フィリピンのドゥテルテ大統領がかつて市長時代に、自身の支配下に置く処刑団に政敵などの殺人を命じたとの疑惑が浮上している。
自称「元処刑団」の男性
ドゥテルテ大統領が進める過激な犯罪対策は、国連や米国から人権侵害の恐れを批判されており、疑惑の真相解明をめぐってフィリピン政界では与野党の攻防が続いている。
しかし、疑惑を暴露した男性の証言にもブレがあり、インターネット上では証言の信ぴょう性を疑う声も上がっている。
ドゥテルテ大統領による殺人指示疑惑を「暴露」したのは、自称「元処刑団」の男性、エドガー・マトバトさん(57)。
BBCなどの報道によると、マトバトさんはフィリピン上院の司法委員会で、ドゥテルテ大統領が処刑団に犯罪者や敵対する政治家の殺害を命じたと証言した。被害者の中には、政府職員も含まれていたという。
「死体は海に捨て、魚に食わせた」という衝撃的な発言も飛び出した。
ところが・・・。インターネット上では、男性の証言を疑問視する声が相次いでいる。
なぜか。
反ドゥテルテ派議員が証人招致
フィリピン国民が証言を疑問視するのは、マトバトさんを招致したデリマ上院議員だからだ。デリマ議員は前政権の閣僚で、ドゥテルテ旋風で追いやられた野党に所属しているためだ。
インターネット上では、デリマ議員への批判が高まっている。
「前政権陣営が支持率の高いドゥテルテ大統領の失墜を狙っているのではないか」との陰謀論もある。
自由党の陰謀だ。デリマ辞めろ。私たちはドゥテルテ大統領を支持している。
フィリピン人が犯した大失敗は、デリマをあんな立場にまで持ち上げてしまったことだ
信ぴょう性に疑問符も
マトバトさんは「処刑団がドゥテルテ大統領と選挙で敵対していた政治家のボディーガードを殺した」と証言した。
しかし、名指しされた政治家の親族は「ボディーガードは雇っていない」と否定している。
過去に、処刑団とドゥテルテ大統領の関係性が捜査されたこともある。しかし、ドゥテルテ大統領の関与を裏付ける証言や物的証拠は見つからず、刑事訴追には至らなかった。
フィリピン国民の間では、「米国などが人権侵害の恐れを批判しているタイミングで、ドゥテルテ大統領を批判する証言者が都合よく確保できたのは何故か」、「証言者が偽物の可能性もある」との指摘もある。
不毛な議論に呆れるフィリピン人
「大統領に殺人事件への関与疑惑が浮上」。衝撃的なニュースに聞こえる。
しかし、フィリピン国民にとってみれば、真新しい話ではない。
フィリピンでは政治的な理由を背景にした殺人事件が日常茶飯事になっているからだ。
「政治家同士の足の引っ張り合いで時間を無駄にしないでほしい」との意見もある。
おいおい、ドゥテルテ大統領を邪魔するために、ずっとこの話をするつもりかよ
不毛な議論に呆れるフィリピン人の気持ちに反して、フィリピン与野党の攻防が落ち着く気配はない。