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J.J. エイブラムズ スター・ウォーズとスター・トレックを手がけた男の想い

「最初のスター・ウォーズを超えることはできない」

かつて連続ドラマ、『LOST』で世界を熱狂の渦に突き落とし、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(原題:Star Wars: The Force Awakens)、『スター・トレック イントゥ・ダークネス』(原題: Star Trek Into Darkness )と名作シリーズの監督を務め、ハリウッドの押しも押されぬ売れっ子となったJ.J.エイブラムス。

その映画人生は子どもの頃に始まった。その頃からロサンゼルスの自宅のまわりで映画を製作。サラ・ローレンス大学を卒業する前に既にデビュー作の脚本が売れ(『ファイロファックス/トラブル手帳で大逆転』(原題:Taking Care of Business)、1990年代の終わりにはワーナー・ブラザーズの『フェリシティの青春』(原題:Felicity)の共同制作者として、テレビ業界での長期にわたる成功のスタートを切った。(当番組は、プロの監督としてのキャリアの出発点でもあった。『フェリシティの青春』のシーズン1では、フェリシティを地元から追いかけてきた明るいストーカーが目前でバスに轢かれるという内容の2部構成の回の監督を務めた)。

エイブラムスにはこの先何年ものキャリアが待ち受けているが、『フォースの覚醒』の監督によって頂点まで昇りつめたこと、彼の映画、特にこれらの映画への愛を表すことは確かだ。エイブラムスは、最近開かれた「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」の公開の際にBuzzFeed Newsの取材に応じ、ここまでの道のり、過去の作品から学んだこと、そして作品を振り返って今だったらどこを変えるかについて話した。


『 ミッション:インポッシブル III』(原題:Mission: Impossible III (2006))

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『ミッション・インポシブル』のシリーズ第1作は、ブライアン・デ・パルマ監督による作品で、1996年に公開され、世界中で約5億ドルの興業売り上げを記録した。ジョン・ウーの監督作品のシリーズ第2作は2000年に公開され、前作品の売り上げ総額を上回った。

しかし、2000年代の初めに始まった『ミッション・インポッシブル』のシリーズ第3作の製作は何かに呪われているかのようだった。デイヴィッド・フィンチャーが監督を降板し、後任のジョー・カーナハンも喧嘩によって途中で降板。2005年にはトム・クルーズは、オプラ・ウィンフリー・ショーでソファーの上で飛び跳ねて騒ぎになり、キャリアは下降の一途をたどっているかのようだった。ニューヨーク・タイムズでも、パラマウント社が映画そのものを白紙に戻すことを考えていると報じられた。

『エイリアス』(原題: Alias)のファンだったクルーズは、メジャー映画の監督経験がそれまでになかったエイブラムスに接触した。「興奮した」とエイブラムスは話す。しかし、既存の脚本を読んだときに気付いたそうだ。「あれを監督するのはとにかく無理だった。その術が私にはわからなかった」エイブラムスは、クルーズとプロデューサーのポーラ・ワーグナーに、脚本を変えてイーサン・ハントの 私生活のストーリーについて書きたいと告げた。「イーサン・ハントが一流スパイでないときの顔に迫るストーリーを提案した」とエイブラムスは話す。「一人の男としてどんな顔を持っているのか。自宅ではどんな姿なのか?」

そこで、エイブラムスは頻繁に組む仲間であるアレックス・カーツマンとロベルト・オルシと共同で脚本を書いた。もちろん、エイブラムスの言葉を借りると、「クレイジーな追跡やアクション・アドベンチャー、そして様々なカッコいい機器含め、『ミッション・インポシブル』に欠かせないものは全部」残しながら、イーサンが自分の職業を隠している、最愛のジュリア(ミシェル・モナハン)の人物像も前面に出した。実際、『エイリアス』と似ていないわけではなかった。スパイも私生活と仕事の間で命にかかわるリスクを孕む選択を迫られる時がある。「これまでにもラブストーリーと性格劇と笑いの要素、そして迫力のある見せ場を混ぜて遊ぶということをしてきた」とエイブラムスは話す。

