「Noodles and Beef」は、恋愛関係のブログから、ヌードルとビーフのレシピを紹介するブログに変わった。

    現在、Tumblrにはタンクの死の詳細を調査するためのブログが林立している。「IsNoodlesAndBeefInJail(NoodlesAndBeefは牢獄に入ったのか)」、「NoodlesAndBeefUncovered」(NoodlesAndBeefの正体)、「NoodlesAndBeefLeftovers」(NoodlesAndBeefの残り物)、「DylanNoodlesAndBeef」といったものだ。さらに、「虐待者とそのファンを非難する」ことを目的とした、反ディラン派の「NoodlesAndReceipts」というブログもある。

    ファンたちは数週間にわたり、物語の詳細を追い続けた。タンクの死に関するオーストラリアのテレビ報道や、シアトルのオルタナティブ紙「Stranger」の記事を徹底的に分析した。インターネット上のドラマについて語り合う「Kiwi Farms」の75ページに及ぶ掲示板のスレッドでは、探偵気取りの人々が、BuzzFeed News記者に対するハフェルテーペンの裁判書類を掘り起こし、タンクの死亡証明書に記載されている事故の発生日、ハフェルテーペンの自宅から発信されたと思われる緊急通報を突き止めた。

    さらに、ディランはピーター・ドバックという男性とも結びつけられた。2017年11月に肺塞栓症で死亡した人物で、長年のパートナーによれば、原因は性器へのシリコン注入だという。

    ディランはこれらの活動を「偽情報だらけ」と一蹴する。「事実を誤って解釈しているものもあれば、陰謀説もあります。素晴らしい男性を讃えているとは言い難いものばかりです。さまざまな臆測が飛び交い、黙っていられなくなりました」

    ディランは、ソーシャルメディア上の人々の怒りを認識している。「オンラインで私についての記述を目にしたら私だって、たとえ真実が書かれていなくても、私が何かの罪を犯したのだと思ってしまいます。タンクはとても愛されていました。彼の死について誰かを責めたい気持ちは理解できます」。ディランは、タンクを追悼するサイト「TankHafertepen.com」を開設する計画を立てている。

    「パートナーを失ってかわいそうに」

    タンクの母親リンダ・チャップマンは、息子の死後、彼がオンラインで有名だったこととその理由を初めて知った。リンダはタンクの死について、ディランとシリコン注入への関心が原因だと考えている。リンダはBuzzFeed Newsの取材に対し、ディランは「ナルシストのろくでなし」で「どうしようもない最低男」だと痛烈に批判した。

    「最初はディランに同情していました。パートナーを失ってかわいそうに、と」。リンダはディランに会ったことがある。クリスマスも、リンダの家で一緒に過ごした。しかし今、リンダは激怒している。「虐待されている人々を助けるため、シリコン注入の危険性を知ってもらうため、すべてを明らかにしたいと思っています」

    懸念はほかにもある。タンクは、死の3週間前に遺言状を作成していた。BuzzFeed Newsがコピーを確認したところ、すべての所有物をディランに譲るという内容だった。タンクが亡き父から相続し、投資口座に入れていた20万ドルも含まれる。しかしリンダによれば、タンクは以前から、20万ドルは自閉症の兄弟に譲ると断言していたという。約束の破棄にはディランが関係していると考えたリンダは、遺言状に異議を唱えるため、シアトルの弁護士キャサリン・クラークを雇った。

    クラーク弁護士とリンダは、遺言状の効力について裁判で争う可能性があり、さらに、ディランにパートナーの死の責任を負わせようとしている。これに対し、遺言状は合法的なものだとディランは主張している。

    ディランはBuzzFeed Newsに対して、タンクが公証人と証人の前で遺言状に署名する写真を提示した。2人の証人はいずれもディランの「子犬」で、タンクが指名した遺言執行者も子犬の一人だった。

    BuzzFeed Newsが20万ドルの使い道をディランに尋ねると、タンクは米国への引っ越し費用と諸経費を捻出するため、すでに一部を使っていたという答えが返ってきた。ディランによれば、タンクの医療費と法的手続きの費用を支払った後、残りはタンクの兄弟に渡すつもりだという。

    「タンクは(約15万オーストラリアドル=約10万8000ドルで)一緒に住む家を買いたがっていましたが、タンクが死んだ今、家を買っても、私が失ったものを思い出すだけです」とディランは電子メールに書いている。

    ディランがタンクの死に関わったかどうかについて、シアトル警察が捜査してくれることをリンダは願っているが、捜査が行われる可能性は低い。この一件に詳しい警官はBuzzFeed Newsの取材に対し、犯罪性はないと述べ、違法薬物の過剰摂取を引き合いに出した。もし誰かのボーイフレンドが誰かにヘロインを教えて、使用を勧め、その結果、誰かが死んでも、通常、ボーイフレンドが罪に問われることはない。

    ディランとタンクの熱狂的なファンたちは今も、タンクの死とその意味を受け入れることに苦労している。反ディラン派のあるブログに、次のようなコメントが投稿されていた。「彼らが陰のうを大きくするのを、私たちは皆、何も言わず、何年も見ていました。だから、私たちは皆、ある意味で加担していたのだと思います。私たちは皆、自分を恥じるべきだと思います」

    この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:BuzzFeed Japan

    CORRECTION

    人物名が間違っていたため、訳文を一部修正しました。