人は2つのタイプに分類できる。Instagramに食べものの写真を上げる人と、そんなことはしたくないという人だ。
私は前者である。何年も前、チーズとチリコンカンをのせた全然美しくないジャケットポテト(ベイクドポテト)の写真を何の加工もせずにジョーク半分で投稿し、「きらきらした食べものがあふれるみんなのタイムラインに殴りこみ」をかけてみた。
以来、私の投稿は、もっと食べたくなるほど気に入ったものより、「うわっ何これ」と皿からよけたくなる付け合せがついたような代物の方が多い。Instagramに投稿される写真といえば、高さ30センチくらいありそうなハンバーガーや、何が入っているのか7色のレインボーカラーになったアサイーボウルなどで、「美しくない」食べものの写真を見かけることはない。
もしInstagramに上げた料理の写真に「美しくない」「きたない」などとコメントがついたりすれば、いたたまれずにアカウントを消して逃亡したくなりそうだ。
でも、おいしい料理といって私の頭に思い浮かぶのは、鮮やかな赤色のタンドリーチキンだけではない。茶色のダールや、地味な生成色のアルパラタだっておいしい。韓国料理だって、色とりどりで食欲をそそられるビビンバだけじゃない。オレンジ色で時にやや不格好なキムチジョンだってある。
SNSに食べものの写真を載せる心理には、自分が好きな料理だから見てほしいというよりも、「こういうものが好きな人間だと思われたい」という面が多分にある。フードトラックや期間限定の店へ出かけて、タコスとハンバーガーとホットドッグが合わさった話題の料理を試すような、トレンドに敏感な人間に見せたい。お皿の上にフルーツを幾何学模様にならべ、朝は6時起きでスムージーを飲んでヨガに励んだりするタイプの人間に見せたい。そんな心情が背景にある。
だが食べものにその人の生活を語る側面があるとすれば、本当においしかったものの多くはそこには出てこないことになる。
私たちはみな、発信する内容をフィルターにかける。私の場合、ケーキを焼いた写真をアップするときは、天板にパスタソースが焦げついたときの跡をうまくトリミングしてから載せる。レストランの店内写真を撮るときは、たいていは店が写真映えを意識して用意した見映えのする壁の前でしかとらない。
私たちは自分の手料理をアップするとき、たとえ味がよくても見た目が悪いんじゃないかと気にする。あるいはレストランでのディナーの写真を載せるとき、料理の彩りがいまいちなのでは、照明が暗すぎるのではと考え、他人の目を意識してしまう。統計によると、イギリスでは野菜や果物のじつに3分の1が「見た目が悪くて売り物にならない」として処分されているという。
だが、そうは言っても私たち人間も動物であり、どんなに見て美しい食べものだってつまるところエネルギー源なのだ。ぴかぴかのリンゴだって色の悪いリンゴと同じく、歯に挟まりもする。
「とはいえ、見た目がきれいじゃない食べものなんて誰も見たくないでしょ」と思うかもしれない。でも、自分がおいしいと思って満足したならシェアしてもいいのでは?
たしかに、べちゃっとしたオムレツに色のとんだマッシュルームが浮かんでる、なんていう絵を投稿したいとは思わないかもしれない。じゃ、マカロニとミートソースにチーズをたっぷりかけて焼いたのは? 巨大な鍋いっぱいの最高においしいチリコンカンなら?
食べられない花をあしらった、目に美しいブランチが運ばれてきて、写真を撮ったあとはちょっとつついて脇に置き、あとはケーキを頼んだ、なんて覚えのある人は私だけではないと思う。大好きなジンジャーブレッドケーキを焼いたあと、私はいつも写真を撮ってからトフィーのアイシングをかける。アイシングがかかっているとベタっとして見えそうだからだ。
日々の生活に登場する料理をSNSでシェアするとき、このことを覚えておくといいのではないか。家でつくるパン粉こんがりのマカロニ&チーズだって、友人の家でテレビを見ながら食べる茶色一色の焼きそばだって、毎日の風景の一部なのだ。自分で焼いたバナナブレッドがどこから撮っても見た目がぱっとしなくたって、もう一切れ食べずにいられないくらいおいしくできたならそれでいい。
ビリヤニを作ってみたら、味はいいのに写真に撮り、いまいちだとしてもまったく問題ない。恥じる必要なんてないのだ。自分の暮らしの「美しくない部分」をSNSで見せたくなんかない、と思うかもしれない。
それでも私たちはそんな美しくない料理を、ツイていない1日の終わりに家で食べたり、友人と近況をおしゃべりしながら食べたり、「インスタ映えする壁」なんてなくてもよく行く店で食べたりして生きている。おいしいものは見た目がきらきらしていなくたっていい。そのとき自分が心から食べたいものこそが、何よりもおいしいのだ。
この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:石垣賀子 / 編集:BuzzFeed Japan