エイブラムスが過去の作品では経験がなかったアクション場面も次々と展開し、見せ場は十分にあった。「初めての映画だったし、ある意味、学習曲線がはっきりしていた。そして、単時間で学ぶことが多かった」とエイブラムスは話す。「でも、この業界のトップ、そしてトム・クルーズのように本当に情熱的で知識豊富な才能と一緒に学ぶ機会だった」

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エイブラムスは、イーサンとルーサー(ヴィング・レイムス)が悪漢のデイヴィアン(フィリップ・シーモア・ホフマン)を護送車に乗せてチェサピーク・ベイ橋を渡る場面を考案した時のことが特に印象的だと言う。デイヴィアンの仲間の襲撃に遭い、結果的にデイヴィアンは開放されるが、その前にイーサンが計画の妨害を図る。CGに頼り、緑色のスクリーンがある防音スタジオで場面全体を撮影するのではなく、イーサンはカリフォルニア州カラバサスの丘の上に橋の一部を作ることができる場所を見つけた。「本物の空を使いたかったのです」と話す。低いところから撮影すれば、スタントと爆発の多いこの場面の始まりを撮影し、水をあとで追加することができる。自分の映画を制作しながら成長したエイブラムスにとって、これは大きな喜びだった。「レンタルしたカメラで友達仲間が撮影するのとは違う次元で、プロのトリプルAの素晴らしいクルーがオープンな態度で新たなことを試し、成功させるための方策を編み出そうとしているのを目の当たりにする。信じられない機会だった」と話す。「結果的に、他のアクション・シーンと同じぐらい腕が試される場面だったが、あの映画の中で作り上げるのが最も楽しい場面の一つだった」

テレビ業界から映画監督へと飛躍したエイブラムスは1.5億ドルの予算をもらったと伝えられる。それは、彼が慣れていた世界と「大きく異なる」と共に、「まったく同じ」だった。「バチカン市国の対岸のローマ側の河川敷で撮影していようが、両親の寝室で撮影していようが関係ない。問いはいつも同じ。ここで何をしているのか。ストーリーは何か」とエイブラムスは話す。「古くて履き慣れた靴のような感触だった」


『スター・トレック』(原題:Star Trek) (2009) と『スター・トレック イントゥ・ダークネス』(原題: Star Trek Into Darkness )(2013)

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『スター・トレック』(原題:Star Trek)を再考するにあたり、エイブラムスはジェームス・T・カーク(クリス・パイン)とスポック(ザカリー・クイント)の間の親密な関係に好感を抱いた。対立的だった関係が、本物のパートナーシップ、友情に発展する。迫力に関しては、野心的だったはずの『ミッション・インポシブルIII』よりもさらに上を目指さなければならなかった。というのも『ミッション・インポシブルIII』の舞台は地球上にあったから。エイブラムスの概算によると、『スタートレック』で使用した視覚効果は約1300。「大規模な教育プロセスだったことは確か。宇宙冒険の出だしの撮影となると、ただの建物ではない。惑星でなければならない」

『スター・トレック』の制作でエイブラムスが最初に直面した課題は配役だった。テレビ番組の制作では、『フェリシティの青春』の主要キャスト(ケリー・ラッセル、スコット・フォーリー、スコット・スピードマン)や『エイリアス』の主演俳優(ジェニファー・ガーナー、ブラッドリー・クーパー、マイケル・ヴァータン)の発掘を評価された。一方、『ミッション・インポシブル』シリーズでは、主役はすでに決まっていた。『スタートレック』では、ジーン・ロッデンベリーが1960年代のテレビシリーズで生み出した偶像的な登場人物を演じる組み合わせを、一から探さなければならなかった。「誰もが知る登場人物たちと同じスピリットを持っている、と観客に感じてもらえる」俳優を探したかったという。

「我々の映画のストーリーは、スポックという登場人物が過去にタイムトラベルする出来事をきっかけに、新たな時間軸が生まれるというもの。集まってくる登場人物は番組を観ていた人たちがすでに知っていた人たちだった」と、エイブラムスは続ける。「すなわち、我々はジーン・ロッデンベリーの筋書きを踏襲していた」

それは、キャストの多様性についてもロッデンベリーの革新的な足跡を追うことを意味していた。「私にとって重要なことだった。1966年という、多文化・多民族のキャストや、権威や権力を有する役を女性にすることが珍しかった時代に、ロッデンベリーがそれに取り組んだことを高く評価していたから」とエイブラムスは話す。「『スタートレック』のような映画に取り組むとわかることがある。それまで想像もしなかった自分の姿を、映画の役の中に見つけた人々にとって、このような配役をすることがどれだけ重要かということだ。続編を作ることができて、我々は興奮した」

