ジャーナリストにお金を払えばいい。ブランドの宣伝のため、彼は買収された。

    ブランドの宣伝が難しいと感じたら、ジャーナリストにお金を払って、ブランドについて記事を書いてもらえばいい。

    Kiersten Essenpreis for BuzzFeed News

    ジェイソン・デマーズは、一流のビジネス系ウェブサイトに記事を多数寄稿しているライターだ。

    「フォーブス(Forbes)」には700本以上、「アントレプレナー(Entrepreneur)」には300本以上の記事を書いたほか、「ビジネス・インサイダー(Business Insider)」や「NBCニュース(NBC News)」、「フォックスニュース(Fox News)」にも寄稿している。

    さらに「インク(Inc.)」「ハフポスト(HuffPost)」「マッシャブル(Mashable)」や「タイム(Time)」、「テッククランチ(TechCrunch)」、果ては「ウォール・ストリート・ジャーナル(Wall Street Journal)」のブログ記事を書いた経験も持つ。

    「フォーブス」のプロフィール欄でデマーズは、「私の使命は、起業家のためにオンラインマーケティングの謎を解明して簡略化すること」と述べている。また、オーディエンス・ブルーム(AudienceBloom)というマーケティング企業の最高経営責任者(CEO)を務めているという。

    ところが、「フォーブス」のプロフィール欄でも、彼が執筆したどの記事でも、ある情報が開示されていない。それは、オーディエンス・ブルームが、「大手メディアサイト」で「クライアントのブランド名」に言及するサービスを提供していることだ。おもにデマーズ自身が、執筆する記事の中でクライアントを売り込んでいる。

    BuzzFeed Newsは、オーディエンス・ブルームが、クライアントとの関係を明記することなくクライアント名に言及し、リンクを付けている記事を20本以上集めた。また、オーディエンス・ブルームの従業員が見込み客に送ったメールを入手した。その中で同社は、記事中でブランド名への言及があるかどうかをサイト掲載前に確認できると売り込んでいる。

    さらに、「マッシャブル」のような「一流」ウェブサイトで、リンク付きで名前に言及するサービスの料金は、1回につき1200ドルから2000ドルほどになると書かれていた。

    オーディエンス・ブルームのビジネス開発部門ディレクター、ティモシー・カーターが見込み客に送信したメールには、こう書かれている。

    「当社は、スモールビジネスやスタートアップ、大企業ならびにメジャーなブランドが、『マッシャブル』や『ビジネス・インサイダー』『テッククランチ』ほか多数の大手メディアサイトで、リンク付きの言及とブランド認知を獲得できるようお手伝いしています」

    信頼できる確かなウェブメディアは、記事で取り上げる人や企業から報酬を得るライターについて、対策を講じている。記事の中で、個人的関係やビジネスで関わりを持つ人や企業に言及する際は、その旨を明記するよう、ライターに求めている(有料リンクも、グーグルのウェブマスター向けガイドラインに違反している)。

    しかしデマーズは、そうしたルールや倫理規範を平然と無視した。そして、無報酬あるいは低報酬で済む外部ライターの書くコンテンツを求める有名ビジネスサイトを利用することで、自らのビジネスの少なくとも一部を成長させてきた。

    BuzzFeed Newsは「フォーブス」「アントレプレナー」「インク」に対して、デマーズとオーディエンス・ブルームの元従業員ならびに現従業員1名ずつが、関係性を明記せずにクライアントに言及し、リンクを貼っていた記事を指摘した。

    その結果、「アントレプレナー」はそうした問題記事をサイトから削除した。「フォーブス」も8記事を削除したものの、それ以外の記事は掲載したままにしており、その理由については説明を拒否した。「インク」は、一部の記事にあったオーディエンス・ブルームのクライアントへのリンクを外したが、デマーズが書いた記事1本は修正せずにそのまま掲載している。

    「フォーブス」と「アントレプレナー」双方は、今後はデマーズに記事の執筆を依頼しないと述べた。

    「フォーブス」の広報担当者は声明の中で、「当サイトはジェイソン・デマーズ氏との関係を打ち切りました」と述べている。「調査は現在も継続中ですが、その過程で、当サイトの報道規定にそぐわないデマーズ氏の記事が多く見つかりました。そのため、デマーズ氏の記事をいくつか当サイトから削除しています。同氏が執筆した記事の確認は現在も進行中であり、必要に応じてさらなる措置をとる予定です」

    「アントレプレナー」のジェイソン・ファイファー編集長は、「提供していただいた証拠を検討した結果、今後はデマーズ氏の記事掲載を中止します」と述べた。

    「確認していただいた記事は、利害対立が大きいと考えられるため、サイトから削除しました。私たちは現在、デマーズ氏の記事、ならびにオーディエンス・ブルームとつながりのある人物の記事について、さらに時間をかけて調査を行っています。その結果に応じて対処する予定です」

