日本人が人身売買容疑で逮捕 フィリピンパブの裏事情

    買春する男性は「人助け」と言い訳

    フィリピンのマニラ空港警察は、未成年のフィリピン人少女(17)の人身売買に関与した疑いで、日本人男性(68)を逮捕した。テレビ朝日などが報じた。

    テレビ朝日の報道によると、男性はフィリピン人の少女と名古屋に向けて出国しようとした。空港の係員が少女が日本人の偽名を使っていることに気づき、人身売買の疑いで2人の身柄を拘束したという。

    逮捕された日本人男性を知る複数のフィリピン在住者の情報を総合すると、この男性は、愛知県名古屋市の繁華街で複数のフィリピンパブを経営。業界内では有名な人物で、過去に就労あっせんに関わっていたこともあったという。

    共同通信によると、男性と一緒に拘束されたフィリピン人少女は「日本で働きたかった」と警察に証言しているという。

    フィリピン人の未成年が両親の付き添いなしに海外へ渡航する際は、政府機関が発行する書類が必要だ。報道によると、日本人男性はこの書類を所持していなかったため、空港で捕まった。

    なくならない違法就労

    フィリピンパブで働く女性出稼ぎ労働者「ジャパゆき」の中には、就労資格がないが働いている人が大勢いる。

    フィリピン外務省は8月、出稼ぎ労働希望のフィリピン人女性に対して、違法に日本に渡航した場合、人身売買の被害に遭う可能性があると警告する声明を発表した。

    違法就労の増加に伴って、日本も出入国管理法を改正するなど対策を講じてきた。しかし、今でも違法就労は残っている。

    マニラ在住の日本人男性によると、フィリピンパブで働くため日本に入国する方法は主に2パターンある。

    1つは、フィリピンで日本人と偽装結婚して、妻として入国するパターン。もう1つは、観光ビザで日本に入国した後、日本人と偽装結婚する方法だ。

    フィリピンで結婚するリスク

    フィリピンは国民の約9割がカトリック教徒といわれる。フィリピン国内では離婚もできない。

    結婚解消手続きは認められている。しかし、膨大な裁判費用がかかり貧困層の女性にとっては、ハードルは高い。

    一度日本人と結婚すれば、自分の好きな男性と婚姻関係を結ぶことはできない。それでも、なぜ偽装結婚してまで、フィリピンパブでの出稼ぎ労働を希望するフィリピン人女性がいるのか。

    背景に貧困

    日本に住むフィリピン人女性の出稼ぎ事情をよく知る、別の日本人男性はこう話す。

    「貧困層の女の子は生活のために体を売る。買うほうも『人助け』と言って、正当化するケースがあります」

    日本のフィリピンパブは風営法で、飲食店に位置付けられる。そのため、客に性的サービスを提供することは禁止されている。

    しかし、祖国に残した子どもや家族に送金するため、性行為で客の男性から現金を稼ぐフィリピン人女性もいる。中には、フィリピン人女性に性的サービスを強要する悪徳店も存在する。

    「子どものミルクを買わなきゃいけないの・・・」

    お金のために違法な生計手段を選ぶフィリピン人女性と、日本人男性からの「需要」。どちらもなくなる気配はない。

    今回の事件で、フィリピンの空港関係者が入国を阻んだ未成年の少女も、もしかしたら日本で違法就労をしていたかもしれない。

    日々の疲れをフィリピンパブで癒すサラリーマンもいる。合法的に人材を雇い、健全な経営をするパブもある。だが、フィリピンパブの裏側には、どうしようもない貧困に直面したフィリピン人女性が、出稼ぎを強いられている現実もある。