その結果生まれたのが、パイン、クイント、ゾーイ・サルダナ(ウフーラ役)、そしてジョン・チョー(スールー役)にとっての大ヒット作だ。エイブラムスのこれまでの作品の中でも、最も評価が高い。

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しかし、続編の『スタートレック イントゥ・ダークネス』はファンと批評家の双方から同じような全面的な高い評価を集めることはなかった。第1作の脚本はカーツマンとオルシによるもので、二人は続編の執筆に手を挙げ、『LOST』をエイブラムスと一緒に作ったデイモン・リンデロフ(『スタートレック』(原題:Star Trek)のプロデューサー)が加わった。「全面的に私の責任だ。私は脚本家たちを決まった方向に誘導していた。そして、一緒に脚本を書き、仕上げていた」とエイブラムスは話す。「しかし、撮影を始めた頃、文字通り一番最初の撮影だったが、確信が持てない点が幾つかあった」

「どんな映画、どんなストーリーにも、ベースとなる対話がある」とエイブラムス。「土台になる主張や、核になる問いがあるものなんだ。でも、その時の私にはそれがなかった」

エイブラムスによると、第1作は「全く相容れない双子が、生き延びるために互いに協力する必要があると気づく」という「非常に強力なストーリー」を有していた。第2作にはそのようなストーリーがなかった。カークとスポックは映画の中心的な人物であり続けたが、エイブラムスは自問自答した。「彼らの争点は何だったのか。彼らの原動力は何だったのか。彼らに取って何が問題なのか」。答えは「はっきりしなかった」

「少し軽薄だったということだ。スポックが二人の関係をカークほど意味あるものと思っていなかったことに、カークが落胆するというのは」とエイブラムスは話す。「スポックが友人のカークに迷いもなく恋愛感情を抱く展開も軽かった」

そして、カーンのことがあった。『スタートレック』常連の悪漢が『イントゥ・ダークネス』の主役で、ベネディクト・カンバーバッチが演じることになっていることが漏れ伝えられた。ネタバレが嫌いなエイブラムスは、事態を元に戻そうと、カンバーバッチはジョン・ハリソンという名前の役を演じるのだと伝えた(これは真実)。しかし、ハリソンの正体はカーンであったため、ファンを騙す試みは、怒りを買っただけだった。

エイブラムスは、笑って振り返る。「カーンの件を隠したことで、結果的に我々がみんなに嘘をついている印象を与えてしまった点についてはデイモン・リンデロフと同感だ。私は観客の楽しみをとっておきたかった。映画の登場人物自身が上映開始45分後くらいまで知り得ない展開については観客が事前に知らないようにしたかった」

エイブラムスは、さらに付け加えた。「でも、真っ向から嘘をついたのはサイモン・ペグだった。私はそんな彼が大好きだ。ペグが『彼はカーン役を演じない』と話したという記事を読んだ時に、『オー・マイ・ゴッド!サイモン・ペグ!!』と思ったのを覚えている」

エイブラムスは『イントゥ・ダークネス』の幾つかの場面を撮り直し、「多少改善された」という。しかし、この最終作の問題は構想にあり、エイブラムスによると「自分以外の誰のせいでもなく、率直に言って、自分以外の誰の問題でもなかった」

「奇妙な感じだが、素晴らしい才能を持った友人の脚本家たちが書いたシーンの寄せ集めの一部のようだった。私がやりたいことに固執して振り回してしまった。にもかかわらず、私は自分の選択に苛立ちを覚え、本筋の否定しがたい展開にさえ確信が持てなかった」とエイブラムスは語る。「あの映画では、各場面をできるだけ面白くしようと取り繕うのに一生懸命だった。信じられないほど見ていて楽しいキャストに恵まれたことを、神に感謝している。ベネディクト・カンバーバッチの新しい悪役像も素晴らしい」

「あの映画うまくいかなかったとは、私は言わないだろう」とエイブラムスは話す。「しかし、撮影を始める前により善い決断をしていたら、もっとうまくいったはずだったと感じている」


