ある日、「非常に呪われた」ノートパソコンがネット通販eBayのオークションに出品されていた。
私と同僚は、もちろんすぐに買おうとしたけど、価格が高すぎた。驚くべきことに、3000ドル(約33万円)の呪いのノートパソコンを経費で落とす許可が降りなかったのだ。
これをきっかけに、私は調査を開始し、やがてメリーと出会った。
ネット上では呪いのグッズがたくさん売りに出されている。
それか、 "呪われてるであろう" グッズがたくさん売りに出されている。
幽霊はなるべく信じないようにしているけど、正直に言うと幽霊はとても怖い。
そんな私を、アホだと思っている人が多いのは承知している。
でもアホなのは私だけじゃないから。
BuzzFeedの投票では、回答者の55%が幽霊を信じていると答えた(もちろん冗談。私たちはアホじゃないよ)。
幽霊を信じない人は恵まれている。
夜に鏡の前を通りかかる時、鏡の中に恐ろしい顔が映っているのではないかと心配してストレスを抱えることがないのだから。さぞ素晴らしい人生なんでしょうね。
ノートパソコンが買えなかった私は、もっとお財布に優しい幽霊を探し始めた。簡単に見つけることができる典型的な幽霊といえば、呪いの人形。
eBayでは不気味な呪いの人形がたくさん売りに出されていて、しかもお安いこと!呪われている動物のぬいぐるみだって買えちゃう。
下にあるのは呪いのカエルちゃん。

私は呪いの人形を買うことにしたけど、どの人形でもいいというわけにはいかない。
eBayの膨大なラインナップを見ているうちに、人形収集の世界について多くのことを学んだ。
たくさんの人形を収集している人につきものの問題として、コレクションの中に1つは呪いの人形が混ざってしまうということがあるらしい。
しかしどれが呪いの人形かはわからない。だから幽霊を家から追い出すためにコレクションをすべて売却する収集家が何人もいるのだ。
ある出品ページには、「400体もの人形を収集しているため、家で超常現象が起きまくっています」と書かれている。
「オンラインやアンティークストアで人形を買い始めてからまもなく、ドアが勝手に開閉したり、家に1人でいる時にベッドルームのドアノブがガタガタ鳴ったり、ささやき声が聞こえたりなどの怪現象が起こり始めました」という出品ページも。
ある出品者の娘は、人形を処分しないと家を出て行くと脅しをかけてきたという。



下の人形にはこんな説明文が添えられていた。
「彼はバディ。かわいらしいピエロの人形に宿った4歳の男の子です。超常現象が苦手な人は入札しないでください。霊を怖がる人の家では、子どもの霊は安らぐことができません」
待って、「かわいらしいピエロの人形」?冗談でしょ。

確かに呪いの人形は欲しい。でも呪いが強すぎるのはイヤだし、見た目もあまり怖くないのがいい。
だからこれはダメ。

これもナシ。

おおっと?

これがメリーとの出会いだった。
見た目は怖くない。eBayの商品ページいわく「ポジティブ幽霊」だそうで、ちょうどいい。
人形に取り憑いた幽霊は1950年代のオハイオ州に住んでいたティーンエイジャーで、絵が趣味だったという。霊が宿ることになった経緯も驚くほど詳しく綴られていた。
出品者はどうやって知ったのかって?そりゃもちろん、メリーの霊が持ち主の夢に出て話したから。
商品ページには、メリーを購入するともれなく夢に出てくると書いてある。
ドアを勝手に開け閉めされるのに比べたら、夢に出るなんてかわいいものだ。この子にしよう。(33.99ドルでした)
ところでeBayに出品されている "呪われているであろう" 人形は、本当にすべて呪われているのだろうか?うーん、ちょっとそれはないと思う。
じゃあ、買って家に置いておけば?いや、それは結構です。メリーは家じゃなく、私のオフィスに送ることにした。
彼女が来た日、新しく買った呪いの人形を開封する私には、同僚たちの不審なものを見るような視線が注がれた。
そして、私はまもなく悟った。メリーには敬意をもって接しなければ、霊を怒らせるかもしれないと。
「プチプチにくるまれるなんて、かわいそうに」と、開封しながら私は言った。
それに対して同僚が「ただの人形だろ!」と突っ込んだ。
呪いのメリー人形にそんな口調で言うなんて、きっと後悔することになるだろうに。
メリーはかび臭かった。趣のあるチェック柄のドレスに身を包み、目には何か黄色いベタベタしたものがへばりついていた。
オフィスに呪いの人形がやって来たというのに、同僚たちのテンションはいまいち上がらない。そのかわり、否定的な反応は予想以上に見られた。
「エル・ディアブロ(悪魔)」という言葉が盛んに飛び交うようになった。浄化するのにセージを焚こうという声も。
うちの会社のハラスメント研修で、超常現象について何も言われなかったから、職場の雰囲気が険悪になったのが、私のせいなのかどうかはわからなかった。
メリーはポジティブ霊のはずなのに!イケてるベルベットの帽子まで被ってるのに、どうして怖がるんだろう?
well @robotics got a haunted doll from ebay & had it sent to the buzzfeed office so i will be working from home until that demon is removed
「ジョアンナが呪いの人形をネットで買ってBuzzFeedのオフィスに送りつけてきた。悪魔がいなくなるまで自宅ワークにするよ」