    「アントレプレナー」は、デマーズが書いた過去記事の確認作業中に、彼の署名を「VIP Contributor(重要な寄稿者)」から「Guest Writer(ゲストライター)」へと変更した。「フォーブス」「アントレプレナー」「インク」は、記事を削除したり内容を修正したりした理由を読者に対して説明していない。

    「インク」を傘下に置くマンスエト・ベンチャーズ(Mansueto Ventures)は声明を発表し、「当社は明解かつ厳密な倫理規定を提示して、記事を寄稿するライターに署名をしてもらい、順守を徹底させています。また、その倫理規定を当サイトに掲載しています」と述べた。

    しかし、同サイトに記事を載せたデマーズやオーディエンス・ブルームの従業員2名についての具体的なコメントは何もなかった(デマーズは2016年以降、「インク」に寄稿していない)。

    デマーズや、オーディエンス・ブルームの元従業員と現従業員は、「フォーブス」や「アントレプレナー」などが長年にわたって募集・採用している、無報酬や低報酬の外部ライターだ。そうしたサイトにとっては、安く、またはタダで絶えず手に入るコンテンツは魅力的だ。他方のライター側は、広く知られた人気サイトで実績を積んだり、自分の考えを述べたりする機会に群がる。

    外部ライターをオープンに受け入れていると、ライターのもとに、報酬と引き換えに特定の人名や企業名に言及してほしいという依頼が舞い込むという事態が起こる。実際に、報酬を受け取ったことを認めたライターもいる

    ある広告会社も、外部ライターの寄稿記事を使って、クライアントのために「ブライトバート(Breitbart)」や「デイリー・コーラー(Daily Caller)」などの保守サイトに論説記事を載せていた

    また、誰なのかはわかっていないが、パキスタンのマーケティング企業にお金を払って、「ハフポスト」のブログ投稿用プラットフォームに、トランプの協力者に関する提灯記事を掲載させたケースもある(その記事はすでに削除されている)。

    記事の悪用や倫理的侵害があったために、寄稿者プラットフォームをやめたサイトもある。「フォーブス」は2018年2月、今後は寄稿者(デマーズを含む)に対して報酬を支払うことと、質の悪いライターを淘汰し始めることを明らかにした

    「ハフポスト」も、管理が行き届いておらず、エディターからの承認もほとんど必要とせずに投稿できるブログのオープンプラットフォームを1月に閉鎖している

    デマーズは6月、「フォーブス」に投稿した記事の中で、メディアは信頼の危機に直面していると主張。オーディエンスに信頼性の高い情報を提供するためには事実確認(ファクトチェック)が重要であると訴えていた。

    「完璧である必要はない。しかし、自分のオーディエンスに対し、入手しうる最高の情報を提供するために最善を尽くすべきだ」とデマーズは書いている。「そうした姿勢を貫けば、やがてはおのずと信頼が構築され、PRで大失敗することも防げるかもしれない」

    デマーズに対し、記事の中でクライアントを宣伝する彼のやりかたについてコメントを何度も求めたが、返事は得られていない。

    Neil Patel via YouTube / Via youtube.com

    ニール・パテル

    オーディエンス・ブルームが盛んに宣伝していたクライアントに、ニール・パテルという起業家兼ライターがいる。オーディエンス・ブルームの公式サイトには、オーディエンス・ブルームに対するパテルの感謝コメントが掲載されている。

    また、パテルは同社のYouTubeチャンネルにも登場してサービスを勧めているほか、自身のマーケティング・ブログにオーディエンス・ブルームを利用した際の体験談を書いている。

    パテルはブログ上で、「(オーディエンス・ブルームは)『フォーブス』などの権威あるサイトで、私のウェブサイトを宣伝してくれています」と記している。

    「記事の掲載が承認されるときとされないときがありますが、幸い、料金が発生するのは、記事の掲載が決まった場合だけです」

    デマーズは5月後半、「アントレプレナー」に、格段に優れたパーソナルブランディングを行っている起業家についてのまとめ記事を寄稿した。その中で、イーロン・マスクやシェリル・サンドバーグと並んで、パテルを取り上げた。「アントレプレナー」に寄稿した記事でデマーズがパテルに言及したのはそれが4度目だった。デマーズはパテルを、「大成功をおさめた起業家」「マーケティングとコンバージョンの専門家」「世界的に著名なマーケティングの専門家で、多大な成果をおさめた起業家」と呼んでいた。