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『スーパーエイト』(原題:Super 8 )(2011)

エイブラムス唯一のシリーズものではない映画は、自身が執筆した脚本によるものだ。思春期を迎えた映画オタクの友人グループが宇宙人に遭遇する『スーパーエイト』(原題: Super 8)。舞台は1979年のオハイオ州。主人公のジョー(ジョエル・コートニー)は、地元工場で起きた事故で母親を亡くしたこと、そして、喪に服して嘆き続ける父親(カイル・チャンドラー)の精神的不在を乗り越えようとしている。エイブラムスはロサンゼルスで育ったが、70年代に映画に夢中だった子ども達のストーリーは自分自身のストーリーだ。映画は意図していたよりも個人的なものになった。『スーパーエイト』製作中に自分の母親が脳腫瘍と診断されたことを知った。「母親を亡くした子どもを描く映画を作っている最中に、私は自分の母親を亡くそうとしていた」

エイブラムスにとっては、子ども時代のアイドルであり、プロとして歩み始めてからははメンターとして尊敬していたスティーブン・スピールバーグと組むチャンスだった。そして、そのことを自分への刺激とした。「私は『アンブリン』の映画を思わせるストーリーを語りたかった」とエイブラムスは話す。『アンブリン』とは、『E.T.』(原題:E.T. the Extra-Terrestrial)、『グーニーズ』(原題: The Goonies)、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(原題: Back to the Future)を含む多数の映画を作ってきたスピールバーグの映画制作会社の名前だ。スピールバーグを誘うのは難しくなかった。エイブラムスが言うには「私はスティーブン・スピールバーグに電話をして『映画を作る子どもたちを描く映画に興味ありますか?』と聞いた。すると賛同してくれた。自分も子どもの頃同じことをしていたから、と」

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エイブラムスが『スーパーエイト』で最も好きな点は、子どもの配役だ。「ほとんど新米の子役、それに非の打ち所がないエル・ファニング」とエイブラムスは話す。ロケーションも、インダストリアル・ライト&マジック社が担当した効果も気に入った。一番好きな場面は、電車の駅で子ども達が映画を撮影しようとしている場面、宇宙人を解放することになる大規模な電車事故の直前である。ここで『スーパーエイト』のSFの構想が確立される。

しかし、エイブラムスは、自身の脚本について批判的だ。「超常現象的なジャンルとと人間ドラマ/コメディの要素を融合させるという命題を、解決できなかったように感じた」「うまくいった部分もある。よくできている場面もあれば、非常に満足できた人間関係についてのエピソードもある。でも究極的には、『この脚本は最高』とはっきりいうことはできなかった」と語る。「明らかにうまくいかなかったと感じたわけではないが、宇宙人・怪獣・SFのストーリーと、子どもたちや彼らが経験している内容を描く情緒豊かなコメディを、もっとうまく融合できたらよかった。映画の後半3割は必然性に欠けた印象だった。もっと必然性を感じさせるものにしたかった」

エイブラムスは、どの批評家よりも自分に対する評価が厳しいかもしれない。「わかってもらえると思うが、歩みを進めながらも軌道修正しようと一生懸命取り組む。だけど、うまくいっている感じがしなかった」


『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(原題:Star Wars: The Force Awakens )(2015)

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エイブラムスは49歳。子どもの頃ビデオはなかった。観る映画は劇場で公開されているものか、たまたまテレビで放送しているものを選ぶほかなかった。そこで、彼は映画を体験する別の方法を思いついた。すでに観た映画でも、観たことのない映画でもよかった。「週末になると、10ドルで12枚のサントラを買ってきた」とエイブラムスは話す。「そして、ヘッドホンをつけて床に寝転がって、ディスカウントショップで買ってきたサントラを聴いたんだ」

