いまや多くの人が重要なテーマとして意識するようになった多様性。なかでも、障害のある人が生きやすい社会づくりは、課題の一つだ。
ジリアン・メルカドさんは長年、障害をどう表象するかについて考えてきた。モデルで俳優でもある彼女は、筋ジストロフィーのため子どものときから車いすを使っている。
モデルとして活動を始め、写真を学ぶ友人たちと仕事をするうち、撮影現場に身体面での多様性がないことに気づくようになった。
そして現在、プラットフォームを立ち上げ、ファッション業界では目を向けてもらえる機会の少ない、障害のあるクリエイターたちに活躍の場を提供している。
2020年夏、メルカドさんは妹と友人と共同で「Black Disabled Creatives(ブラック・ディセイブルド・クリエイティブス)」を立ち上げた。
人種差別に抗議する「Black Lives Matter運動」のうねりの中、多様性の意義を説く企業やブランドと人々とをつなぐデータベース的な役割のウェブサイトだ。多彩なスキルをもつ人が集まり、近いうちに求人情報も載せていく予定だという。

BuzzFeed Newsはメルカドさんに電話取材した。
——活動を始めた経緯を聞かせてください。
「私は自分を、地球上でいちばん寂しい人間だとずっと思っていました。車いすで学校へ行けば、『で、私の仲間はどこにいるわけ?』と思うのです。ずっと前から、自分と同じような人がもっと表に出て、目に見える存在にならないとと考えてきました」
「出演したディーゼルの広告キャンペーンが話題になってから、連絡をもらうことが増えたんです。いろんな人が『私もずっとモデルになりたかったけど、なれるとは思いませんでした』って。実際そのとおりで、病院やチャリティのイベントを除けば、そんな機会はありませんでした」
「あのときの私はすごく運がよくて、あるイベントでクリエイティブディレクターと意気投合して、そこから動き出しました」
「真の表象の実現に向けて今も取り組んでいますが、これは項目を並べたリストにチェックを入れていくのとは違います。実際にチャンスをつくることであって、本来は最初からこうあるべきなんだと認識することなのです」

「『We the Urban(ウィー・ザ・アーバン)』というオンラインマガジンでクリエイティブディレクターの仕事を少しかじって、撮影をしたり記事を書いたりしていました」
「その現場でいつも思っていたのが、カメラの前に立つ人も裏方も、みんな同じタイプの人ばかりで、多様性が全然ないということでした。私の友人や一緒に学校へ行っていた人たちがいるのに、こうした雑誌業界では、枠に囚われない考え方や様々な人への機会が少ないと思うと、とてももやもやした気持ちでした」
「自分がこの世界の舞台裏に入ったとき、様々な人に機会を設けるようにしたほか、誰でもアクセスできるように努めました。最初の一歩を踏み出すのが本当に難しいのを知っていたので」
「まず自分と同じラテン系のコミュニティに手を貸さなきゃ、同じLGBTQの人たちに手を貸さなきゃ、同じく障害のある人たちに手を貸さなきゃ、という感じで始めました」
「ファッション業界にはモデルを採用するにあたって実に異様な慣習があって、とにかく背が高くて、やせてて、欧州系な人を選びます」
「しかし、実際のアメリカはもっとずっと多様です。町へ出て、人に会ってみれば全然違います。だからいろんな違いを取り入れて、一人ひとりすべての人に美しさがあるんだと示せる機会があれば、私は全力でその機会を生かしてきました」