    合計すると、デマーズは「フォーブス」を含むウェブサイトの記事12件で、パテル自身ならびに彼の各種ブログと会社について言及している。「アントレプレナー」に掲載された記事の1本は「NBCニュース」に、別の記事は「ビジネス・インサイダー」に再掲載された。

    ところがパテルは、オーディエンス・ブルームを絶賛するコメントを載せ、デマーズにリンク付きで言及してもらっているにもかかわらず、クライアントとして料金を払ったことは一度もないと主張している。

    BuzzFeed Newsがコメントを得るべく連絡を取る前ですら、パテルは1名の記者にメールを送り、往復で4度のやりとりを交わして、オーディエンス・ブルームに料金を支払ったことを強く否定。法的手段に出ると脅した。

    パテルは、いかなる「マーケティングやリンクサービス」のためであれ、オーディエンス・ブルームに料金を支払ったことは絶対にないと断言した。そして、証拠のために、第三者の会計士を雇って財務記録を確認してもらっても構わないと提案した。

    メールでパテルは、「私は、ジェイソンやオーディエンス・ブルームに支払いをしたことは一度もありません」と述べている。「私がシアトルでジェイソンと知り合ったのは5年から8年ほど前でした。友だちなので、顧客として私の名前を貸しました」

    とはいえ、パテルはデマーズに名前を貸しただけではない。オーディエンス・ブルームのYouTubeチャンネルに投稿されていた動画には、ごく最近までパテルが出演しており、同社のマーケティングサービスを高く評価していたのだ。

    パテルは動画の中で、「私はオーディエンス・ブルームを2年ほど前から利用しています。同社は大変優れたSEO、コンテンツマーケティング、ゲスト投稿サービスを提供しています」と語っている。さらに、「オーディエンス・ブルームは素晴らしい会社です。料金は安くて手ごろだし、支払額に対する投資利益率は最高です」とまで言っている。

    BuzzFeed Newsがこの動画についてパテルにさらに問い合わせたところ、動画はチャンネルから削除されてしまった。問い合わせたあと、パテルはオーディエンス・ブルームに関するブログ記事も削除。オーディエンス・ブルームも、自社ウェブサイトからパテルのコメントを消した。

    寄稿した記事のなかで、パテルに関する好意的なコメントとリンクを盛り込んだのは、デマーズだけではない。

    2014年から2015年のあいだにオーディエンス・ブルームのウェブサイトに登場したあるページによれば、その期間に同社の最高執行責任者(COO)を務めていたのはドリュー・ヘンドリックスという人物だったようだ。

    ヘンドリックスは現在、ツイッターのプロフィール欄で「著作者、講演者、起業家」と名乗っている。デマーズと同様、「フォーブス」「アントレプレナー」「インク」など多くのサイトに記事を寄稿してきた。「ナショナル・ジオグラフィック(National Geographic)」に記事を書いたこともある。

    ヘンドリックスは、「フォーブス」「アントレプレナー」「インク」に掲載した記事9本の中で、パテルとその企業について好意的な言葉を並べ立てた。「インク」に寄稿した「Inspiring Entrepreneurs to Watch in 2017(2017年に注目すべき優れた起業家)」と題したまとめ記事ではパテルを紹介。「フォーブス」に載った、起業家が投資家を説得する際のリンクトイン活用術に関する記事では、パテルの言葉を引用している。「インク」の別記事では、パテルが経営する企業キッス・メトリックス(Kissmetrics)が、競合他社をはるかに上回るサービスを提供していると書いた。

    ヘンドリックスが2011年と2012年に「ナショナル・ジオグラフィック」に寄せた記事はその後、サイトから削除されている。しかし、インターネット・アーカイブに保存されているその記事のバックアップコピーを閲覧したところ、その記事では有料リンクが貼られていたようだ。

    ある記事には1つだけリンクがあった。「auto insurance(自動車保険)」という言葉から「autoinsurancecenter.com」というサイトに飛ぶようになっていたが、文脈から考えるとどうにも奇妙だ。

    ヘンドリックスが書いた別の「ナショナル・ジオグラフィック」の記事にもやはりリンクが1つだけあり、「custom flash drives(カスタム・フラッシュドライブ)」という言葉から「usbmemorydirect.com」へと行くようになっていた。

    2017年にビジネス系サイトへの寄稿をやめたヘンドリックスはインタビューの中で、「ナショナル・ジオグラフィック」のために自分が書いた記事の中に有料リンクを貼ることを引き受けた点は認めている。しかし、パテルについて書くようオーディエンス・ブルームから指示を受けたことは否定した(BuzzFeed Newsは「ナショナル・ジオグラフィック」にコメントを求めたが、回答は得られなかった)。