『エイリアス』以来、エイブラムスは作曲家マイケル・ジアッチーノと組み、映画やテレビ番組の音楽を制作してもらっている。エイブラムスによると、ジアッチーノとは「兄弟みたいで、生まれた時から知っているかのような関係。一緒に仕事をするのが楽しみ」なのだという。『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』では、エイブラムスは床に転がっていた子ども時代に引き戻された。『スター・ウォーズ』シリーズから『ジョーズ』(原題:Jaws)、『ホーム・アローン』(原題:Home Alone)から『ジュラシック・パーク』(原題:Jurassic Park)、『シンドラーのリスト』(原題: Schindler’s List)、そして『ハリー・ポッター』(原題: Harry Potter)の音楽制作を担当したジョン・ウィリアムズと組む機会を得たのだ。「ジョン・ウィリアムズとの仕事をするということは、私にとっての絶対的なアイドル的存在と組むチャンスということだった」とエイブラムスは話す。「彼は映画音楽史上、最も偉大な作曲家かも知れない。この映画製作のどの局面にも負けないくらいワクワクした」

そう、若い頃に初めて鑑賞し、恋に落ちた『スター・ウォーズ』を監督することは、シリーズの世界観を舞台裏で再現するウィリアムズのような才能と共に仕事することを意味した。一方、カメラの前には、ハリソン・フォード、キャリー・フィッシャー、マーク・ハミルが戻ってくることになっていた。そして、ローレンス・カスダン(『帝国の逆襲』(原題:The Empire Strikes Back)、『ジェダイの帰還』(原題:Return of the Jedi)の脚本家)と共同で脚本を執筆したエイブラムスは、今も愛され続けるオリジナルキャストと共存できる登場人物と、俳優たちを見つけなければならなかった。

「この映画に出演した若手俳優の荷は重かったと思う。彼らは、スポットライトに照らされた、一つの出来上がった世界観の中に足を踏み入れることになったからだ。この一本の映画のストーリーを背負っているだけでなく、新たな三部作の始まりも背負っているんだ」とエイブラムスは話す。

そのプロセスに着手した時、エイブラムスは『ハリー・ポッター』シリーズのキャスティングの素晴らしさを考えたという。「オー・マイ・ゴッド!彼らは子どもたちを、本当に若いのに配役したんだ。そしてシリーズが継続する間、子役たちは役を演じきったんだ」。「彼らは大人の役者になった。思いきった信頼だ」とエイブラムスは話す。「役に命を吹き込むのは関係者にとって大きなチャンスだ。同時に、大きなリスクと負担でもある。『配役は適切にできているだろうか? ハーマイオニーがダメだったら? ロンがぴったりでなかったら?』」

しかし、『スターウォーズ』では、新しいキャストが既知の役を演じることはない。「これらの登場人物には前評判もなければ、事前に受け入れられていたり、愛されていたり、といった有利な点もない。人々がすぐに共感し、恋に落ちてしまうような俳優を使う必要があった」

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『フォースの覚醒』の悪役カイロ・レンとして、アダム・ドライバーの名前を挙げたのはプロデューサーのキャスリーン・ケネディだそうだ。「私は彼に会ったことがなかったが、レンをどういう人物にしたいかははっきりしていた。その提案は即座に合点がいくものだった」とエイブラムスは話す。キャスティング・ディレクターのニナ・ゴールドは、映画の主役であるレイを演じるデイジー・リドリーを連れてきた。「彼女を見つけることができて非常に運が良かった」。

Attack the Block 』(2011)での演技を見てエイブラムスが 目をつけていたジョン・ボイエガは、無届け外出中の突撃隊員フィンと威勢の良い反逆者パイロットのポーの両役の候補として検討されたが、フィン役でオーディションを受けた。エイブラムスが言うには、「とにかく彼を見て笑ったんだ。彼の動きがとても気に入った。彼は、オリジナルの『スター・ウォーズ』にみられた必死さを付け加えてくれた。登場人物たちは必死なんだ」。ポー役としてはオスカー・アイザックを狙った。「私は『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』(原題:Inside Llewyn Davis)の大ファンだったが、オスカーに狙いを定めたとき、私は彼がこのような役を演じるのを見たことがなかった」とエイブラムスは語る。「彼と会い、私はすぐに彼を気に入ったんだ」

「このメンバーを集めることができたことが、何よりも幸運だった」とエイブラムスは言う。「無名の人も何名かいるし、あまり知られていない人も何名かいた。しかし、全員見事だった」