そこで私はBuzzFeed読者に対して、メリーが怖いかどうか投票を呼びかけてみた。
結果、読者はBuzzFeedの従業員より勇敢だとわかった。メリーが呪われていると思った回答者はわずか35%にとどまったのだ。
ただ、言うならば、読者はメリーと一緒の時間を過ごす必要がない。
私はBuzzFeedのみんなにメールを送り、呪いの人形には触らないように注意を呼びかけた。なのに、私の言葉は即無視された。
「私の呪いの人形に触らないで」という文章のどこが難解だったのかはわからないけど、ともかく意味がうまく伝わらなかったようだ。
言うまでもなく同僚たちはメリーを移動させた。一緒に自撮りまで撮っているじゃないか。


幽霊をバカにすると恐ろしい事態を招くものだけど、世の中にはそれを恐れない人もいる。(ちなみにメリーはボーイフレンドなんて欲しがってはいない。取り憑いた霊はまだ16歳だし、絵の方に集中したいと思う。知らないけど)
なので、彼女はそこらにある呪われてない人形とは違うことを示すために、標識を置いておいた。
「注意:呪われてます」

R.L.スタインの判定とは裏腹に、オフィスでは何も怪奇現象っぽいことは起こらなかった。とはいえ、夜誰もいない時に起きている可能性はある(だったらありがたい)。
私は、「Ghost Radar」という幽霊探知のスマホアプリを使い始めたが、ここで事態は興味深い展開を見せた。
「Ghost Radar」は、超常現象エネルギーにスマホを作用させるといううたい文句のアプリだ。
幽霊が近くにいればアプリが教えてくれて、こちらに語りかけようとする幽霊の言葉を翻訳までしてくれるという。
メリーの近くでこのアプリを使うと、毎回幽霊が検出される。
アプリを使いはじめたばかりの頃に、メリーの近くで検出された単語には「愛情深い」があった。(やっぱりポジティブ霊なのかもしれない…!)
私は「Ghost Rader」をオンにしてオフィスを何度か練り歩き、他の場所にも幽霊がいないか探したが、まれにしか見つらなかった。
メリーの近く以外で、アプリの反応はほとんどなかったけど、オフィスの冷水機とライアン・ゴズリングの等身大立て看板がある一角では、反応が見られた。ここはかなりの怪奇スポットだと考えられる。

アプリが霊界から探知する単語は、ランダムなものばかりだ。
ただ、ときどき不気味な言葉を示してくる。私が初めてメリーを恐ろしいと思った瞬間は、メリーのいる場所でアプリが「インキュバス(悪夢、夢魔)」という単語を検知した時。
「悪夢」という単語もあんまり好きじゃなかった。ほかにも「洞窟」「土の中」「骨」という不気味な文字列も見られた。
もしかしてメリーは殺害されて洞窟に埋められたのでは?ありそうな話だ。
アプリは「オハイオ」という単語も検出したけど、これはメリーにゆかりのある言葉だ。
eBayでメリーを出品した人は、メリーの霊は生前オハイオに住んでいたと言っていたから。
奇妙な偶然の一致はまだある。私が、ハッピーアワーに飲みに行きたいからキックボクシング教室を休んだ日のこと。
バーでGhost Raderを使ってみると、「エクササイズ」「今夜」という霊界からのメッセージが来た。間違った選択をした人間を恥じ入らせることに関して、幽霊というヤツは容赦がないらしい。
ちなみに幽霊アプリの利点は、ほかにもある。バーで話題が尽きてしまって気まずい沈黙に包まれたら、すかさずアプリをオンにして幽霊ハントをしてみよう。あまりにも奇怪な行動を目の当たりにした相手は、すっぱり会話を打ち切ってくれるはず!
メリーから検出された単語のうち最も不気味なものは「恐怖」「霊」そして「解放」だった。
もしかして、メリーの霊は人形にとらわれているのか?
霊能力者のジェニファー・ラブ・ヒューイットを呼んできて、メリーが安らかに眠れるよう手助けをしてもらうべき?
だんだん大ごとになってきた。でも同時に、メリーへの愛着も湧いてきた。
もしかすると、度を超した愛着だったのかもしれない。同僚から、メリーが私に取り憑いたのではないかと言い始める者が出てきた。
なるほど、振り返れば私は「メリーの持ち主は私なんだから、好きにさせて」なんて言うようになっていた。ちょっと不気味とはいえ、超常現象だとも限らないだろうに。


奇怪な物理的事象として、特筆に値するものはただひとつ。私がメリーについて話している最中に、天井のしっくいがはがれて落ちてきたことだけだ。
周りにいた人はメリーのしわざだと言った。だけどオフィスの建物はかなり古いし、これはメリーがやりそうなことじゃないように思えた。
メリーがオフィスに来てから時間が経って、人々の態度は変化を見せていた。
メリーが最初にやって来たときは、「仕事を辞める」とまで言っていた同僚が、ついこの間メリーにハグをして(今もかなりかび臭いにも関わらず)「みんなメリーが大好きだし、大事に思っているよ」と言ったのだ。
メリーは呪われてなどいないのか、ようやくオフィスの全員に取り憑いたのか。一体どっちなのだろう。



この記事は英語から翻訳・編集しました。