    オーディエンス・ブルームの3人目の従業員サミュエル・エドワーズも、「フォーブス」「アントレプレナー」「インク」「ビジネス・ドットコム(business.com)」に時おり記事を書いていた。「インク」ではこちらこちらの2本の記事で、パテルとその会社に言及している。そのうちの1本では、「桁外れの成功をおさめたニール・パテル」と述べた。「ビジネス・ドットコム」でも1度、パテルの会社を取り上げている

    BuzzFeed Newsはエドワーズに質問状を送ったが、回答は来ていない。

    この件に関してBuzzFeed Newsが問い合わせをする以前、オーディエンス・ブルームのウェブサイトには、ソフトウェア企業、ゲット・レスポンス(GetResponse)の経営トップ、ダニエル・ブレジンスキーが、オーディエンス・ブルームを推薦する文章が載っていた。

    「オーディエンス・ブルームは約束どおりの仕事をしてくれました。全米で知られているサイトの記事に会社名が載ったことで、質の高いトラフィックが増えました。これほど嬉しいことはありません」

    ブレジンスキーのこの言葉は、BuzzFeed Newsがこの件についてオーディエンス・ブルームに問い合わせをしたあと、削除された。

    デマーズとヘンドリックスの2人が、「フォーブス」「アントレプレナー」「インク」でゲット・レスポンスに言及した記事は6本あった。2人はまた、ゲット・レスポンスから独立した企業クリック・ミーティング(ClickMeeting)の製品についても、「フォーブス」「アントレプレナー」「ハフポスト」で触れている。

    ゲット・レスポンスの広報担当者からは、次のように書かれたメールが届いた。「当社はずいぶん前にオーディエンス・ブルームと取引がありましたが、関係を直ちに打ち切りました。当社のサービスの質ならびに信頼性について懸念を感じたため、今後は取引をしない予定です」

    BuzzFeed Newsは、ゲット・レスポンスがオーディエンス・ブルームに依頼した時期や、どんなサービスを受けたのかについて追加質問を送ったが、返事は来ていない。

    オーディエンス・ブルームはまた、ほかの広告会社の代わりに、クライアントの宣伝を行っていたようだ。広告会社Voorhees Segal Communications(ヴーヒーズ・シーガル・コミュニケーションズ)の共同創業者サラ・シーガルは今年に入って、オーディエンス・ブルームのビジネス開発ディレクター、ティモシー・カーターから突然メールを受け取った。カーターはメールの中で、オーディエンス・ブルームは有料で、ブーヒーズ・シーガル・コミュニケーションズのブランド名を有名サイトにリンク付きで掲載できると述べていたという。

    カーターはメールの中で、「メディアで露出することで、ブランドの権威や知名度、認知、信頼が確立され、話題を集めるとともに、検索エンジン・ランキングで大きなメリットを得られるでしょう」と書いている。

    さらに、こう書かれている。クライアントは「各サイトに掲載される記事の内容をすべてチェックし、内容に満足したうえで、実際に宣伝することができます。どんな記事になるのかを、見て確認できるということです」

    ジャーナリズムにおいては、記事を掲載する前に情報源が内容を確認したり、承認を与えたりできるようにすることは倫理的侵害だとみなされる。カーターの提案に懸念を抱いたシーガルは、BuzzFeed Newsにメールを転送してくれた。

    カーターは、後にシーガルに宛てたメールに事例を添付し、オーディエンス・ブルームの別のクライアントを明らかにしている。その事例は、テキサス州のウェブホスティング企業ホストゲーター(HostGator)のものだった。

    その事例によれば、オーディエンス・ブルームは「海外向けの有名ウェブサイトに掲載した一連の記事」を利用して、ホストゲーターの「オンラインでの可視性を高め、キャンペーン期間中に何千人ものサイト新規訪問者を呼び込んだ」のだという。

    デマーズ、ヘンドリックス、エドワーズは、9本の記事でホストゲーターに言及。それらは「フォーブス」と「ビジネス・ドットコム」に掲載された。ホストゲーターに何度かコメントを求めたが、回答はなかった。

    ヘンドリックスは、パテルやゲット・レスポンス、ホストゲーターが、オーディエンス・ブルームのクライアントであることを知らなかったと述べた。

    「というか、それらは全部、大きな企業じゃないですか」とヘンドリックスは述べる。「それに、こういう仕事をしていると、人と知り合って、人と話をして、こうしたツールをたくさん使うものです。つまり、そういうツールを使い始めて、人と知り合うと、よいリソースが必要なときにそれらが頭に浮かぶんです」

    この記事は英語から翻訳されました。翻訳:遠藤康子/ガリレオ、編集:BuzzFeed Japan

    Jon Christian is a freelance reporter based in Boston.

    Contact Jon Christian at jonathan.a.christian@gmail.com.

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