エイブラムスは、『フォースの覚醒』のキャスティングを、これまでのどの映画のキャスティングとも「全く違う」と感じたそうだ。2004年に共同制作したテレビドラマ『LOST』のキャスティングを思い出した。「振り返って『まあ、チャーリーかケイトかジャックかサンかジンかサイードなら、そう見えるだろう』と思うのは簡単」と彼は語る。「でも、その当時はキャスティングを進めながらも、脚本をまだ執筆中だった。そこで、たくさんの人に会うことにした。ぴったりの人を発見することもあるが、1対1のマッチングだけの話ではない。グループとして、みんなが一緒にいるところを見て、「これがグループのメンバーたちだ。さあ、どうやったらうまくいくか」ということを考えなければならない。

そして『LOST』同様、『フォースの覚醒』は多人種の世界を描いている。エイブラムスによると、カスダンと一緒に書いた脚本は「特定のルックスや人種」を想定して書いたわけではない。女性をストーリーの中心に据えたかった。それは彼にとって「パワフルなアイデア」であり、これまでの彼の映画ではあまり追求してこなかった部分だが、テレビ作品では重要なテーマの一つだった。「映画の中の俳優が現実世界と同じように見えていることが非常に大切だった」と話す。

「我々は、できる限り人々に受け入れられるストーリーを届けるためには、どういう登場人物がいいか、考えながらキャラクター設定をしていった」とエイブラムスは続ける。「ストーリー展開が重要であるとともに、人々がこれらのストーリーの中に、自分の姿を発見できるようにすることが大切だと思った。このことは、はずせないこととして脳裏にあった。2016年を前にして、しなければならないこと、せざるを得ないことのように感じていた。しっくりきたんだ」

「私は人々に、自分は世界に受け入れられているのだと感じてもらいたい」と話す。「『スター・ウォーズ』を初めて見たときに、私はそのように感じた。フォースはすべての生き物を一緒に束ねている。白人だけではなくね」

映画史上最も重要な映画シリーズを受け継いだ荷は、もちろん重い。しかしエイブラムスは、こういったプロジェクトにつきものの熱狂的な喧騒を遮断しようとしている。「我々はただ映画を作っているだけだ」とエイブラムスは話す。『フォースの覚醒』の場合についてまわるノイズ、つまり、史上最高の『スター・ウォーズ』となることや、公開後の最初の週末に6億ドルの売り上げを達成することへの期待感。人々が映画を観るきっかけとなる、こういったことがあることはどれも素晴らしい。しかし、精神的にはとてもきついことだ」

エイブラムスは彼の状況を表すのにふさわしい、適切な比較対象を探した。「初めてダヴ・バー、あのチョコレートのコーティングが施してある棒つきアイスクリームを口にした時、一種の宗教的な経験だと思った」と彼は語る。「人生であんなに美味しいものを食べたのは初めてだった。あのような味、あのような経験が、食べ物を食べてありうるということが、信じ難かった。これは大昔の出来事だが、天地がひっくり返るような経験だったのを記憶している」そして、「ダヴ・バーを2回目に食べたときは」、ここで彼は意味ありげな間をとったのだが、「すごく美味しかった! でも、世界観が変わったのは、最初のときだったんだ。私の言っている意味、わかる?」

言葉を変えると、『フォースの覚醒』は「一番最初の、史上最高の『スター・ウォーズ』映画にはなりえない。過去に起こったことを上回ることはできない」

しかし、エイブラムスはこのようなプレッシャーに強い。立て直しを図っていた大ヒット映画シリーズ『ミッション・インポッシブル』に足を踏み入れたことをきっかけに長編映画の監督としての彼のキャリアが始まった。『スター・ウォーズ』とは大きく異なるとても違う経験だったが、つきものである虚飾も付随してきた。

「舞台裏で起こっていることに関するノイズ、人々が何かに期待する時のノイズ、映画スターが私生活または仕事で苦労していることに関するノイズ。これらのノイズは、私がこれまでのキャリアで恵まれてきた機会を得るために払う代償としては、決して大きなものだと思わない」とエイブラムスは話す。「もちろん、映画に批判が伴わなければ素晴らしい。しかし、今回を含めて、これまで経験してきたプロジェクトを、こういったノイズが嫌だから辞めるということは、百万年経ってもないだろう」

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(翻訳:中村博子)



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Kate Aurthur is the chief Los Angeles correspondent for BuzzFeed News. Aurthur covers the television and film industries.

Kate Aurthurに連絡する メールアドレス:kate.aurthur@buzzfeed.com.

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