——Black Disabled Creativesのアイデアはどこから生まれたのでしょうか。
「インスタグラムのストーリーを見ていて、黒人オーナーのレストランや黒人オーナーの書店について投稿している人が大勢いるのに気づきました。黒人が運営している、という点を強調して」
「しかし残念ながら、障害は話題にのぼらないことに気づきました」
「これまでの人生を通じてずっと、障害を重要事項として注目してもらうことに難しさを感じていました。正直なところ、理由は今もわかりません。身体に障害をもつ一人として、できるだけそのことについて話すように努めています」
「私の両親はドミニカ人です。父親が黒人のドミニカ人なので、私たちが世界に出ていくことが容易でないことをわかっています。私のような障害が加わるとさらにそうで、障害のある黒人も大勢知っています」
「ここに属する人たちがどんなにすごいか、ほかの人に真髄を理解してもらう手段はありませんでした」
「そこで、自分のバックグラウンドでもあるクリエイティブ分野の人を中心に試してみることにしたのです。最初はグーグルのスプレッドシートにアイデアをいくつか書き出し、インスタグラムのフォロワーに呼びかけて、おすすめがあればぜひ、と声をかけていきました」
「自分に与えられた機会を使って、『もっと包括的に』『もっと多様性を』と発信する会社やブランドとつながっていきたいです。『あなたの職場にも障害のある人を仲間に加えたらどう?あなたがクリエイティブディレクターだったり、雑誌やウェブ向けの撮影を企画しているなら、障害のあるフォトグラファーに依頼してみたらどう?』と呼びかけています」
「そうすると、少しでも前進できます。障害についての対話も必要です。世界で6〜7人に1人は何らかの障害をもって生きることになるとすれば、それについてきちんとと話さないのはおかしいですよね」
「ウェブ開発をしている友人も協力してくれました。サイトは障害を考慮して完全にバリアフリーになっているので、聴覚や視覚に障害がある人向けのアプリも用意しています」
「クリエイターやブランドが人を採用するだけでなくて、ここで自分の仕事を紹介している人たちが同じように熱い思いで仕事をしている仲間の存在を知って、コミュニティのようなものを形成していける、そんなプラットフォームをつくりたいと考えています」
——他の団体やグループと連携した活動はしていますか?
「現時点ではしていませんが、メンバーが増えて規模も大きくなってきていますし、ぜひやりたいと考えています」
「何人かとは提携していく話を進めていますが、まだ始めてほんの数カ月なので、実際に動き出すのは年内か来年でしょう。今は単独でやっています」
——インスタグラムのアカウントについて聞かせてください。
「ソーシャルメディアは本当にすばらしい場所になれます。人と人が目に見えてつながるきっかけになります。インスタグラムを始めたのは、このコミュニティの存在を知らない人や何を知りたいかわからない人が、対話を深められるように情報を伝えたかったからです」
「たまたま投稿を見た人に、『自分だけじゃないんだ』と共感してほしい。偉業を達成した障害者はたくさんいて、よく見る著名人でも障害者とは知らなかった人もいるかもしれない。思う存分人生を生きていて、それでももうひと押しがあればもっと広い世界に出られる人もいる。そういうことを知ってほしいです」
「障害はずっと存在していると理解してもらいたいし、この属性をもつこれだけ大きな集団を無視すべきではありません。誰でも、いつでも障害をもつ身になり得るわけですし」
「それは恐れるべきことではなくて、受け入れるべきなんです。そしてたとえそうなったときも、それまでと同じようにはいかなくても、そのままの自分で人生を楽しめる手助けができればと思っています」
「私たちのコミュニティーはいつも互いに助け合っています。私自身、障害に対する不安を取り除きたいと思ってきました」
「残念ながら私たちの中に一定のイメージが刷り込まれてしまっているので、こうした(障害をもつ人たちの)才能や力を輝かせたい、スポットライトをあてたいという気持ちでした」

「昨年は、いくつもの抗議運動などの写真やビデオが投稿され、人々に感情面の結びつきができ、お互いがどれだけ近い存在なのかということを実感しました。これこそソーシャルメディアのもつ力だと思います」
「トランプ政権のもとでは社会が分断していると言われていました。現実に、多くの面でそうなのです。でも立ち止まって耳を傾けてみれば、お互いにつながり合い、かかわり合ってもいます」
「この国のいいところは、他者への共感や思いやりを通して、みんなお互いに助け合おうとする気持ちをもっているところです」
——障害をもつ人を表象することについて、最後に伝えたいことは?
「自分と似たような人しかいないチームでは、だめなんです。世界には多様な人がいて、それは称えるべきことです」
「ひとつの型しかないわけじゃない。様々な人に参加してもらって、その機会を持てていない人のために声をあげるのは、ポジティブな行動です」
「障害者差別的な企業は多く、私たちに精神的な影響をおよぼす行為もしているので、抗議は必要です」
「私たちのコミュニティは巨大です。興味がある人、不安を抱えている人、誰でも歓迎です。私たちは根気強さと創造力をしっかり持ち合わせていますから」
サムネイル画像/Getty Images
この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:石垣賀子 / 編集:BuzzFeed Japan